第7話 年末年始は平穏に
俺と美優は、冬休みに入った二日目から冬休みの宿題に取り掛かった。勿論俺の部屋でだ。
理由はお父さんもお母さんも二十八日土曜日から一月五日日曜日まで年末年始の休みで家にいる。
だからという訳は無いが、唯一両親の居ない金曜日はそうなってしまう。特に月曜日に嫌な事が有った美優は積極的に何かを忘れたいように攻めて来た。そして俺も彼女から嫌な事を忘れさせる為に思い切り美優にした。
朝、午前九時からお昼も抜きで午後三時まで思い切りした。流石にお腹空いたけど、美優がもっとと言ったので食事が抜きになった。
午後四時半にやっと美優が
「博之、ありがとう。頭から消えたよ」
「良かった」
「明日は朝から頑張ろうね」
「えっ?!」
「ばか、勿論宿題よ」
良かった。これ以上やったら腰が完全に駄目になりそうだ。
そして夕飯の時、父さんは会社の付き合いらしくまだ帰って来なくて母さんと二人で食べていると
「博之、美優ちゃんとするのは良いけど。大丈夫なんでしょうね」
「何が?」
「あなたの体から美優ちゃんの匂いがプンプンよ、全く。美優ちゃんも同じじゃないの?」
「えっ?!」
俺は急いで自分の体をクンクンと嗅いでみると
「そうかなぁ。俺は分からないけど」
「当たり前でしょ。そういうのは、他の人だから分かるの!」
美優大丈夫だったかな?
次の朝、美優は冬休みの宿題を手に持ってやって来て俺の部屋に入ると
「博之、昨日お母さんから何か言われなかった?」
「言われた」
「やっぱり、私もお母さんから言われてしまって。何時からって聞かれたから正直に答えたの。そしたらお母さんが博之君は良い子なんだからしっかりと捕まえておきなさいだって」
「それって?」
「うん、完全に両親公認になっちゃった」
「あははっ、そうだな。じゃあ期待に応える為にもしっかりと勉強するか」
「うん」
それから大晦日まで集中してやったおかげで何とか冬休みの宿題は片付いた。お正月は、美優と初詣に行く為に彼女の家に迎えに行くと美優のお母さんからジッと見られて
「博之ちゃん、美優の事宜しくね」
いつも一緒に出掛ける時とは違ったニュアンスで言われたような気がした。
「あっ、はい」
「お母さん!もう。博之行こう」
「うん」
この辺では有名な神社が在る。美優は勿論着物姿。赤を基調とした素敵な着物だ。髪に刺してある簪も素敵だ。
電車を五分だけ乗らないといけないけど、元旦の所為か着物姿の女性が同じ車両に何人も居た。
普段なら駅を降りてから十分もかからない。でも大昔から在る歴史的にも有名な神社だから凄い人の数だ。境内に入る前どころか参道から溢れて一般道路まで人が並んでいる。
「これは時間掛かるな」
「仕方ないよ。元旦だもの」
一時間以上かかったけど、そこは俺と美優。今年の目標はとか、今年は何処に遊びに行こうとか、大学は何処にしようとか言っている内に境内に着いた。
二人で手を清めて、お賽銭を入れて二拍二礼一拍をきちんとしてお願い事を済ませると横にずれた。
「博之、おみくじしよう」
「おう」
お金を箱に入れてガラガラと番号の書いてある棒が入った筒を振ってから一本を取り出す。二十七番だ。
目の前にある二十七番の引出しから一番上のおみくじを取って後ろの人に場所を譲った。 美優も同じだ。
俺は、おみくじを開けると、えっ?!何で?凶と書いてある。どういう事なんだ?
「美優、どうだ?」
「凶だって。信じられない。そこに結んでお焚き上げして貰おう」
「それがいい」
ほとんど中身も読まずにおみくじを結ぶ細いロープに結んだ。
「酷い。なんで?!」
「まあ、当たるも八卦、当たらぬも八卦って言うからさ。大吉の人が一年中上手く行くって訳でもないだろう。だから構わないさ」
「それは、そうだけど。でもこれが最低ならこれ以下は無いから上向くしかないね」
「そう願いたい。今年は受験生になる。美優と同じ大学に行く為にも気を引き締めないと」
「あっ、それだよ。神社の神様はそれを狙って二人を凶にしたんだ」
「そうだな」
都合のいい受け取り方だがそう思えば気も楽だ。
それから参道の両脇に開いているお店を見て、甘酒を飲んだりして家に戻った。美優の家に送ると
「博之ちゃん、上がって。お節用意してあるわ」
「博之、私も着替えるから二人で食べよ」
「分かった。ちょっと母さんに言って来る」
こういう時は近い事が便利だ。母さんに美優の所でご馳走になると伝えると、食べすぎちゃ駄目よ。家にも二人用に一杯作ってあるからと言われた。
美優の家に戻って、それを伝えると、
「それ明日じゃ駄目かな」
そういう訳で元旦は美優の家で、二日目は俺の家で二人でお腹一杯になってしまった。勿論、二日は父さんから渋沢さんを二枚ほど貰った。
三日は、俺の部屋でのんびりした。ちょっとだけ声が出ない様にしちゃったけど。
四日と五日は近くのこの辺では一番賑わっている街に出かけた。懐具合が暖かいので足が軽い。でも財布のひもは固かった。結局、ほとんどウィンドウショッピングで終わってしまった。
そして両親のいない六日と七日は、俺の部屋で楽しい事をして過ごした。七日の日に一通り終わった後、ベッドの上で
「美優、明日から学校だな」
「うん、前島さんの事どうしようかな?」
「もう、避けるしかないんじゃないか。久保があの人を利用したのははっきりしているし」
「そうね、はっきり言うわ」
「どうしても駄目だったら。中休みは俺の所に来い。俺が行ってもいいぞ」
「うん、そうする」
―――――
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