第26話  牡羊座の試練





 【黄金の樹海】を守護する神獣【ホウキ】との試合に勝ったリーチェ達は、神殿最深部の更に奥、湖の側面を進んで小さな泉に辿り着く。



「ミツバチ達よ、少し道を開けてくれ」



 泉の周りを飛んでいたミツバチ達がホウキの一言で、泉の隅に移動する。



「さ、進がいい」



「「こ、これは!!」」



⦅!!!⦆



 泉の前には蜂の巣があり、そこから滴る黄金の蜜が輝きを放つ。



「コレが...【クイーンハニー】!」



「甘くて濃厚な香り...なのに凄く爽やか」



⦅まるで純金のような液体ですね⦆



 その輝きは黄金より美しく、濃厚かつ爽やかな香りを放つ。



「驚いたであろう?この蜂蜜はいつ見ても美しい...。

さ、その小瓶一杯分の【クイーンハニー】を持っていくが良い」



 よし!これで依頼は達成、ナターシャもアルティメットクラスに昇格だ!



⦅警告!【妖精将】規模の【神気】を検知!⦆



「ダメじゃない、【クイーンハニー】はボクだけのお菓子なんだから...」



「【ローゼン】様...」



 ここまで来て更に邪魔が入るの?!てか今【ローゼン】様って言ってたけど...てことは?



「聞くがいい!ボクは【妖精軍12星将】が一人、【牡羊座のローゼン】だ!」



 またグロリア姉さんの同僚かよ!!!



⦅ステータスを表示します。こちらをご覧下さい⦆




名前:ローゼン

年齢:1200歳

性別:女性

職業:冒険者

称号:【妖精将】

二つ名:【牡羊座のローゼン】

冒険者階位:マスタークラス

加護:【妖精将の証・極天の流星雨】

   【牡羊座の導き】




 どうしよう、流れ的に彼女とも戦わなくちゃダメなのかな?



「【クイーンハニー】は全部ボクのだよ、誰にもあげない!」



「しかしローゼン様、この者達は我との試合に勝ったのです。微量くらい分け与えても良いではありませんか」



「嫌!」



 この人...他の妖精将と比べるとめっちゃワガママじゃん、もう絶対貰えないパターンかな?



「では以前お会いした妖精族様のように、試練をクリアすれば分けて頂けるのでしょうか?」



 そのパターンだったら良いけど...。



⦅私達の要求に耳を貸せばですが...⦆



「試練?...あー、君か...堅物シグフェルズの試練に合格したグロリアの弟子ってのは」



「リーチェです」



 ボクの噂、妖精将の間で流行ってるのかな?



「うん、名前は知ってる。けどホウキとの試合に勝つのは予想外、グロリアの弟子なだけはあるね」



「ナターシャがいなければ正直無理でした」



「ふーん?」



 今度はナターシャに注目し、何かを思いついたかの様に笑みを浮かべる。



「じゃあリーチェじゃなくて、ナターシャに試練を与える」



「わ、私にですか?」



「うん」



 待って、その展開は予想外なんだが?!



⦅私もこうなるとは思いませんでした⦆



「ど、どの様な試練なのでしょう?」



 流れからしてナターシャが彼女と戦うのかな?



「内容は簡単、ボクと歌で勝負する」



 う、歌?!



「なんと?!ローゼン様、それはあまりに」



「ホウキは黙って!」



「....」



 結構ハードな試練だった...妖精族って歌が上手い事でも有名だから勝ち目あるかな?



「...やりましょう!」



 マジでか!



⦅以外とやる気ですね⦆



「ホウキ、審判役」



「はは、では参ります...試合開始!!!」



 ♬〜〜♪〜〜♫〜〜♩〜〜



 思わず聞き入ってしまう程の美声と調和が完璧な歌声、どうやら本気で勝たせるつもりはないな。



「おお!【天命の風】!容赦ない....」



 ローゼンの歌は森中に響き渡り、自然がそれに応えるかのように木霊する。



⦅まるで自然の摂理を表現したような歌ですね⦆



 でもナターシャは一歩も引かないっぽい、そしてなんか勝利を確信した目をしてる...。



「次は私ですね」



♬〜♫〜♬〜♫〜



 ・・・良い夢を見よう...



