22.雨女

 結局、自由研究は夢のことを無難にまとめることにした。

 せっかくだからダンディさんの本を参考文献にさせてもらおう。早速買いに行かないと。


 さっこちゃんとあれこれ話しながら、何を題材にするかを決めて、ほっと一段落だ。


「愛良ちゃん、ハルトさんとは仲直りできたって?」


 そうそう、さっこちゃんには軽く「仲直りした」とだけメッセージいれただけだった。詳しいことは会って話す、ってことで。


「うん。ずっと連絡取らない間はもうダメだって思ってたんだけど。家庭教師に来てくれて、勉強の後に話し合ってさ」

「コハクちゃんのことは?」

「夢見の集会所も認めてるし、ってことで認めてくれたよ。けど、もし他の夢魔と同じようになっちゃったらその時は、って」


 さっこちゃんは、そっかー、って笑った。


「そういえば昨日さ」


 コハクとハルトさんが会った、と話しかけて、コハクの爆弾発言とハルトさんの悶絶発言を思い出した。


「昨日? って愛良ちゃん、めっちゃ赤っ」

「さ、さささ、さっこちゃん!」

「はいっ?」

「す、好きって、好きってことだよね?」

「……はい?」




 なんとか呼吸を整えて、コハクとハルトさんとの会話を再現して、また息が乱れた。


「へぇぇ、ほおぉ、好きかぁ」


 さっこちゃん、にやにやしてる。


「よかったねぇ愛良ちゃん」

「そ、そうだよね。よかったんだけど……」


 好きがlikeかloveか、気になるところなんだけど。


「友達の好きか、恋愛の好きか、かー。わかんないよね」


 やっぱり?


「でも、いいじゃない? 好き、なんだからさ」


 さっこちゃんの言葉に、はっとなった。


 そういえばハルトさんの、わたしに対する感情は妹の代わりだ、って指摘されたことがあったんだけど、その時に言ったっけ。

 ハルトさんにとって妹さんは特別だから、わたしも特別ってことだ、って。


 強がってたとこもあるけど、特別に違いない、って本当に思ったのもある。

 それと同じってことで、いいか。


「これこそ、雨降って地固まる、だね」


 さっこちゃんが言うのに、うなずいた。


「でもトラブルはない方がいいよね。雨ばっかり降らせる雨女にならないようにしないと」

「あははっ、うまいこという」


 さっこちゃんと顔を見合わせて笑った。

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