第22話

「せんりさん……っ、」

「ん? なあに?」


 汐璃を組み敷く千里は額に汗を滲ませながら、微笑みかけている。


「すこし、休憩を……」

「こんなに締め付けて、俺を離さないのに?」

「いや、ぁ、あ……」


 気持ちいい場所を押し付けられて、汐璃は甲高い声を漏らしてしまった。


(男の人って何度も求めるものなんでしょうか?)


 千里は汐璃を解放することなく、幾度も責め続けている。

 初恋、初彼共に千里が初めての汐璃は、世間一般の男子の事情が分からない。


「汐璃、付き合ってちょっとしか経ってないのに随分とやらしくなったね……このまま出したくなるよ」

「それはダメです……!」


 相変わらず千里は避妊具を付けてくれない。果てる時は汐璃の体にかけることが多い。


「汐璃は俺との子供欲しくないの?」


(先輩は私に妊娠して欲しいのですか……?)


「それはいつかは……でも今はその時ではないですっ」


 早まらないで、と思いから慌てながら訴えかけた瞬間、千里はにやりと企みのある笑みを浮かべ、枕の下に手を突っ込み、小型のボイスレコーダーを手にした。


「言質は取ったよ」

「な、な……っ」


(先輩は、わざと誘導させるために言ったのですか……!?)


「時期が来るまでは、健全なお付き合いしようね?」

「は、はい……」


 既に健全からかけ離れているような気がする……口が裂けても言えない汐璃は密かに思った。


 この時、汐璃は既に千里に囲われて、もう逃げられなくなりつつあった。

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