第25話  二人の絆





 日が昇り始めた辺りでキャンプを撤去し、【黄金の樹海】の探索を再開する。



「そういえばさ」



「どうしました?リーチェ」



「【クイーンハニー】を守る【樹海のヌシ】ってなんだろう?」



⦅私も気になりますね...⦆




回想〜



 それは、【黄金の樹海】にある【クイーンハニー】を採取に向けて準備をしていた時。



「そうだ、【樹海のヌシ】に気をつけなさい」



「【樹海のヌシ】?」



 何かを思い出したのか、リーチェ達に警告する。



「【黄金の樹海】を支配するボスの様な存在だ」



 な、なるほど...それだけじゃどんなのか想像できないな。



⦅データベースにも載っていません、なんらかの方法で情報が隠されています⦆



「特徴とかはございますか?」



 ナターシャはなんか興味深々だった。



「そうだな...大きさはブリザードサウルスの三倍、白い毛並みに四本の大きな牙...くらいかな?」



回想終了〜




「改めて思い出してもなんか想像できない...」



「会ってみたらわかるかもですね」



⦅私も興味あります⦆



 しばらく二人が【黄金の樹海】を歩き進めると、神殿の様な巨大遺跡を発見する。



「古い遺跡かな?」



「こんなのが建っていたのは驚きました」



 中に入ってみると、中は思ったより綺麗だったので休憩することにした。



「なんか、神殿にしては違和感がある様な...」



「確かに、ここまで綺麗だとまるで最近まで誰かが手入れをしたみたいですね」



 先程まで休憩していた二人が違和感に気付き、警戒し始める。



⦅警告、【妖精将】以上の【神気】と、【妖精将】クラスの【神気】を検知しました⦆



「その通りだ...ここはさる御方の為の神殿」



 神殿の奥底から謎の声が響き渡り木霊する。



「誰?!」



「奥へ進むが良い冒険者よ、目的は【クイーンハニー】であろう?我は奥で待つ」



 しばらくの沈黙の後、意を決する。



「奥に進もう、でなきゃ【クイーンハニー】は手に入らないっぽい」



「えぇ、進むしかないようですね」



 謎の声に導かれるように、奥を目指し行動を再開する。

 途中休憩を繰り返しながら、奥に到着すると辺り一面、大きな湖が広がっていた。



「で、でっか!何この湖?」



「神殿の奥にこんなのがあったなんて...」



 呆気に取られていると、湖の周りに広がる森の奥から巨大な生物が姿を現す。



「よく来たな冒険者よ...我が名は【ホウキ】、この【黄金の樹海】と【エレウシス農国】の守護者であり、【エレウシス農国】の人々からは【雨の神】と崇められている」



 奥から現れたのは巨大な猪である。



 その巨体は【ブリザードサウルス】の三倍を超えた大きさを持ち、四本の鋭く長い牙と真っ白な毛並みが輝きを放つ。

 


 その姿は御伽話に登場する神獣【封豨】を連想させる。



「アンタがボク達をここまで呼び寄せたの?」



「如何にも、【神殿】に挑む冒険者には敬意を払い、拒まず招いている」



⦅データの検出不可能、一切の情報を引き出せません⦆



 マジで?!この流れからして多分コイツと戦う事になりそうだけど、情報が出てこないのは不味いな...。



「その前に、【クイーンハニー】についてお前達はどこまで知っている?」



「えっと...希少価値が非常に高い幻の蜂蜜としか存じ上げておりません」



 そういえば【クイーンハニー】について何も知らなかったな...。



「なるほど...。

では我が教えよう、【クイーンハニー】とは勇者様が【金色小麦】の研究開発の過程で生まれた【女王秋桜】という花の蜜をミツバチ達が集めた結果、偶然出来た蜂蜜である」



 また勇者か?!どんだけ世界に影響与えまくってんだよ?



