第9話

 狭いシングルベッドの上で組み敷かれて、二時間以上が経過した。


「もう痛くない?」


 そう尋ねながら、汐璃の目尻に浮かぶ雫を指で拭い取った。その仕草はとても甘く、汐璃の胸をきゅっと締め付けていく。


 千里と初めて繋がった時は裂けるような痛みに襲われたが、今は全くない。


「はい……むしろ……ゃ、あぁっ……!」


 突然、止まっていた千里の腰が再び動き始めた。

 脳天を突き抜けるような刺激に、汐璃は背をしならせて悲鳴を上げてしまう。


「いきなりは、だめです、」

「ああ、かわいい……唇噛むなよ。噛んだら次は中に出すから」


(それは困ります!)


 ただでさえ、隔たりなしで繋がっている。近隣の住人に聞こえてしまうのは勘弁したいが、まだ学生の身分を思うと千里に屈するしかなかった。


「あっ、あぁ、ん……」

「汐璃、締め過ぎ」

「恥ずかしい……んっ、ゃ、あぁ」

「ほんと、可愛い。ずっとこうしていたい」


 千里にドロドロに溶かされて、口から漏れるのは誘うような甘い声だけ。


「せんぱい……」

「どうしたの? 汐璃」

「すき、です……っ」


(ああ、抑えていたせいで、声に出さないと苦しいのです……)


「だいすき、です……」

「あ、もう……出そう……っ」


 千里の腰の動きがより激しいものになった。


「やっ、せんぱい……っ」

「声抑えんなって」

「あ……だめ……や、あ、ああっ!」


 何度目かの頂点へ登りつめた時、汐璃は己の太ももにかけられた白濁の温かさに溜め息を零し、うっとりと目を細めた。

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