29.焦がす
あと三日で夏休みが終わる。
休みの間は夢の中に毎日でも行けるけれど学校が始まったら制限される。遅くまで起きてたら生活に影響出るもんね。この前もちょっと長居したら深夜の二時になってたし。
夢見や狩人が不足しがちな理由はここにある。
夢に関わる活動は主に夜だから、普通に生活して夜も活動して、ってなると体力が持たない。だから数を増やして負担を軽くしたいんだけど、なかなか難しいんだって。
夢の中での話はできるだけ人に知られちゃいけないから気楽に勧誘もできないんだな。
いっそ夢見や狩人専門に働いてお金をもらうシステムっていうか組織みたいなのを作ったらいいんだろうけど、実現してないってことは、やっぱり難しいんだろうな。関わる人が増えると秘密が秘密でなくなっていっちゃうから。
コハクは、まだ見つかってない。
わたしが自由に夢の中でコハクを探せるのは今夜を入れてあと三日なのに。
夢見の集会所の他の人が見つけてくれる可能性だってあるんだけれど……。
「愛良、焦げてない?」
お母さんの声で、はっとなる。
料理の最中だった。
慌てて鍋の中をおたまでかき回す。
あー、ちょっと底に焦げ付いたかも。
「お手伝いはいいから、気晴らしに遊んで来たら? もう宿題も全部終わってるんでしょ?」
お母さんの顔は、ちょっと心配そう。
気分よくしてないとコハクが来づらいってのも判ってるけど、そうもそういう気分になれないんだよね……。
なんとなく、だけど――。
「もうコハクに会えない気がしてさ……」
思考の最後が言葉に出てしまった。
「夢の世界は精神世界だから、愛良がそう思ってたら本当に会えなくなっちゃうよ。判ってるとは思うけれど」
うん、判ってる。
「大丈夫。きっと会えるわ。コハクちゃんもきっと愛良に会いたがってると思うよ」
「そうかな?」
お母さんは笑ってうなずいた。
ありがとうお母さん。ちょっと元気出た。
「さっこちゃんとこ行ってこようかなー」
「それがいいね」
うなずいて、エプロン外して、部屋に駆け上がった。
さっこちゃんの都合がよかったら、気分上がる映画でも見せてもらおう。
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