第三章 盆栽

2時間目の魔法基礎の時間、先生が思い出したかのように自己紹介を始める。


「おっとすまない。そういや名乗るのを忘れてたな。俺は伊勢 盆栽だ。みんなから


は伊勢盆と呼ばれている。よろしくな」

すごい名前の先生が現れた。彼、伊勢盆は悲しむように語りだした。


「俺は大の盆栽好きなんだ。だが誰に言っても盆栽の話が通用しないんだ。まぁブームが過ぎ去ってからかれこれ70年経ってるからな」


確かに盆栽は昭和感満載じゃからのう。盆栽かぁ・・・そういやわし家に盆栽庭園を作っとったのう。


「先生、盆栽の話なら次射に話したらどうですか?次射の家に盆栽庭園がありますよ!」


美紀が急に手をあげてそういった。おいぃぃぃぃ!!巻き込むな!!


「おお!そうなのか!?」


そういうと伊勢盆は猛ダッシュでこちらに駆け込む。


そして授業の時間の3分の1が盆栽の話になってしまったのじゃ。


「おっと長話しすぎたな、授業に移るぞ」


やっと魔法基礎の授業が始まった。と思いきや・・・


「よし、体育館に移動するぞ」


まさかの移動。ってか最初から体育館に行っとけよ!!


「よし、これから魔法を使うぞ」


体育館についた俺たちに伊勢盆は一冊の本を渡してきた。


「これは?」

「魔導書だ。図書室からお前たちの適性にあったものを持ってきた」

そう言いながら伊勢盆は人形を持ってきた。

「今からこれに魔法を撃ってもらう。まずは倉橋!!」

「はい!!」


そういうとカス・・・倉橋が人形に向かって魔法を撃とうとしていた。


『大地よ!!我が手のひらに力を授けよ!!』


謎の詠唱を唱えつつ・・・


大地万来グランドゼイション


カス・・・倉橋から放たれた土魔法は人形に命中。しかし・・・

人形にはかすり傷一つなかった。


「あーちなみにいうが威力400以下の魔法じゃあかすり傷つかないからな」


他の人たちも次々やるが誰一人としてかすり傷すらつかなかった。


「次、黒速」


ついにわしの番になった。この時のために盆栽の話をしながらイメトレはできておる。

パチンッ

わしが指パッチンすると人形にすごい轟音とともに黒い雷が落ちた。人形は粉々に砕け散っておった。皆、恐怖で身動きが取れておらんかった。

わしが使った魔法は『黒雷』。魔導書の最後のページにあった超強力な魔法じゃ。


「さすがMP800・・・!!」


みんななんか感心しているようじゃ。わしは試しにもう一回指を鳴らした。するとまたもやすごい轟音とともに雷が落ちた。みんな、「うわぁ!!」と驚いておった。


「ほう、これはなかなか便利じゃのう」

「おい、黒速。心臓に悪いからせめてやると言ってから・・・」

伊勢盆がなんか言いに来たようじゃがわしには何も聞こえておらんかった。

「今のでどのくらいMPを消費したのじゃろうか・・・」

わしは自分のMPを確信した。


黒速次射


MP 710/800


そんなに減っておらんかった。これでは黒雷が撃ち放題じゃのう。


「そういえばさっきの黒雷でどのくらいの威力なのじゃ・・・なんですか?」

「ん?ああ、今確認してくるよ」


伊勢盆が測定器を見に行ったら・・・


「威力・・・750だ!!」

「へ?」


わしはまたクラスで浮いた存在となってしまったのじゃ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る