第29話 心地良い日々
俺は前期の履修届を出す前にアパートに戻って来た。山田さんは三月一杯昼のバイトをするそうだ。
そう言えば、大石はバイト先をクビになったと聞いた。当たり前の話だが。でも彼女は夜の危険は変わらないと言って俺に四月からお迎えを復活して欲しいと言われたので快く受けた。
もう体も何回も合わせている。そんな彼女を守るのは当たり前の事だ。
一月はバラバラで大学に行ったものだが、四月に入りこれからは授業開始時間が会う時だけ一緒に行く事にした。
二年次になってからは一限から有るのは月、金だけ。それ以外は二限からだ。俺はとても楽だが、山田さんとは授業開始時間が違うからその時は仕方ない。
俺と彼女は同じ駅から乗って同じ駅で降りる。同じ南門から入ると工学部の建物の横を通って事務局棟の横を通る。
それから校内の森と言っても公園だけどそこを通ると文学部の建物がある。ちょっとした距離だ。
「長田君、お昼休みにね」
「うん」
そして俺は文学部の横を通って理学部の建物に入って行くという感じだ。
久々に四号館の講義室に入って行くと榊原さんと大隅はもう来ていた。俺の方から
「久しぶり、榊原さん、大隅」
「おお、久しぶりだな。長田」
「長田君。元気そうね」
「まあまあね」
少し無駄話をしている間に講師が入って来た。
お昼休みになり、大隅と榊原さんと一緒に大学会館のフードコートに行って何を食べるか考えているとスマホが震えた。山田さんからだ。
『はい』
『長田君、どこいるの?』
『フードコートの入口です』
『分かった』
三分もしないで山田さんが来た。榊原さんが面白くない顔をしているけど無視。
「長田君何食べるの?」
「うーん。かつ丼にしようかと思っている」
「じゃあ、私も」
榊原さんが
「山田さん、二年になっても一緒なの?」
「何で榊原さんがそんな事言うの?」
「だって山田さん、文学部でしょ」
「学部なんて関係ないでしょ。ねっ長田君」
「え、ええ。まあ」
§大隅
あれ、長田と山田さんの間に何か有ったのかな?今迄と雰囲気が明らかに違う。
「さっ、長田君、丼物コーナーに行こう」
「ええ」
俺と山田さんが、丼物コーナーに行くと榊原さんと大隅が
「何あれ?」
「さぁ?俺はラーメンにするよ」
「私も」
俺と山田さんが四人掛けテーブルに座って居ると大隅と榊原さんが味噌ラーメンと野菜ラーメンをトレイに載せてやって来た。食べ始めたけど当然話題は春休みの話になる訳で
「長田君、休みは何していたの?」
「のんびりして一年の復習していた」
「えーっ、だったら連絡すれば良かった。てっきりバイトとかしているかと思ったのに」
「榊原さんは、何していたの?」
「私は…何もしてなかった」
「じゃあ、同じですよ。大隅は?」
「俺はバイトしていた。夏休み旅行とか行きたいしな」
「ねぇねぇ、夏休み皆で旅行行こう」
「私は行かないわ」
「山田さんは行かなくて良いわよ。三人で行くから」
「俺も無理かな」
「えっ、長田君も?」
「うん、夏休みは色々ありそうだからな」
「大隅君は?」
「俺は一人旅行がいい。予定考えないで好きに出来るし」
「はぁ、皆冷たいな」
山田さんが食べ終わると
「長田君、先行くね」
「はい」
山田さんの後姿を見ながら大隅が
「長田、山田さんと休みの間に何か有ったのか?」
「まあ、ちょっとな。でも後でな」
「そうか」
§榊原
えっ、どういう事?長田君は春休みはのんびり一人で過ごしたんじゃないの?何か有ったって…。それに一年生の時より明らかに二人の距離感が近い。まさか…。
俺は、授業が終わると一人でアパートに帰り、先にシャワーを浴びてジュースとか飲みながらレポートを書いたり予習復習をする。そして午後八時半になると山田さんを迎えに行くという一月と同じパターンだ。
そしてバイトの終わった山田さんと一緒にアパートに帰って来て三十分位で夕飯を一緒に食べる。
その後は、お互いが自由時間になるのだが、山田さんはそれからシャワーを浴びる。あれ以来、結構露出の多い姿でダイニングとか歩くからちょっと目の毒だ。
偶に挑発してくるような素振りを見せるし。あれは週一と決めているので普段は授業中心なんだけど。
そんな甘い?時間を過ごしながら四月も終りの頃
「長田君、GW授業休みじゃない。それでね。両親が偶には帰って来いと言っているのよ。バイトが有ると言っても、その位は帰って来れるだろうってきつく言われて」
「えっ、全然帰ってないんだっけ?」
「うん、お正月以来」
「えーっ、それはご両親心配するよ。山田さん女の子なんだし、GW帰ってきたら。俺も実家に帰るから」
「分かった。ありがとう。じゃあそうするね」
そして俺はGW、実家で過ごす事になった。
私は、GWの初日に実家に戻った。隣県と言ってもアパートの最寄り駅から一度池袋まで行ってそれから乗り換えて快速電車で一時間。特急が停まらないから仕方ない。
実家で洗濯すればいいからと手荷物は着替えの洋服三日分位。後は全部家に有る。
駅から歩いて更に二十分。お父さんが車で迎えに来てくれたから良かったけど結構遠い。こんな所から通えたものではない。
車で迎えに来たお父さんに
「ただいま。お父さん」
「お帰り、綾子。少し綺麗になったか?」
「ふふっ、そうかもね」
原因は長田君。彼との楽しい時間のお陰。
家に戻るとお母さんと高校三年生の弟が迎えに出ていた。
「お帰り、綾子」
「お帰り、姉ちゃん」
「ただいま」
それから団欒タイム。話の中で
「美里、そう言えば勝君も帰っているぞ」
「えっ!」
勝君というのは、
でもお互いが進学や勉強の事で話が合わない所に彼に別の女の影がちらついて喧嘩別れ状態。親もその辺は知っている。
「でももう関係無いよ。大学も違うし、あれから一年半も経っているから」
「そうか、彼の方は会いたがっていたけどな」
私には長田君がいる。関係無い。
―――――
次回をお楽しみに。
面白そうとか、次も読みたいなと思いましたら、ぜひご評価頂けると投稿意欲が沸きます。
感想や、誤字脱字のご指摘待っています。
宜しくお願いします。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます