第九章 落とす!!

大場おおば 美紀みき

 私は大場美紀。あの黒速くろはや次射じいの幼馴染だ。次射はクラスのみんなに大玉転がしの説明をしている。次射の説明を聞きながら私は昔のことを思い出していた。

 私と次射との出会いは今から11年前・・・

 私のお父さんは家になかなか帰ってこなかった。なので私はいつも一人で遊んでいた。

 そして幼稚園に入った時に・・・


「君が大場美紀・・・?」


 黒速次射が私に話しかけてきた。今思えば初対面の子を呼び捨てにしている時点でかなりおかしいやつだ。まぁその時の私はバカだったのでそんなことを気にしてなかったけどね。それよりも遊び相手ができたことがうれしかった。


「次射!次はブランコに乗るよ!!」

「ちょ・・・ちょっと待ってくれ・・・少し・・・休ま・・・せろ」


 次射はああいっていたが私はガン無視してそのまま遊んでいた。入学式以降からそんなに会話をしていない。



「はぁ~~~~~~~~~・・・」


 大玉転がしの説明が終わって休憩時間になった頃・・・

 私はため息をついていた。

 実は私は次射に好意を寄せているが次射は鈍感なのか全く気付いていない。っていうか前世で結婚してたよね?どうやって結婚したのよ!!


「どうしたの?美紀ちゃん!ため息なんかついて・・・」

「わぁ!!」


 私が頭を抱えていると後ろから誰かが飛びついてきた。同じクラスの小鮒こぶなさんだ。小鮒さんは中小企業の社長の娘さんだそうだ。黒髪のショートカットが特徴的だ。


「なになに?まさか恋愛事情??」

「ち、違うよ!!」


 彼女は恋バナ好きなので私が何か悩んでいるとすぐ恋愛事かと言ってくる。まぁ今回は合ってるけど。

 とにかく何とかして次射の意識をこちらに向かせなければ!!そうして私の黒速次射を落とす!!の会は始まった。



 私は最初の作戦に移った。


「あっ、消しゴム忘れた・・・」


 実は消しゴムは持っている。じゃあなぜ忘れたなんて言っているかというと・・・

 私は次射に視線を向ける。


「じゃあこれを使え」


 そう言いながら次射が消しゴムを渡してくる。


「あ、ありがとう」


 これが本当の狙い。お礼をするときにかわいい顔と声をして次射を照れさせるのだ!!

 と思っていたのだが・・・


「そうか、ならよかったのう」


 えっ?

 そのまま次射は何事もなかったかのように授業に集中し始める。

 これでは私がただ恥ずかしい思いをしただけじゃない!!!何なのよ!あいつ!!こうなったら何が何でも絶対に落としてやる!!


 ここから私の恋心に火が点いたのだ。


「ねぇ次射。今日一緒に帰らない?」

「おう、いいぞ」

「ねぇ次射、ここなんだけど・・・」

「ん?なんじゃ?」




「なんなのよ!!あいつ!!!」


 私は自分の部屋で腹が立っていた。おかしい!!かわいい顔を作っても、ボディタッチしても、顔を近づけさせても何も反応がない!!!いくら鈍感だからってこんなことある!!?




 次射を一日で落とそうとした私の計画は打ち破られてしまったのだった。




 一方次射は・・・・・・


「そういえば美紀が今日はよく話しかけて来たのう。なぜじゃろう?」


 と言いながら机に向かって勉強していた。



 作戦2日目

 今日こそ次射を落とす!!そう決心しながら次射の家に向かった。


「おっ、来たか」


 次射は特に変わった様子はなくそのまま一緒に登校した。


「ねぇ次射!なんかそっけなくない?」

「そうか?わしは普通にしとると思っとるけどのう」


 次射は本当に私がアピールしていることに気づいていない。そのまま次射は「ほれ、早う行くぞい」と言いながら先に学校に向かってしまった。

 —————どうしたらいいの・・・次射はこれ以上何やっても気づいてくれない・・・!!そしてゆくゆくは「おぬし、最近おかしくないか?」なんて言われてさらに関係が悪化してしまうことが目に見えてる!!


「もう次射!!待ってよ!!」


 —————私は絶対に次射を落とすんだから!!

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