第7話
初めて見る千里の住処は、リフォームされているのか綺麗な内装だった。物が少なく殺風景な印象を受けるが、古いマンションの外観から想像出来ないほど洗練されている。
「そこ座ってて」
「はい……失礼します」
汐璃は言われるがままに、ベッドの上に腰掛けた。
(これから何が起きるのでしょうか……)
千里がどう動くのか今か今かと待ち構えていると、千里は突然、汐璃の右手首を手に取った。
千里に触れられて、汐璃は動揺のあまり身を捩らせた。
「動くな」
耳に届いた千里の声は酷く冷たいものだった。汐璃は金縛りにあったように固まっていた。
その時、手首にひんやりとした感覚を覚えると同時にカシャンという金属音が静かに広がっていった。
(これは……)
汐璃の手首に金属製の拘束具がはめられている。そこから鎖が伸びていてベッドの脚に繋がっていた。
(私を逃がさない為でしょうか? こんなことしなくても私は逃げないのに)
「強引な真似をしてごめんね? 話が終わったら外してあげるから」
「話ですか? 拳で語るのですか?」
「なんで俺がかんべちゃんを殴らなきゃいけないの?」
「え……リンチするんじゃないのですか?」
「俺は女の子を殴る趣味も性癖もないんだけどな」
千里の意図が分からず、汐璃の脳内は大きな疑問符で埋め尽くされている。
「だって、私はストーカー行為を繰り返して、先輩を怖がらせました。だから先輩から罰を受けなきゃいけないのです」
「罰は受けてもらうよ。でも、理由は別にある」
(別? ストーカー行為に対しては?)
「ねえ……汐璃」
「っ、」
初めて呼ばれた名前に胸の鼓動が跳ねた。汐璃にとってそれだけで刺激は強い。
引き寄せられて口付けが出来てしまいそうなほど密着してしまう。暴れる鼓動が千里に伝わりやしないか気になってしまう。
そんな汐璃に千里は更に追い打ちをかけていく。
「――――汐璃が好き……俺の彼女になって」
それは告白以外の何ものでもなかった。
開いた口が塞がらない。さぞや間抜けな顔を千里にみせていることだろう。
(今のは幻聴ですか? 先輩が、私を好きなんて……?)
「汐璃? 彼女、なるよね?」
我に返った汐璃はキョロキョロと周辺を見渡し、動揺を露わにしていた。
沈黙が続くこと数分後、汐璃は窺うように千里を見上げた。
「彼女に、な、なれませんっ」
汐璃はたじたじになりながらも丁重に断りを入れた。
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