第14話

欲を吐き終え、千里はそそくさとベッドから降りてシャワーを浴びにバスルームへ向かう。

 いつもなら微睡みながらピロートークに入るところだが、一刻も早くこの場から立ち去りたかった。


 シャワーを浴び終えて、ベッドルームに戻ると、眠っていたはずの彼女が起きていた。シーツで体を隠し恥じらいながら千里に微笑んでいる。


「もう、千里ったら置いてかないでよ」

「俺たち別れようか」


 千里はジーンズだけの格好のまま、乱暴にバスタオルで髪を拭いながら、ベッドの上にいる彼女に淡々とした口調で告げた。


「は……? なんで、急に!?」


 千里の心は、あの野暮ったい少女に奪われている。

 声もルックスもどストライクだったはずの彼女は、今では色褪せてしまった。


「どうして、私に至らないところあったの?」


 もう飽きた……とは口が裂けても言えるはずもなく。


「もう疲れたんだ……俺は君に相応しくない。努力したつもりだったけど、だめだった」


 寂しげに目を伏せて、申し訳なさげに振る舞う。


「そ、そんなことないよ……?」

「ううん、今でも君は手の届かない遠い存在だ」


 呆然とする彼女を放置して、着替えていく。

 千里は財布からホテルの代金を出し、備え付けられているテーブルの上に置いた。


「ねえ、なんで……いやだよ」


 泣きながら縋る彼女だった女を、千里は眉根を下げて「ごめんね……」と切なげな呟いた。

 ベッドの上に蹲って咽び泣く彼女を、冷たい眼差しで一瞥すると、千里はそそくさと部屋を後にした。



 あの少女が入学してくるか分からない。もしかしたら入試に落ちてしまう可能性も否定できない。

 また会える保証は何処にもなかった。


 しかし、千里は彼女に別れを告げたことに対して微塵も後悔はなかった。

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