第51話 幽玄の剣聖
「妾の子リーチェ!
ユリウスお兄様の仇!!!」
「何?!ではあの小娘が...」
エリファスと女騎士は恐ろしいまでの殺意を露わにしながら、リーチェ達に近づこうとする。
「言っとくけど、あのクソ王子の件に関しては完全に身から出た錆だからボクを恨むのはお門違いだよ!」
「関係ありませんわ、妾の子の分際で...お前さえでしゃばらなきゃユリウスお兄様が処刑される事など無かった!」
うん、言ってはみたけど全然話を聞く気ないらしいね。
⦅王族特有の独善っぷりですね⦆
「ユリウスお兄様の敵討ちよ!!!
ビビアン、やってしまいなさい!!!」
「承知!!!」
エリファスの命令を受け、女騎士のビビアンは剣を抜いてリーチェ達に襲いかかる。
「させると思いますか?」
「!!!」
ビビアンの強襲を、事前に鎌を構えていたナターシャに止められる。
「【君主の断罪】!!!」
「ッツ!!」
今度はナターシャが鎌を無差別な角度で何度も斬りつけるが、全て防がれてしまう。
「魔王二刀流【部ヱ根例多酢】!!!」
「グッ、この!」
音も無く背後からリィラが奇襲を掛けるが、2、3回受け太刀で防がれて擦り傷を何本かつけるだけで終わってしまう。
「妖精将一刀流剣術【居合・陽炎】!」
「ッツ!この小娘が!!」
意識の外側から放つ居合の一閃も、ギリギリで躱されてかすり傷しかつけられなかった。
ねえ、あの女騎士なんか強くない?!
⦅ステータスを開示します。こちらをご覧下さい⦆
名前:ビビアン
年齢:28歳
性別:女性
職業:冒険者・王宮近衛騎士
称号:【鋼鉄の処女騎士】
冒険者階位:マスタークラス
武器:【フルール・ド・デュランダル】
武器名: 【フルール・ド・デュランダル】
位列:大業物
特徴: 全長90cm・刃渡り70cm・重さ2000g
材質(緋緋色金)
備考:ミッツェガルド王国の鍛冶屋グレンの作品
ヒヒイロカネ製の刀剣?!通りで硬いと思ったわ!
「つ、強い...」
「強いのは当然です、彼女もまた私と同じマスタークラスの冒険者として有名ですから」
三人はビビアンの圧倒的な強さに苦戦を強いられる。
「どうした?マスタークラスが一人にアルティメットクラスが二人いると言うのに、随分と手応えが無いな...。
所詮は【勇者教】の権力でユリウス殿下を忙殺した程度の卑怯者共、大したことは無いな」
完全に調子に乗ってやがる...こうなったら!
⦅いけませんリーチェ様、今ここで体力を使い果たしては!!⦆
「リーチェ?!」
ナターシャが驚くよりも速く、縮地でビビアンの間合いに急接近する。
「妖精将一刀流剣術【風の逆鱗】!!!」
「何?!」
膨大な【神気】を刀身に込めた必滅の一撃をビビアンに喰らわせ、後方へ吹き飛ばして壁に激突させる。
「やったか?」
「いえ...まだです!」
アデルはリーチェの渾身の一撃で勝利を確信するが、リィラはまだ終わってない予感を感じて冷や汗をかく。
「今のは痛かったぞ...痛かったぞ!!!」
立ち上がった?!不死身かアイツは!!!
⦅恐ろしいまでに頑丈ですね⦆
「いいわ、その調子よビビアン!そのまま妾の子を殺しなさい!」
「今度はこちらの番だ!
【剛剣の咆哮】!!!」
凄まじい威力の剣圧を放ち、リーチェ達三人を吹き飛ばす。
「痛い...体が動かない...」
「リーチェ...今、助けるから...」
「ハア...ハア...、せめて私が!」
立ち上がったリィラが、ビビアンの前に立ちはだかる。
「フン、同じマスタークラスと言えど所詮は暗殺者...あの小娘と同じ卑怯者だな。
卑怯者は弱い!己の力を磨こうともしない!
せめてもの情けだ、全員苦しませずに殺してやろう!!!」
リーチェに一歩ずつ近づいて、剣を持ち上げて構える。
「これでトドメだ!!!」
「リーチェーーーー!!!」
ごめん...ナターシャ、アデル...
ナターシャの叫びも虚しく、剣を振り下ろされようとした時、横からの一閃がビビアンの剣を弾き返す。
「何?!」
「ビビアン?!」
突然の事でエリファスも驚いてしまう。ビビアンの横にいる人影に目を向けると、刀を持ったミニスカートのメイドが立っていた。
「そんな...嘘よ...」
「貴様は...【幽玄の剣聖】!!!」
「どーも」
無愛想な少女は膝をついたビビアンを見下ろしながら、淡白な挨拶をする。
あの娘って、アトランティスでユリウスの処刑をした【勇者教】専属首斬り役人のカナリアさんだよね?
