第17話
自宅の最寄り駅に到着し、千里は徒歩十分の自宅のマンションまでの道のりを歩いていた。
その時、千里は後ろから、ただの通行人とは違う人の気配を感じた。
千里はまたか、と小さく嘆息した。
男らしさとは程遠いものの中性的で見目麗しい千里は、幼少の頃から見知らぬ女性につきまとわれることが幾度もあった。
相手は同級生から妙齢の女性、中には四十代手前まで年齢層は幅広いものだった。
幸い、絡まれるくらいで拉致や監禁に遭うことはなかったが、それでも不気味で嫌悪感を禁じ得なかった。
それ故に己を尾行するものの気配をすぐに察知することが出来た。
(めんどくさいな……構う暇はないのに)
いざとならば警察に通報してしまえばいいし、手加減なしで抵抗しても正当防衛になるだろう。
千里はため息を堪えて、汐璃の位置情報を割り出して、気を紛らわせることにした。
(あれ……?)
位置情報を割り出した瞬間、千里は思わず首を傾げてしまった。
何故なら、マップ上の汐璃の位置情報が、今いる場所の……千里から数メートル後方にいたからだ。
(汐璃の最寄りは俺の最寄りの四つ前だよな……?)
どうして汐璃がこの駅に降り立っているのか分からなかった。
汐璃の友人はこの周辺には住んでいない。交友関係は密かに調べ済みであるので間違いはない。
(実は彼氏がいるってことはねえよな? ……そんなの許さない)
嫉妬のあまり憤慨しそうな千里は、落ち着かせる為に真っ直ぐ帰宅することに決めた。
このままでは汐璃の元へ突っ走り、きつく詰ってしまう恐れがある。
振り向くことはなく帰路に就くが、汐璃の気配は依然として存在している。千里の元へ駆け寄ることもなく、一定の距離を保っている。
(もしかして、俺の後をつけているのか? となると、汐璃は俺を好きってことになるのか?)
希望的観測に近い二つの可能性に辿り着いた。
いつもなら面倒くさいと思っていた後をつけられる行為が、汐璃がしていると思うといじらしいものに映ってしまう。
(汐璃は小さいから、刷り込みされた雛みたいで可愛い)
うんざりとした感情は嘘のように消えて、癒しを見出していた。
汐璃の気配を感じながらの帰宅はあっという間に終わってしまった。
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