第二十三章 おめでとうございます

(お前はっ!?)


口に発しようとしたが寸前でやめた。もし奴が仮面の男本人だとしたらここにいる美紀たちが危ない。何より大事な文化祭をぶち壊すようなことはしたくない。


「じゃあ私たち行ってくるわね!!」


そうこう考えていると美紀たちの番になった。二人がステージに上がっていったあと、もう一度仮面の男と思わしき人物を見る。しかしわしが見たときにはもうそやつはいなくなっていた。周りを軽く見てみるがやはりいない。わしが美紀たちを見送った隙に逃げて行ったようじゃ。しかし本当に奴は何をしに来たのじゃ?


考えても仕方ないので美紀たちのバンドを見ていた。相変わらず力強い声を発しており、男子たちは盛り上がっている。女子は・・・・・・見なかったことにしよう。





「ねぇねぇ次射!どうだった!?」


発表を終えた美紀がこちらに向かってものすごいスピードで迫ってくる。


「まぁ・・・・・・よかったぞ」

「本当!?」


「やったぁ~!」とはしゃぎながら美紀は外に出た。いやほめるだけでこんなにはしゃぐのか?最近の女子はわからんのう。


 まぁそんなことより問題はさっきまでいた仮面の男と思わしき人物だ。暗くて顔がよく見えなかったが背格好を見る限り間違いない。ここはあれを使うか・・・


 そしてわしが小袋から取り出したのはわし自作の秘密兵器。GOSじゃ!!これはわしが見た奴一人を盗撮し位置情報も知れるという優れモノじゃ!!早速起動させてわしの記憶を読み込ませる。そしてその中から先ほどの仮面の男と思わしき人物を選ぶ。


「よし、たのむぞ」


するとGOSが飛び立ってどこかに行ってしまった。これで奴の正体を知れるのは時間の問題じゃ。すると・・・


コテンッ!


わし自慢のGOSが地面に落ちていたのじゃ。どうやらまだ正常に動けないらしい。ということで虎二制作のGOSを飛ばすことにした。

自分の席に戻りほかの有志の発表を見ていたがわしらに比べたら盛り上がり方が足らん。絶対に発表順番間違えたじゃろ。


「これなら優勝は確定だな!!」


禾本が嬉しそうにステージを見ている。確かに他のチームと比べても圧倒的とみてもいいじゃろう。もちろん、これは客観的に見てじゃ。


 実は今回の有志発表は順位付けがされるんじゃ。上位者は校長から最高級のレストランの招待券と10万円がもらえるという。あくまで噂じゃ。本当にそうかはわからん。でももらえたら結構ラッキーというべきか・・・いやでも人にものをもらうのはなんか申し訳なくなってしまう・・・


そんな意味の分からないことを考えていた・・・




「ふう、やっと終わったか」


疲れた体を伸ばしながらボソっとつぶやいた。

これで有志発表は全員し終わった。あとは校長挨拶だけじゃ。少しすると校長がステージに上がってきた。相変わらずよく光で反射される赤髪と180㎝超えの高身長じゃ。そして若い。確か29歳じゃったか・・・?ん?29歳で校長!?こいつ一体どうやったらそんな事が出来るのじゃ!?


「皆さん、お疲れさまでした。実に面白い有志発表でした。それでは早速上位者を発表しようと思います」


おっ、いよいよじゃ。みんなソワソワしながら発表されるのを待っている。いや、そわそわしているが、ほぼわしらのチームが優勝だと思っておるじゃろう。もちろん、客観的に見てじゃ。


「優秀賞は・・・・・・」


そしてわしは息をのんだ。これで最高級のレストランの招待券と10万円がもらえるという謎の欲を抱きながら・・・





























「チーム『LOVE』です。おめでとうございます」































それは美紀たちのチームだった。



「「えええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!?」」


全校生徒、先生たち全員が驚きを隠せなかった。

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