第49話 予想外の出来事
三年次の授業期間も後一ヶ月を切った。もうすぐ後期試験。それと研究グループの課題提出がある。それが終われば四年次に向けて春休みになる。
いつもの様に俺と大隅それに榊原さんと午前中の授業を受け終わってフードコートに行く。まだまだ寒い今日は暖かいかき揚うどんにするつもりだ。
でも榊原さんが真剣な顔をしている。そう言えば授業中から心ここにあらずと言う感じだったけど。
大隅はカツカレー、榊原さんはBLTサンドを持って三人でテーブル席に座って食べ始めてもいつも活発な榊原さんではない。気になって
「榊原さん、どうしたの。朝からとても何か考えている様だけど?」
「長田君。…飛んでもない事が起きたの」
「飛んでも無い事?」
「うん、正月休み、家でのんびりしていたらお父さんが、誰かと初詣でも行かないのかと言われたので、そんな事私の勝手でしょって言ったら…。いい青年がいる。美里会って見なさい。なんて言うの」
「それってもしかしてお見合いって奴?」
「そう、絶対やだよ。初詣一緒に行かなかった長田君の責任だよ」
「お、俺?」
自分の顔を指差して言うと
「他に誰が居るのよ」
「大隅とか?」
「おい、長田。俺を巻き込むな。お前が悪い」
「お前もかよ」
「でね、会いたくないなら今付き合っている人を連れて来なさいって言うの。だから今は後期末で試験とか課題で忙しいから時間無いと言ったら、終わってからで良いって言われて。ねえ、どうすればいいの?」
「俺達に言われても」
「長田、お前だけだ。俺を入れるな」
「そう、長田君が悪い」
大隅の顔が笑いたくて仕方ないという顔になっている。
「とにかく、春休みに入ったら連れて行く事になってしまって」
「春休みってもう目の前でしょ。取敢えずその人と会って見たら?」
「長田君、私がどこかの知らない男に連れ去られてもいいの?」
ちょっと言い方が間違っている様な?
「まあ、それは良くないな」
「じゃあ、長田君協力してよ」
「へっ、もしかして…」
「私のお父さんと会って」
「いやいやいや。ムリムリムリ」
「じゃあ、長田君は三年来の友達の窮地を見過ごしてこんな幼気な可愛い女の子が猛毒を持った蜘蛛にからめとられてどうなっても良いと思っているの?」
言い方が凄すぎる。とうとう大隅が口を押えて笑い始めた。
「長田、一肌脱いでやれ。これだけ榊原さんが困っているんだ」
「大隅、気楽に言うなよ。榊原さん、まだ春休み迄時間有るし、後期試験と課題提出が残っている。それから後で考えよ。大隅と一緒に」
「俺は部外者だ!」
§榊原
言った事は本当だけど、これで長田君と関係が持てれば次につながる。もうすぐ四年。時間はそんなにない。
午後の授業を受けて研究室に行った。課題も最終チェックに入っている。これを終えて教授に提出して認めて貰えば終わりだ。
俺の横には早瀬さんが付きっ切りでいる。就活どうなっているんだろうと聞きたい所だけどそうもいかない。実際早瀬先輩の助言は大きいからだ。的確に過ちを指摘して来る。
他の三人も四年生と一緒にまとめをしている。この研究グループは真面目で成績がいい学生達が集まっていると教授は言っていたけど本当の様だ。一応俺も入っているみたいだけど。
それから二週間が経ち後期試験も無事に終え、課題も提出し休みも目の前に迫ったある日、早瀬先輩から
「長田君、私、院に行く事にしているから。本当はもっと早く言えば良かったのだけど」
「えっ、融合科学研究科ですか?」
「うん、地球環境科学専攻」
この人滅茶苦茶頭がいい才女じゃないか。女子は二、三人しか入れないぞ。
「でね、もし、もしだよ。君さえ良かったら友達からでいいから…」
「考えておきます。あっち無しの普通の友達ですよ」
「うん、それでいいから」
やったぁ。これで長田君の傍に居れる機会が増えた。でもこの子の傍に居ると心が温まるのはどうしてかな?
「長田君、休みはどうするの?」
「何も決まっていません。多分アルバイトしていると思います」
多分しないけど一応言っておこう。
「連絡してもいいかな?」
「それは構いませんけど」
「うん、じゃあ、連絡するね」
「はい」
早瀬先輩は、それだけ言うと南門の方へ歩いて行った。そう言えば先輩マンション暮らしだったけど実家って何処にあるんだろう?
大隅は、家の手伝いとか色々有るらしく、三月末まで会う事はなさそうだ。
問題は榊原さん。この前も
「長田君、二月の入ったら連絡する」
「日にちは?」
「お父さん、忙しくて二月にならないと予定組めない様なんだ」
「分かった」
あのお昼の時、押し切られて。お人好しにも程がある。どっかで似た様なフレーズ聞いたけど、まさに地で行ってしまった。
真行寺さんからは、毎日とは言わないけど一杯会いたいと言って来るし…。前途多難な春休みだなぁ。
はぁ…。俺も家に帰ろ。
―――――
次回をお楽しみに。
面白そうとか、次も読みたいなと思いましたら、ぜひご評価頂けると投稿意欲が沸きます。
感想や、誤字脱字のご指摘待っています。
カクヨムコン10向けに新作公開しました。現代ファンタジー部門です。
「僕の花が散る前に」
https://kakuyomu.jp/works/16818093089353060867
交通事故で亡くした妻への思いが具現化する物語です。初めちょっと固いですけど読んで頂ければ幸いです。
応援(☆☆☆)宜しくお願いします。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます