第35話  ボクは好きだ








「この会場は、我らミッツェガルド王家直属【黄金騎士団】が占拠する!!!」







 アリーナから押し入って来たユリウス第一王子と彼の率いる騎士団がファンの人々を取り囲み、会場全体を混乱状態に陥れる。



「まずいな、会場全体が完全に包囲されたんだ」



「やられました、何かあるだろうとは思いましたが...ファンの方々を人質に取って来るとは、

破門したにも関わらず何処まで罪を重ねれば気が済むのでしょうか!」



⦅リーチェ様、アデル様だけを連れて脱出する事は可能です。如何なさいますか?⦆



 それだと国民的アイドルがファンを見捨てて逃げたなんてことが世間に出回るに違いない、それを見越してこの包囲陣を立てたのだろう。



⦅二段構えというやつですね、今のは愚策でした⦆



 いや、彼女の命が狙われた場合はそれも視野に入れようと思う。ホントに最終手段だけど。



「やあ、聞こえているかい?アデル」



「何をやっているのですかユリウス殿下!ファンの皆んなが怖がってます、やめて下さい!」



「君がいけないのだよ、俺様の申し出を断ったりなんかするから。

挙句結婚の理由を無くす為にアイドルを辞めるとまで言い出して、事務所や親御さんがどれだけ迷惑を被っているか分かっているのかい?」



 アデルの願いも虚しく、ユリウスは一歩も引かず彼女を追い詰めようとする。



「それにだ、俺様達は君のファンの生殺与奪権を握っている。これ以上君が意固地になればファンの尊い命まで危うくなるのだよ」



「ひ、卑怯者!」



「なんと言われても構わないさ、どのみち君が不利な事には変わり無い!

それに、説得をしに来たのは何も俺様だけじゃない」



 ユリウスがそう言い放つと、騎士団の中から数名の人物が出て来る。



「!...プロデューサーに、マネージャーさん、お父さんとお母さんまで?!」



「もういい加減にしたまえアデル、これ以上君の我儘には付き合い切れない」



「考え直してくれアデル、君の幸せの為なんだ!」



 プロデューサーとマネージャーが悲しそうな顔で訴えかける。



「アデル、殿下と結婚しなさい!これは命令だ」



「私達の子供なら、言う事を聞いて頂戴!これ以上私達に迷惑掛けないで!」



「そ、そんな...」



 両親にまで追い詰められ、アデルの心が折れ掛ける。だがその時、一人の人物がファンを押し除けユリウス達の前に出る。







「いい加減にするのはお前達の方だ!!!」








「!!...リーチェ?」



⦅リーチェ様?!⦆



 とうとう我慢の限界が来たリーチェが考え無しに出て来たのだ。



「貴様は...冒険者ギルドにいた!」



「リーチェ、アルティメットクラスの冒険者リーチェだ!」



⦅リーチェ様、今の彼等の前に出るのは危険です⦆



 分かってる、でも...ここはボクのやりたいようにやらせて?



⦅かしこまりました、お気をつけ下さい⦆



「下がりたまえ、部外者の君が何の用だ!」



 前に出たリーチェに対し、父親が物凄い剣幕で怒り出す。



「いいえ、彼女の仲間の一人として、下がるつもりはありません。

恥ずかしくないのですか?こんな真似をしてまで、彼女に望まない結婚を強いるのは」



「黙れ!これは私達の問題だ!冒険者仲間に過ぎない貴様には首を突っ込む権利など無い!」



 確かに同じ冒険者として少ししか関わらなかったボクにそんな権利などないのだろう、だけどボクは一歩も引かない。



「いいえあります、彼女を応援する仲間の一人だからこそ、同じ冒険を共にした仲間だからこそ...お前達の考えを否定する権利が!」



 これまでに無いほど、声を上げてユリウス達に訴える。



「否定だと?!何の権利があって私達のあの子に対する命令を否定されねばならんのだ!」



「そうよそうよ!あの子は私達の子よ?子供は黙って親の言う事を聞くのが当たり前でしょ!」



 確定した、この言動から察するにコイツらクソ王子から金を貰っているんだな?

でなきゃここまで捲し立てる必要は無い筈だ。



⦅肯定、彼等はこれまでのアイドル活動で得た利益を独占しています。

その上クソ王子の甘言に乗って多額の賄賂を貰い、彼女に縁談の承諾を強要しているのです⦆



 じゃあやっぱりグルって事じゃん!両親に至っては思いっきり毒親だし。



「分からないな、どうして命を投げ出すような真似をしてまで俺様にそう訴える?

貴様の何がそうさせる?」



 ぶっちゃけ考えるまでも無い・・・、だけど知りたいのならば答えよう、その問いに!!!



 少し沈黙をした後、覚悟を決めた瞳で答える。



「好きだから」



「は?」



「望まない結婚をしない為に、アイドルを辞めて一からやり直そうとする彼女覚悟が!

自由に生きると心に決めた彼女の意志が!

ボクは好きだからだ!」



 リーチェの答えを聞いたユリウスは1ミリも理解出来ず立ち尽くしてしまう。



「余計分からない...それに何の意味があると言うのだ!!!」






「意味なんか知るもんか!

無くたって自分の力で自由になろうとする彼女が、ボクは好きだ!!!」








「リーチェ...」



 彼女の叫ぶような告白にアデルの瞳から、一粒の涙が溢れた。




⦅報告、ステータスを更新します。

お読み頂き、ありがとうございます⦆


名前:リーチェ

年齢:15歳

性別:女性

前世の名:⬜︎⬜︎⬜︎ ⬜︎⬜︎

職業:冒険者

服装:春夏秋冬のコーデ

称号:【妖精騎士】

冒険者階位:アルティメットクラス

武器:【妖刀村雨】

加護:【アイとの交信】

   【天照大神の寵愛】

   【妖精騎士の証・風纏い】



名前:ナターシャ

年齢:22歳

性別:女性

職業:冒険者・暗殺者・【勇者教】の聖女

服装:聖女の修道服

資格:錬金術師一級・冒険調理師一級

称号:【導きの聖女】

隠れ称号:【麗しき爆乳聖女】

冒険者階位:アルティメットクラス

武器:【アダマスの大鎌】




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