第15話
非常に望みの薄い恋慕だったが、神は千里に味方をした。
四月の上旬。千里は大学二年生になった。
新入生のサークルの案内を任された千里は、サークル活動の拠点の部屋に向かっていた。
部屋の前に辿り着いた時、ドアの前に佇む小柄な女子学生がいた。
彼女はストレートのセミロングをなびかせる清楚可憐な美少女だった。
ミスコンに出る女子のような派手さはないが、ひっそりとしながらも凛とした美しさがあった。
深窓の令嬢のような春色のワンピースはとても彼女によく似合っていた。
「君、入部希望者?」
千里は好印象を持たれやすいと自負している物腰柔らかな口調で話しかけると、彼女は少し驚いたのか華奢な肩をびくりと揺らした。
「あ……はい、そうです」
丸っこい大きな瞳を大きく瞬きさせた後、彼女は少しおどおどしながら小さく呟いた。
その声を聞いた瞬間、千里の猫目は限界まで見開かれた。
(あの子だ、あの子に違いない……!)
ずっと会いたかった少女に再び会えた。その事実は千里を大いに興奮させた。
(あの時と見た目が変わり過ぎだろ)
千里としては彼女が
着飾ればかなりの美少女になるのは予想外だった。
野暮ったい姿からは想像出来ないほどの変わりようである。
(この場から連れ出して口説き倒してしまいたい……)
千里は強い衝動に駆られていたが、実行してしまえば彼女を怯えさせてしまうことだろう。彼女に異常者のレッテルを貼られること間違いない。
「遅くなってごめんね。今鍵を開けるからね」
千里は手にしている鍵で開けて、少女を招き入れたのだった。
表向きスマートに振る舞えた自身を褒めてやりたい。
神戸汐璃、宮城県出身。
彼女にサークル活動の概要を説明している間に、名前と出身地が判明した。
(汐璃。しおり、シオリ、名前まで可愛いとか反則だろ)
ちゃっかり友好的な先輩の素振りで汐璃の手を握ってしまう己に苦笑を浮かべそうになった。
最後にチャットアプリのサークルのグループに招待をしたが、汐璃は機械音痴な上にスマートフォンを持つようになったのは大学に入ってからだという。
千里は汐璃のスマートフォンを拝借し、代わりにグループに入れてあげた。
返す前に、抜かりなく位置情報が分かる見守りアプリを入れておいたのは千里だけの秘密だ。
(ああ、早くきみを閉じ込めたい……でもその前に)
“キミノ声ヲイツデモ堪能シタイナ”
汐璃が部室からいなくなった後、一人になった千里は盗聴器の導入を真剣に検討を始めていた。
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