25.カラカラ
夢魔が現れる時の、どす黒いマーブル模様が広がる。
何が来るのか。
わたしもハルトさんも緊張した顔で気配を探る。
目の前に、唐突に、ぼんやりと青白い光が見えた。
ただの光の塊だったそれは、すぐに形を変える。
人の形になったそいつは、色違いのコハクのようだった。
けど、雰囲気がもうダメだ。半年前に戦った強敵、青の夢魔そっくりだ。
「君達は狩人と呼ばれている人間かな」
成人男性に近い中性的な声だ。
「……そうだよ」
こいつの、問答無用で戦闘じゃなくてまず話からって態度に、ほっとしたけど、それじゃ仲良くおしゃべりってことにはならない。
隣のハルトさんも厳しい顔で青いヤツを見てる。いつでも戦えるようにって感じで手がサロモばあちゃんの柄をしっかり握ってる。
「そう警戒しないでほしいな。私は戦う気はないよ。ちょっと聞きたいことがあるだけだから」
「聞きたいこと?」
相手の言葉を繰り返しながら、喉がカラカラに乾いてくるのを感じた。こいつが何を聞きたいのか、なんとなく予想できたから。
「そう。私と似たモノを知っているかな? 色が違うのだけれど、なんといったか……、そうそう、琥珀色だったかな」
やっぱり。
「知らないよ」
咄嗟にそう答えてた。
「そうか。残念だな。この辺りによく来るらしいって聞いたから来てみたのだけれど」
どうしてコハクのこと知ってるのか。
誰にコハクの事を聞いたのか。
ぶわっと頭に浮かんだ疑問を口にするのは我慢した。
「あんた、夢魔だよね」
「人間は我々をそう呼称しているようだね」
あっさり認められて、怒りに似た感情が湧き上がってくる。
「夢魔のあんたが会いたがってるそいつも、夢魔? あんたに似てるんだよね?」
「我々の仲間かという意味ならば、あっているが少し違う、といったところかな」
やっぱりコハクも夢魔なんだと思うと悲しいけど、負の感情をあおって生命力を奪って相手を殺す夢魔ではないって意味だろうというところはよかったと思う。
「夢魔のおまえの仲間探しに、俺らが強力するはずがないだろう」
ハルトさんがさらに重心を落としていつでも戦える姿勢になった。
ハルトさんの言う通りだよ。どうせろくな目的じゃないはずだ。
わたしも夢魔を睨んでサロメに手をかける。
けど。
『こやつは今のお主らではかなわぬ』
『引くのじゃ、ハルト、愛良』
いつもケンカのジジババコンビがそろって言う。
ってことはきっとそうなんだろう。
「おや、逃げるのですか? 私はどちらでもいいのですが」
夢魔が余裕かましてる。
くっそ腹立つ。あおってるよねこいつ。さすが夢魔。
「けど……」
コハクのことも気になる。
ハルトさんの心境も。
にらみ合いながら、どうするべきなのか、ハルトさんをちらっと見た。
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