第29話:ジウノアからの遊びの誘い
それは麗らかな昼下がりな時間。
場末のギルドである、ジョー・ギリアンでは。
「とてもいいビジネスがあるんです。環境にも良くてそれでいて私達も得する話、これはフェノー教にも認められた正式なビジネスなんです。この聖水はですね、フェノー教大主教からの祝福を受けた水なんですが、これを布教するアンバサダーとなってですね」
俺はマルチの勧誘を受けていた。
(なんか、ちょっと前にもあったなぁ)
悪徳商法。
もといた世界でもあるし、異世界でもある。
手段方法は多岐にわたり定義が難しい、それでいて犯罪としての立件もなかなか難しく、未だに根絶には至っていない。
立件が難しい理由として例えば今俺の目の前にいるマルチの勧誘員。
この人物を加害者と認定していいかどうか実は判明しない、既にマルチの被害者で正常な判断が出来ない場合も多くある。
もちろん故意犯の場合もあるが、、、。
「んで、その祝福を与えたフェノー教の大主教って誰よ」
ととりあえず聞く、適当にあしらって追い返すか。
「え? ああ! よくぞ聞いてくれました! かのジウノア大主教です! 冒険者ならご存知ですよね!? クラスS冒険者、ガクツチ・ミナト率いるアマテラスのメンバー!」
「……知っていますね」
「やっぱり! 彼女も認めている、彼女とは協力関係にあり、つまりフェノー教公認なんです!」
「はあーーーーーーー、本当にロクでもないな、カルトもマルチも」
「え?」
と俺はマルチ勧誘員を無視して俺は立ちあがり、、、。
くんであった水を思いっきり水をぶっかけた。
「…………」
呆然としている。
「知らないのかい? ジウノアは悪徳商法とか、そういうのは一番嫌うのさ、悪い噂ってのは要は自分に正直なだけな奴でな」
●
ゴシゴシ ←再び水をぶっかけたついでに床をモップ掛けしている
「男前だねぇ、浮気者さん」
と今度はルードではなくファルが現れた。
「なんだよ、きいてたのか? って浮気者ちゃうわ」
「ケタケタ、惚れそうになったよ、しかしまぁ、アマテラスの名前も僕たちの名前も昔からロクな使われた方をしないね」
「それは俺達に限った話じゃない、有名人なら誰で経験するだろうよ。セシルの知り合いを騙るやつに何回「共同作業」をもちかけられたか」
「あ~、特に女性冒険者が被害に遭っていたねぇ、ろくでもない話だよ、どっこらしょっと」
とどかっと座る。
「さて、そんな仲間想いな浮気者へ、その件の大主教様より依頼だよ」
「…………まじ?」
「もちろん、そしてボクと同様に怒っていたよ、君は不義理だねぇ」
「だってさ、その~」
「さっきみたいな男前のところをしっかりと見せれば違うのに、男のそういうのは理解できない、ま、謝ってきなよ」
「……わかったよ」
「今回の件は、いつものとおりカミムスビで受領する」
「クォイラは?」
「既にフェノー教の公国本山へ「手紙」を送ったよ、今クォイラ邸に向かっていると思う」
「そっか、久しぶりか、アマテラスが全員集合するのは」
「クォイラには感謝だね、彼女がいなければ本当にどうなっていたことやら、ねえ、リーダー?」
「う、、、」
(うるさいな! 男には色々あるんだよ! こう男の矜持というものを女は理解しないな!!)←言えない
――アルスフェルド子爵家
「久しぶりですね、ジウノア」
「久しぶり、相変わらず元気そうでなにより、ファルもお久、大学辞めたんだっけ?」
「そうだよん、セクシー大主教様は今日も相変わらずで、セクシーなおみ足がじゅるり」
「お互いに相変わらずでうれしいよ」
「ジウノア、噂は聞いていますよ、枢機卿をぶっ飛ばしたと」
「ぶっ飛ばすなんて人聞きの悪い、また部下に責任転嫁しようとしてたから、横槍を入れてやったのよ」
「具体的には?」
「ん? たまたまなんか怪我しててさ、回復魔法をかけてあげますわ♪ と言って媚び売るふりして、刺激物塗りこんでやったら「きゃいーん」って悲鳴上げた。カッとなってやった、あれは面白かったから特に反省もしていないし、何ならまたやる、面白かったから動画撮影してばらまいた」
「あまりやりすぎると、立場が危うくなりますよ」
「別に私自身はどうでもいいんだけど、フェノー教大主教というネームバリューは便利だから惜しい、まあそんなことはどうでもいい」
ここで言葉を切ると全員を見据える。
「それよりもさ「遊び」に誘いに来たの」
遊び、仲間内で冒険の事だが。
「少しきな臭い匂いをさせますね」
「ご明察」
ここで通信魔法の魔石を取り出す、これは通信機能に加えて録音機能の魔石だ。
