第二十六章 えい

放課後になり、わしらは少し駆け足で『黒速ファンクラブ』があるという空き教室に向かっていた。


「おそらく多少は攻撃的になるはずだ。気を付けて」

「ああ、任せろ。あいつらにはきっちりとお仕置きする」


そして空き教室の扉を開ける。そこに『黒速ファンクラブ』のメンバーがいた。


「えっ黒速君!?」

「えぇ~本物!?」


彼女らは結構興奮しているようじゃがそんなことはどうでもいい。



「さっそくだが質問したいことがあるんだ」

「何々?私たちに答えられることならなんだって答えるよ!!」


ファンクラブの一人、瀬戸内が満面の笑みでこちらを見る。なので遠慮なく質問する。


「大場美紀は校長に媚びを売っている・・・・・・この噂を広めたのは君たちか?」

「え?そ、それは・・・」


急に五人全員が黙り込んだ。続けてわしが言う。


「俺が優勝しなかったことが気に入らないからという理由で美紀をいじめていたんじゃないだろうな?」

「・・・って・・・」

「どうなんだ?」

「だって!!なんであんな女が優勝なの!?なんで黒速君が優勝じゃないの!?おかしいじゃん!!」

「おかしいのはどっちだ。そんな理由だけで美紀をいじめていい理由になんかならないぞ!」

「うるさいうるさいうるさいうるさぁい!!」


バンッ!!瀬戸内がおもいきし台パンをした。その瞬間、机に雷が落ちてきた。机が黒焦げになる姿を見て遅延が驚いた顔で瀬戸内を見る。


「まさか・・・これは・・・」

「そう、私の魔法の属性は’雷’。黒速君と同じ・・・ね」


残りのメンバーはまた違う属性のようだ。瀬戸内せとうち 亜里香ありかは雷、平竹内ひらたけうち 百恵ももえは氷、新幡しんばた 暖簾のれんは治癒、中島なかじま 春香はるかは風、藤井ふじい らんは毒のようだ。


「いくら黒速君でも私たちの邪魔をするなら・・・殺す!!」


おお、怖い怖い。本当にファンクラブ作るほど好きなのか?


「仕方ない。今日も茶柱を立てるとするかのう・・・」

「死ね!!巨大雷ヴォルト!!」


天井から雷が落ちてくる。襲雷で間一髪かわし、素手の攻撃を与える。しかしすかさず中島と平竹内の魔法が襲ってくる。よけ続けるがMPが持たなくなるかもしれない。襲雷を使わずに持ち前の敏捷性アジリティで回避する。


———クソッ!黒雷を使えば勝てるかもしれない!だがこれを食らえば間違いなく死んでしまう!!だったら腹パンが一番。だが・・・


五人の反射スピードが速すぎて目で追えない。それに魔法専門の俺の腹パンが果たして効くかどうか・・・そこで俺は思いついた。


そうこう考えていると瀬戸内の雷魔法が襲ってくる!かわした後、瀬戸内にめがけて電盾エネルギーシールドを放つ。


「あれ?私たちを守ってくれるの?でも・・・」


瀬戸内が電盾エネルギーシールドを破ろうとするがはじかれてしまった。これは俺が拘束用として開発した電盾・エネルギーウォールである。これによって相手を拘束することができる。しかし欠点がある。エネルギーをチャージするのに30秒かかってしまうのだ。

———あと四人!!


「貴様!よくも!!」


平竹内と中島が魔法で攻撃してくるが敏捷性の高い俺にはかすりもしない。一度襲雷を使い、距離を縮める。平竹内と中島が驚いている隙に腹パンを決めた。二人がうずくまっている間に電盾・エネルギーウォールを発動。二人まとめて拘束した。俺は次のターゲットの方を見る。



「ひっ、来ないで!!」


藤井が俺に毒魔法を乱射してくるがそれでも俺には当たらない。逃げ出す前に電盾・エネルギーウォールで拘束した。

———あと一人!!

最後は治癒の魔法を使う新幡 暖簾のみ。これは勝ったも同然。そう油断していると・・・


「くらえっ!!」

「うぉ!!」


ナイフが俺にめがけて投げられた!!間一髪で電盾エネルギーシールドを発動し、何とか助かった。


———武器を所持していたか!!


またもやナイフが3本同時に襲ってきたが襲雷でかわし電盾・エネルギーウォールを発動。これで五人全員を拘束した。


「ふぅ」

「次射!大丈夫か!?」

「黒速君、大丈夫!?」


戦況を見守っていた遅延と小鮒さんが駆けつけてきた。


「問題ないわい、それより先生は・・・」


そう笑顔を見せ、先生を呼んだか確かめようとしたが・・・


「!!まだだ!!」


遅延の声でわしはとっさに後ろを振り向いた。すると瀬戸内が電盾・エネルギーウォールを破ろうとしている!


「まだ・・・終わってないわよ!!」


まだあきらめていないらしいのう。


「えい」


わしは黒雷を電盾・エネルギーウォールに向けて放つ。すると電盾・エネルギーウォールの強度が増し、瀬戸内はまた閉じ込められてしまった。


「なっ!馬鹿な!!」

「これで持つじゃろう。先生は呼んだか?」

「ああ、もう少しで来るはずだよ」


わしは五人が脱出しないようにもう一度全部の電盾・エネルギーウォールに黒雷を放った。ドォォォォォンッ!!と相変わらずうるさい音とともに檻の強度を上げた。改良すれば音を小さくできるじゃろうか?そして五人の様子を抹茶をのみながら見守っていた。





しばらくして先生たちがやってきて五人を拘束した。五人はいじめとうその噂を流したことが問題となり、1か月の停学処分が下った。本当は退学処分を考えていたがわしがお願いをして減刑してもらった。今回のことで反省しておるっぽいしのう。それに個人的にお灸をすえたからのう。

そして校長直々に今回の噂について話された。「真っ赤な噓です」と言われた。





これにより美紀の誤解は無事解くことができたのだった。

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