⦅ここまで来るとリーチェ様と同じ地球人なのか、疑わしいですね⦆



「つまりだ、お前達は勇者様の財産を狙った賊であると同意義なのだ」



「要するに、諦めてくれという事でしょうか?」



 ナターシャ、キミからしたら辛い事かも...。



⦅勇者教の聖女様からすれば背信に等しい事ですから、無理もないです⦆



「案ずるな、我との御膳試合に勝てば微量だけだが持っていく事を許そう」



「この小瓶一杯分が欲しいんだ」



「それくらいであれば、勝利の暁にくれてやっても良い」



 よし、なら試合をサクッと終わらせて依頼達成だ!



「試合内容は簡単、2分間我はお前達の攻撃に耐え続けよう。

我に擦り傷でも与えられたらお前達の勝ちだ、【クイーンハニー】をくれてやろう。

逆に制限時間が来たら我の勝ち、【クイーンハニー】は諦めて貰おう」



「なんか条件緩そう...?」



⦅否定、そう簡単ではないかと⦆



「防御力には自信がある。余程のことでは傷付かぬぞ」



 そういえば神獣の【封豨】もめちゃくちゃ堅いって伝説があったような?



「準備が整い次第始めようと思うがどうだ?」



「リーチェ、貴方は?」



「大丈夫だよ!」



「では、来い!お前達の力を示してみよ!!!」



 二人は武器を構え、攻撃を開始する。



「妖精将一刀流剣術【風の戯れ】!」



「ほう、妖精族の剣技か!筋も良い!だが、我に擦り傷を与えるには足りぬ!!!」



 なんとリーチェの剣術では全く歯が立たなかった。



「勇者様、どうかお力をお貸し下さい!【君主の断罪】!」



「その鎌は【アダマスの大鎌】...そして先程の刀は【妖刀村雨】...どちらも勇者様に所縁のある刀剣だな?」



 何かを察したのか二人の持つ武器に興味を持ち始める。



「妖精将一刀流剣術【風の逆鱗】!!!」



 リーチェの渾身の一撃がホウキに直撃するが、衝撃で後ろに下がるだけで傷が出来なかった。



「なんと!凄まじい一撃だ、我を衝撃で後退させる程の威力など、勇者様に続きお前で二人目だな」



「でも切り傷がない!硬すぎだろ?!」



⦅先程の自信はこの圧倒的な防御力だったのですね⦆



 ただただ制限時間が迫ってくる状況。



「どうすればあの堅牢な装甲を...」



⦅制限時間が迫っています⦆



・・・! そうだ、攻撃を重ねれば!



 打つ手無しと思われたが、リーチェは諦めずナターシャに駆け寄る。



「ナターシャ、ちょいと耳貸して」



 耳打ちでナターシャに提案を聞かせ、驚かせる。



「...そんなことが出来るのですか?!」



「ボクを信じて!」



 リーチェの真っ直ぐな瞳に、ナターシャも勝利を確信する。



「リーチェ!合わせて下さい!」



「わかった!いくよナターシャ!」



 莫大な【神気】を体内から放出し、自身とナターシャに纏わせる。



⦅私が計算しますので、リーチェ様はそれに合わせて下さい⦆



 覚悟を決めた二人はほぼ同時に駆け出し、突撃を開始する。









「「【合技・一蓮托生】!!!」」











「ぐ!!!」



 二人の力を重ねた強烈な一撃を受け、悶絶する。

ホウキの体には一本の切り傷が薄らとついた。





「お見事!!!」





⦅報告、ステータスを更新します。

お読み頂き、ありがとうございます⦆


名前:リーチェ

年齢:15歳

性別:女性

前世の名:⬜︎⬜︎⬜︎ ⬜︎⬜︎

職業:冒険者

服装:春夏秋冬のコーデ

称号:【妖精騎士】

冒険者階位:アルティメットクラス

武器:【妖刀村雨】

加護:【アイとの交信】

   【天照大神の寵愛】

   【妖精騎士の証・風纏い】



名前:ナターシャ

年齢:22歳 

性別:女性

職業:暗殺者・冒険者・【勇者教】の聖女

服装:聖女の修道服

資格:錬金術師一級・冒険調理師一級

称号:【導きの聖女】

隠れ称号:【麗しき爆乳聖女】

冒険者階位:ハードクラス

武器:【アダマスの大鎌】


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