――「ジウノア、大主教、さま! &’&$&’が、きて! たすけ!」
ここでブツッと切れた。
「………これは?」
「私が面倒を見た弟子たちの1人からの救助要請」
「いつです?」
「昨日、早急に対処したい」
「場所は?」
ここでジウノアは説明する。
彼の名前はトスト。
回復魔法の才能を持って生まれ、聖職者を養成するための学校に入校し、当時その際に教官だったジウノアが担当した生徒なんだそうだ。
故郷に貢献したい彼は必死で修業に励み、学校で優秀な成績を収め、現在フェノー教輪祭として研修地で頑張っているらしい。
「研修地はペマーと呼ばれる辺境地なの」
辺境地、所謂ホヴァンの出身地なんかはその類に分類される。
「領主との連絡は?」
「取ったよ、村には特に異常なし、というだけ、来訪は告げてある」
「なるほど、つまり実地調査次第ということですか、わかりました、今回の依頼はカミムスビで正式に受領、早速、明日、高速馬車を手配しましょう」
「ありがとね、ファル、この件について」
「分かってるよ~、悪だくみの匂いがするね~、先日深淵へのアクセス権は回復したばかりだ、まかせたまへ」
「オーケー、みんな大好きよ、てなわけで~」
ジウノアは後ろに立っていた俺に話しかける。
「執事さん、私が持ってきたとっておきの乾杯の酒を」
と俺に話しかける。
俺は例の如く、執事服に着替えさせられている。
「…………うす」
とグラスを並べる。
「ジウノア、お、お、お嬢様」
「うーーーーーん、全然ときめかないね、お姫様扱いは全女子の夢だけど、それはイケメンに限ることが今証明されたわ」
「すみませんね、イケメンじゃなくて(#^ω^)ピキピキ」
「んで、なに?」
「軽食は何にいたしますか?」
「あの不味い、なんだっけ、ほら、君のところの、貧乏飯」
「異世界ベルムス巻っすね」
「それ食べたい」
「…………」
例の如く用意されていたベルムス巻の材料を使っていそいそと創る。
「できました、お嬢様」
「あーん」
くっ、しょうがない、我慢我慢。
と食べさせてあげる。
「相変わらず絶妙な不味さ。それにしても胸キュンイベントの筈なのに全くときめかない、イケメンに限ることがまたもや証明された訳だ」
「すみませんね、イケメンじゃなくて(#^ω^)ピキピキ」
「ガクツチ、次はボクね」
「それが終われば私ですよ」
「一回じゃ終わらないよ、次はアタシね」
「は、はい、お嬢様方」
くそう、なんだよ、なんなんだよう、言葉だけ聞けばハーレムなんだよな(´;ω;`)ウゥゥ。
「って、お嬢様方、そろそろ、詳細な打ち合わせを」
「必要ないでしょ」
「はい?」
「今回の遊びできな臭いのは分かるでしょ? となれば今回の遊びで悪だくみで姑息で卑怯な作戦が必要かもしれない、つまりガクツチが最も得意とするところじゃない?」
「心外ですわ~(#^ω^)ピキピキ」
それだけ聞くと姑息で凄い小物みたいじゃないか。
「指示頂戴よ、リーダー」
とジウノアが俺を見てくる。
思えば全員が揃ったのは俺が失踪して以来か、、。
「わかった、不義理ですまない、こんなグダグダな形で再集合になるとはな」
「まあいいわ、というよりも再集合というけど、大っぴらに遊びができるまで、本当の意味で再結成にはならないからね、だから今は、教え子を助ける事に専念したい」
作戦か、、、。
「まずは情報が無ければ話にならない、まずはジウノア、今回のこの件についてだが、色々と聞きたいことがある」
「いいよ、何が聞きたい?」
「まずは」
俺は、とある人物のことを聞く。
「ど、どうして?」
「ま、色々とな、ファル、お前はその人物のことを徹底的に洗ってくれ」
「いいけど、、、でも」
「質問は無し、悪いが時間がないから、優先順位ははっきりさせないとな」
「おおー、懐かしいね、この感じ、分かったよ」
「それでさ、次に気になる事なんだけど~あのーーー」
そう、俺はずっと気になっていた。
それはこの部屋にはそぐわない俺の視線の先。
例の2メートル四方のリュックが。
「これさ、なんなん?」
「リュックサックですけど、見てわかりませんか?」
「うん、見てわかるよ、なんでこれが必要なん?」
「女には色々と必要なんです」
「……誰が運ぶの?」
「え? それって答えないといけないですか?」
「……あの、クォイラさんや、ストレージ魔法を」
「すみませんカグツチ、私のストレージ魔法」
「3人用なんだろ!! もう分かったよ(´;ω;`)ウゥゥ」
と夜は更けていくのであった。
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