⦅はい...なぜ彼女が...⦆
「なぜ貴様がこんな所に居る?なぜそこの小娘を助けた?!」
「アンタには関係ない」
彼女の淡白な口答えに、腹を立てながら剣を構え直す。
「ならば敢えて聞かないが、私は前々から貴様が気に入らなかったんだ」
「あ、そ」
「私より後にマスタークラスなった冒険者の癖に、この私を差し置いて【幽玄の剣聖】という称号を手にした貴様が不愉快で仕方なかったのだ!」
「ふーん」
怒りのままに妬み嫉み事を口にするビビアンに対し、もの凄いまでに無反応である。
「なんだその態度は...この私を馬鹿にしているのか!!!」
「だったら何?」
「ぶっ殺してやる!!!」
「やってみろー(笑)」
カナリアの言葉と同時にビビアンは急接近し、先程と同じ技を使おうとする。
「【剛剣の咆哮】!!!」
「下らない」
渾身の一撃は、地面を砕く程の威力で放たれて砂煙を巻き上げる。
「それがアンタの本気?」
「何?!」
しかしビビアンの剣はカナリアを捉えておらず、ただ地面にめり込んだだけであった。
「ば...莫迦な...」
「柔よく剛を制す、受け太刀で剣の軌道をずらして威力を分散させただけだよ」
あの一瞬で刀を抜いて、受け太刀で剣圧の軌道をずらしたの?!
⦅精巧な剣の使い手...達人の中の達人ですね⦆
「フン!!!」
「グオッ!」
動けなくなったビビアンのお腹に思いっきり右ストレートを放ち、悶絶させる。
「くっ...殺せ」
えええええ?!生の『くっころ』なんて初めて見たよ。
⦅リーチェ様、先程の緊張感はどちらに?⦆
しかしカナリアは彼女を殺さず、四肢に枷を嵌めて奴隷用の首輪をかける。
「これで捕獲完了、あとは...」
ビビアンの四肢がきちんと捕まえたのを確認すると、今度はエリファスの方を向く。
「や、やめなさい!私はミッツェガルド王国の第三王女ですのよ?!」
「関係ない、お前達二人をリーチェの奴隷にして娼館に売り飛ばす」
今度はエリファスを先程と同じように首輪と四肢枷で捕まえる。
「娼館だと?!負けた私はともかく、殿下は関係ない筈だ!」
「教唆犯だから、関係ある」
淡々とした喋り方で、二人を捕縛してリーチェの前まで持って来る。
「助けてくれてありがとうございます、カナリアさん」
「カナリアで良い、ウチもリーチェって呼んで良い?」
「それは良いけど...なんで助けてくれたの?」
「教皇様に頼まれた」
【勇者教】の教皇様?!
「教皇様が...なぜリーチェを?!」
ナターシャはカナリアの言葉に、開いた口が閉じなかった。
「おのれ...【幽玄の剣聖】!!!」
「五月蝿い」
パァッン
思いっきり平手打ちをして、黙らせる。
この娘、可愛い顔して凄くバイオレンスだ!
⦅見た目より過激な方ですね⦆
「と言う訳で捕まえた奴隷、あげる」
「あ、ありがとう...」
捕まえた奴隷を無償で譲って貰うなど、これからは一生聞かない日本語になるであろう。
「サニー聖国に来たら剣、教えてあげる」
「え?」
まさかの帰ったら初対面の方と修行コース?!
「拒否権は、ない」
「は、はい...」
初対面...ではないけど初めて話すのにグイグイ来るから、正直困惑してる。
⦅お嫁さん(予定)が増えましたね⦆
アハハ、アイも冗談キツいってw(フラグ)
「女公爵から聞いた、宝探し手伝ってあげる」
「ありがとう、これからよろしくね!」
「よ、よろしく///」
ん?なんかこの娘、無愛想なのに雰囲気が乙女になってn
「ゴッホン!!」
ひぃ!
突然ナターシャが咳払いをした事で、リーチェは我に返る。
「ナ、ナターシャ...」
「リーチェ、後でOHANASIです」
「は、はい...」
ナターシャの嫉妬による圧にはアデルは勿論、何故かリィラまで震えていた。
⦅報告、ステータスを更新します。
お読み頂き、ありがとうございます⦆
名前:リーチェ
年齢:15歳
性別:女性
前世の名:
職業:冒険者
服装:春夏秋冬のコーデ
称号:【妖精騎士】
冒険者階位:アルティメットクラス
武器:【妖刀村雨】
加護:【アイとの交信】
【天照大神の寵愛】
【妖精騎士の証・風纏い】
名前:ナターシャ
年齢:22歳
性別:女性
職業:冒険者・暗殺者・【勇者教】の聖女
服装:聖女の修道服
資格:錬金術師一級・冒険調理師一級
称号:【導きの聖女】
隠れ称号:【麗しき爆乳聖女】
冒険者階位:アルティメットクラス
武器:【アダマスの大鎌】
名前:アデル
年齢:18歳
性別:女性
職業:冒険者・ビーストテイマー
服装:真夏のヘソ出しコーデ
称号:【最高に煌めく超新星】
隠れ称号:【セクシーな巨乳アイドル】
冒険者開位:ノーマルクラス
名前:リーゼロッテ・P・アームストロング
年齢:35歳
性別:女性
職業:学院教授・博士号錬金術師
服装:研究白衣
称号:【
隠れ称号:【唯我独尊なドS女公爵】
二つ名:【紅蓮焔雷公】
地位:公爵
武器:【バレル・ブラスター】
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