第36話 年次が変われば気分も変る


 三年生になった。理学部で有る事は変わりないが大きく変わったことがある。そう俺は希望通り情報数理学コースに入る事が出来た大隅も一緒だ。残念ながら榊原さんは数学コース。


 でも今、彼女は俺の右隣に座って講義を聞いる。三年次になったからって両コースの必修科目は一緒だし、選択必修は数学コース、情報数理学コースとも同じ科目はある。彼女は俺にどれを選ぶか聞いて来て一緒に受けているという状況だ。


 そして昼休みになると一緒にフードコートに行って食べる。この風景は二年までと変わりない。俺は食べながら

「大隅、今度の新歓行くか?」

「行きたいんだけど、都合が付かなくて」

「彼女でも出来たか?」

「まさかぁ。残念ながら家の用事だよ」


「長田君、その新歓って何?」

「情報数理学コースの新人歓迎会。十二人が三グループに分かれているんだけど、俺が入っているグループが今度開くって言われてさ。先輩と顔を合わせられるいいチャンスかと思って参加しようと思っている」

「そうなんだ。そう言えばうちも有った。真面目な人ばかりで、専門的な話ばかり。はっきりって詰まらなかった」

「それは、ご愁傷様」


「そう言えば山田さんの顔見なくなったな。長田何か知っているか?」

「俺が知る訳無いよ」

「私、知っている」


「何で榊原さんが知ってるの?」

「文学部に友達が居てさ。その子が山田さん休学届出したって言っていた」

「へーっ、理由は?」

「そこまでは知らない。多分これじゃない」

 そう言って榊原さんは自分のお腹に両手で膨らますポーズをした。


「ふうん。どうでもいいや」

 元カレの子かな?俺である事はないな。



 歓迎会は、その週の金曜日に大学の近くの居酒屋で開かれた。先輩四人、新人四人。それに事務課の人が一人来た。



 最初は、全員が自己紹介。その後、トークタイムになったのだけど、最初は、両隣りが知っている顔と知らない先輩。


 このコースの進め方とか准教授、教授の癖とかを色々教えてくれた。愚痴とかじゃなくて、授業の進め方に特徴があるようだ。


 楽しく聞かせて貰っているとトイレタイムとかで段々場所が変わって来る。一時間位して女性が俺の隣に座って来た。髪の毛が長く切れながらの目の綺麗な女性だ。


「君、長田君って自己紹介していたね。私は早瀬琴葉はやせことは宜しくね」

「こちらこそ宜しくお願いします」

「ふふっ、礼儀正しいね。なんでこのコース選んだの?」

「はい、将来、企業の研究職に就きたくて」

「へーっ、それなら数学コースでも良かったんじゃない」

「やりたい事がちょっと違うので」

「ふむふむ、もっと詳しく教えてよ」


 この前二十歳を過ぎたばかりの俺は、お酒なんか飲んだ事がない。最初はウーロン茶とか、オレンジジュースとか飲んでいたけど、先輩が、


「ウーロン茶にちょっとだけアルコールが入ったお酒が有るの。甘くて全然酔わないからちょっと飲んでみる」

「でも…」

「いいから」




 とっても頭が重い。昨日の事は半分位しか覚えていない。目をゆっくり開けると知らない天井だ。それと俺の隣には早瀬先輩が一糸まとわぬ姿で寝ている。俺も素っ裸だった。これって…。


 俺がごそごそしていると

「うーん。あっ、長田君、起きた」

「あのこれって?」

「ふふっ、昨日はねえ。新歓が終わった後、駅まで送って行こうと思ったのだけど、君が隣駅で乗り換えてそれから四十分位電車に乗るんだとか言っていたから、とても一人でそれが出来そうに無いと思って私のアパートに連れて来たの。そしたら長田君、凄く積極的で。私、焦っちゃったわ」

「えっ!俺、早瀬先輩としちゃったんですか?」

「見れば分かるでしょ」


 本当は、私が彼の洋服を脱がしてそのまま持ち込んでしまった。彼は酔っていたけど凄く積極的で何回も行かされたわ。背が高くてカッコいいし。良いかも。


「あの、俺帰ります」

「ふふっ、だーめ。こんな事になった責任取って」

「それは…」

「ふふっ、冗談よ。でももう一回しよう。そしたら帰っても良いわよ」

「でも…」

「つべこべ言わないの」


 それから二回させられた。昨日はどうしたんだろう。俺あれを着けてないけど。

「あの、着けてない」

「心配しないで。きちんと飲んでいるから。ねえ、それより私と付き合わない。もうこんなにしたんだし」

「えっ、でも俺、早瀬先輩の事、何も知らないし」

「これから知って行けばいいじゃない。いいでしょう」


 半分責任取らされた感じだが、とても綺麗な女性だし、先輩という立場柄勉強にもプラスになると思って、友達からという事にした。


 彼女はもうこれだけしているのに友達からなの何て言って笑っていたけど。とても明るい性格の様だ。


 大学の授業で早瀬先輩と会う事はないが、グループ研究の相談では他の人一緒に結構頻繁に会っている。


 彼女は頭脳も優秀だけど酒も強い。俺はどちらかというと一緒に飲んだ…彼女だけ一杯飲んで、後は俺がアパートまで送るという流れになってしまった。


 大隅は別のグループだけど

「長田、最近早瀬先輩と仲いいじゃないか。何処まで行ったんだ?」

「ただのレスキュー隊だよ」

「飲みの時のか?」

「ああ、でも送った後、俺が羊になる時がある」

「あははっ、それはそれは。俺もそろそろ見つけたいな。同じグループの女子は先輩も含めて真面目な人ばかりでさ」

「そっちの方が良いじゃないか」


 早瀬先輩は、普段真面目なんだけどお酒を飲むと人が変わる。俺はあまり酒が得意じゃないみたいで全然飲めないから送って行った後、飲まされて…。朝になる。


 でも楽しい事は確かだ。授業を欠席する事も無いし、飲まされ過ぎる時は、金曜の夜が多いから。


 それに土日は会う事が無い。土日にデートというのが普通なんだけど、彼女は土日は私の時間と言って俺と会う事をしない。俺もそれが助かるので特に気にも留めなかった。


 そんな時間が過ぎて前期も終わろうとしていた。



―――――

次回をお楽しみに。

面白そうとか、次も読みたいなと思いましたら、ぜひご評価頂けると投稿意欲が沸きます。

感想や、誤字脱字のご指摘待っています。


カクヨムコン10向けに新作公開しました。現代ファンタジー部門です。

「僕の花が散る前に」

https://kakuyomu.jp/works/16818093089353060867

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