第37話  勇者が来ていた?!





「来い、【嵐の帳】」







⦅警告、膨大な魔力を検知しました⦆



 魔力?!てことはまさか!



⦅はい、間違いありません。勇者様が行使した魔法です⦆



 突如会場を黒い霧が覆いつくし、すべての人たちの視界を奪い、誰が何処に居るのかも分からなくなるほどに方向感覚が失われていく。



 ま、前が!てか左右後ろ何も見えねー!!



⦅大丈夫ですか?リーチェ様!⦆



 全然大丈夫じゃねー!!!ナターシャは辛うじて隣にいるのがわかるくらいだよ。



⦅お気をつけ下さい、この魔法は恐らく広範囲を対象に視界を奪う力を持っています⦆



 咄嗟の判断で、リーチェはナターシャの手を握ったがそれ以外の全てが全く見えなかった。



「よくやった、後はオレに任せろ」



 今度は謎の声がリーチェの近くから聞こえ、何かが横切った。



 次の瞬間、悲鳴と断末魔が会場全てに響き渡り阿鼻叫喚地獄が発生、血飛沫が色んな所から飛び散り始める。



「何が起きているんだ?」



「分かりません、この霧は一体?」



 突然の事で不安になるナターシャは、リーチェに抱きついて怯えてしまう。



「この霧、アイが教えてくれたんだけど勇者様の使った魔法らしいよ!」



「ゆ、勇者様?!」



 やがて霧が晴れて見晴らし良くなるが、リーチェ達の視界にとんでもない光景が飛び込んできた。



「こ、これは...!」



「う、嘘?!」



「一体何が...お、俺様の【黄金騎士団】がーーーーー!!!」



 リーチェ達が見たのは、ユリウスの率いていた【黄金騎士団】の変わり果てた姿だった。



「こ、殺されてる...騎士達だけが全員!」



 これ全部、勇者の仕業なの?あの一瞬で騎士達だけを全員殺して姿を消すとか...、お前はどこのジャック・ザ・リッパーだよ?!



⦅しかしリーチェ様、これはチャンスですよ!⦆



 はっ!そういえばそうじゃん!勇者の事で呆気に取られてたけど、クソ王子の部下が居なくなった今なら確保出来る!



「神妙にお縄なさい!」



「チクショーーー!!!」



 とか思ってたらナターシャがもう5人を逮捕してたわ。



 その後日、ナターシャの要請によって『【勇者教】アトランティス支部教会』の専属聖女様がやって来てクソ王子達の所業を断罪する為の裁判が開かれた。



 数々の証言を元に情状酌量の余地無しと判断され満場一致で有罪&破門が決定、数日後彼らは【処刑刀】の露に消える事となった。



「この俺様がどうしてこんな目に...全て貴様の所為だリーチェ!!!

妾の子の分際で俺様に逆らいやがって!!!」



「酷い責任転嫁だね、全部身から出た錆じゃん」



「黙れ!!!貴様さえいなければ今頃はアデルを手籠にして、ハーレムの一人になった筈なのに!!!」



 うん、知ってはいたけどテンプレ過ぎない?



⦅ここまでの悪人っぷりは最早天晴れですね⦆



「最後に言い残す事はあるか?」



 【勇者教】本部から派遣された首斬り役人が、ユリウスに問いかける。



「覚えてろ、逃げ出した妾の子の分際で俺様に逆らった反乱分子よ、いつか父上に裁かれるがいい!!!

そしてその時こそ、俺様の怒りを思いだせ!」



 絶対言うと思ったよ、その言葉に対し素敵な言葉を送ってやろう。






「忘れてやる」






 ザシュッ!!!



 ボクの言葉と同時に首斬り役人さんが、クソ王子の首を処刑刀【髭斬り】で刈り取った。



 凄いねあの刀、アレも業物なの?役人さんも相当な腕前っぽいけど。



⦅肯定、ステータスを開示致します。

こちらをご覧下さい⦆




名前:カナリア

年齢:16歳 

性別:女性

職業:冒険者・【勇者教】本部の処刑執行人

服装:ミニスカメイド服

資格:一刀流居合術の総師範

称号:【幽玄の剣聖】

隠れ称号:【塩分高めで無愛想な巨乳美少女】

冒険者階位:マスタークラス

武器: 【妖刀髭斬り】



武器名:【妖刀髭斬り】

位列:最上大業物

特徴: 全長110cm・刃渡り80cm・重さ2000g

   材質(玉鋼・砂鉄・軟鉄)

