第25話

食事を終えて、食後のドリンクを追加で注文した。汐璃はミルクティーを、千里はカプチーノを飲んでいる。


 その時、テーブルに置いてあった汐璃のスマートフォンにチャットアプリのメッセージ受信の通知があった。

 汐璃は手にしたカップを置き、スマートフォンを操作すると、メッセージは由依からだった。


《講義休講になったよ!》


 午後一の講義がなくなり、今日の講義は全て終わってしまった。


「誰からだったの?」

「由依からです。急遽次の講義が休講になりました」


 千里といる時に連絡が来れば、その都度スマートフォンを千里に渡すようになった。


「他の講義はないよね?」

「はい……あの、もう少し一緒にいてもいいですか?」


(千里さんも午後はないはずです……)


 これまではストーカー行為によって選択した講義を把握していたが、後期は千里から教わった。


「いいよ。せっかくだからデート続行しよ」


 千里の言葉に、汐璃は嬉しさを感じた。

 千里も自分と同じように今の時間をデートと思っていてくれたと分かったかからだ。


「嬉しいです。何しましょうか」


 付き合って日が浅く、千里の自宅で過ごすことが多かった。汐璃はデートは何をすればいいのか今ひとつ分かっていなかった。


「服見に行く? 汐璃の服選ぶよ」

「助かりますっ。私、恥ずかしながらファッションに自信がないのです」

「そうなの? 今着てる服可愛いけど」


 今着ているのは、タートルネックのニットとハイウエストの膝丈スカート。七センチヒールのショートブーツを履いている。


「雑誌に載っていたものを買って、そのまま着ているだけですから」


 汐璃は高校を卒業するまで母親が選んで買ってきた服ばかり着てきた。ジーンズにTシャツかパーカーが定番だった。

 大学生になってからは、ファッション雑誌にあった一週間のコーディネートを参考にしてローテーションで回している。

 メイクも覚えたが、汐璃は女子力が低いという自覚を持っていた。


「違う系統の服でも大丈夫?」

「はいっ。千里さんの選んだものを買います!」


 千里は綺麗な女の同級生や先輩に囲まれていたから、目が肥えているだろう。何が似合うか教えてくれそうだ。


「任せて――楽しみだなぁ。汐璃がまた俺の色に染まっていく……」

「何か言いましたか?」


 汐璃は千里が何か独り言を洩らしてしたような気がして聞き返してみたが、千里は「何も言ってないよ」と破顔しながら返した。

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