⦅ね、寝るなーーーーー!⦆



「...は!いかん、寝てしまうところであった!」



⦅アンタもかい!⦆



「さ、判定は?」



 ローゼンは催促するように問う。



「...申し訳ございません、ナターシャ殿の勝ちでございます」



「がーーん!」



 あら、まさか勝ってしまった。なんでだろ?



「とても普通の人間とは思えぬ程に、素晴らしい歌唱で思わず聴き入ってしまい、この結果でございました。

故にナターシャ殿の勝ちとさせて頂きます」



 なるほど...彼の基準から見ても相当凄いんだ、ナターシャって何でも出来るよねホント。



「聖女になる前は、【勇者教】の聖歌隊に所属していましたので」



⦅何事も経験ですね⦆



「うぅ...悔しいけど、勝負は勝負...君が勝ったからあげるけど、その小瓶一杯分だけだからね?それ以上はダメだからね!」



「ありがとうございます、ローゼン様」



 やった!これで無事依頼達成!報酬金が楽しみだな〜♫



「じゃ、この辺りでボク達はお暇するね」



「待たれよ、グロリア様のお弟子殿」



「リーチェで良いよ!」



「うむ、ではリーチェ殿、お前達に渡したいものがある」



 なんだろ?神様だし祝福でもくれるのかな。



⦅否定、どうやらドラゴンの卵の様です⦆



 ドラゴンの卵?!



「これは神獣【虹雷帝龍ブロスドレイク】の卵である、【黄金の樹海】にて偶然発見したのだが我はこの土地の守護神故、子育てが難しくてな」



 え?育児を押し付けるつもり?!



⦅そうではないかと⦆



「龍種の中でも人懐っこい事で有名な神獣故な、お前達の様な者であれば安心して託せると思ったのだが、どうだ?」



 そうなの?!なら欲しいな...。



⦅私もドラゴンは見てみたいので賛成です⦆



「ナターシャはどう?ボクは欲しい!」



「リーチェがそうおっしゃるなら、有り難く頂きましょう。大事に育てるのですよ?」



 やったー!ナターシャの許可が降りたから貰うことにしよう!



⦅思わぬ収穫ですね⦆



「辱い、では育児の方を頼む。

帰りはそこに勇者様が設置した魔法『帰還ポータル』がある故、すぐに帰れるぞ」



「わかったありがとね♪」



 勇者の粋な計らい!帰りが楽で助かった!



⦅多分勇者が自分用に設置したのかと⦆



「お世話になりました、ホウキ様、ローゼン様」



「ありがとね〜♪」



「達者でな、お前達の旅路に祝福あれ!」



「もう二度と来ないでよね!」



 ローゼンさん、アンタはブレないねw



 二人は『帰還ポータル』に乗り、そのままエレウシス農国に帰還した。



「さて、依頼達成の報告をしますか!」



「はい!」






⦅報告、ステータスを更新します。

お読み頂き、ありがとうございます⦆


名前:リーチェ

年齢:15歳

性別:女性

前世の名:⬜︎⬜︎⬜︎ ⬜︎⬜︎

職業:冒険者

服装:春夏秋冬のコーデ

称号:【妖精騎士】

冒険者階位:アルティメットクラス

武器:【妖刀村雨】

加護:【アイとの交信】

   【天照大神の寵愛】

   【妖精騎士の証・風纏い】



名前:ナターシャ

年齢:22歳 

性別:女性

職業:暗殺者・冒険者・【勇者教】の聖女

服装:聖女の修道服

資格:錬金術師一級・冒険調理師一級

称号:【導きの聖女】

隠れ称号:【麗しき爆乳聖女】

冒険者階位:ハードクラス

武器:【アダマスの大鎌】



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