備考:ハイエルフの名工【千子村正】が勇者に

   依頼されて造られた名刀。

  【勇者教】の戒律の象徴として記念品館に

   展示されていたが、後に戒律を破った罪人

   を処刑する為に用いられるようになった。




 何でミニスカメイド服を着ていたのかは、敢えて突っ込まない事にしよう。



⦅クセの強そうな方ですね⦆



 公開処刑を終えると、シャルルはリーチェに一礼して後を去った。



 そしてその更に数日後、『会場で発生した黒い霧が死んだ筈の勇者様が使った魔法であった』という話題がアトランティスだけで無く、世界中の各国で大騒ぎだった。



「リーチェさん、あの時は本当にありがとうございました!!!」



「と、当然の事をしただけだよ」(焦り)



「いいえ、貴方の愛の告白のおかげで折れそうだったアタシの心は救われたんです。

本気で貴方の事が好きになりました!お願いします、アタシと結婚して下さい!!!」



 後ろから途轍もない圧を感じるのは気のせいなのだろうか?(汗)



⦅気のせいではありません、現実を見ましょうね⦆



 つ、つい勢いでやっちゃったけど今なら謝ったら許して貰えるかな?



⦅恐らく許して貰えないかと。

顔に「今夜襲うぞ」と頑なに書かれてます⦆



 ひ!神様、仏様、天照大神様!!

おお助け下さい!!!



⦅交信...「ゴメン無理⭐︎諦めろ\(^o^)/」と回答が来ました⦆



 ショ、ションナーーー!!!



「ハァ、色々と言いたい事はございますが、これだけは言わせて貰います。

正妻の座は譲りません!!!」



 ちょ、ナターシャ?!その発言は...



「では、結婚を認めて貰えるんですね?第二婦人として!!!」



 当人抜きにして勝手に話進めないで?!



「はい、一緒にリーチェを幸せにしてあげましょう♡」



「ありがとうございます!不束者ですが、よろしくお願いします♡リーチェ///」



⦅やはりタラシですね⦆



 お嫁さんが増えた...嬉しい筈なのに、今は恐怖の方が勝っている。(ガクブル)



「とりあえずリーチェ?」



「ハ...ハイ」(泣)



「今夜は覚悟して下さいね?♡」



 オイオイオイ、死んだわボク。



⦅お幸せに(笑)⦆









ミッツェガルド王国・リーゼロッテ公爵邸




「ユリウス第一王子は処刑されたらしいな」



「はい、満場一致で判決が下されました」



 優雅に紅茶を啜るリーゼロッテ公爵の問いに、専属メイドのリィラは答える。



「今後この国は大きく傾くであろう、王家の求心力に亀裂が入るのは最早時間の問題になる」



「王家の求心力が完全に崩壊した時こそ、オウルバー・ビヨンド・ミッツェガルド王の暗殺を行う絶好のチャンスです」



 リーゼロッテが持っている暗殺リストの中にはリーチェを除く、全ての王家の兄弟の名前が載っていた。



「そういえばリィラ、【魔法】を使ったらしいな?」



 含みのある笑顔でリィラに問う。



「申し訳ございません、あの場でそのまま衝突となれば死人が出た可能性があった為...」



「構わんさ、目的さえ忘れていないのなら全て不問だ」



「ありがとうございます」



 ご主人様の言葉に胸を撫で下ろす。



「これからもお前の働きに期待するぞ、リィラ・ヴィーヴィル。

いや...、








【元勇者】、綺素姫瑠きすきる 星奈せなよ!」







⦅報告、ステータスを更新します。

お読み頂き、ありがとうございます⦆


名前:リーチェ

年齢:15歳

性別:女性

前世の名:邇弍芸ニニギ 乙葉オトハ

職業:冒険者

服装:春夏秋冬のコーデ

称号:【妖精騎士】

冒険者階位:アルティメットクラス

武器:【妖刀村雨】

加護:【アイとの交信】

   【天照大神の寵愛】

   【妖精騎士の証・風纏い】



名前:ナターシャ

年齢:22歳

性別:女性

職業:冒険者・暗殺者・【勇者教】の聖女

服装:聖女の修道服

資格:錬金術師一級・冒険調理師一級

称号:【導きの聖女】

隠れ称号:【麗しき爆乳聖女】

冒険者階位:アルティメットクラス

武器:【アダマスの大鎌】




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