第13話 前途多難 ※外交官の男視
今まで重要視されてこなかった、アラムドラム帝国との外交を任されることになった。考え方を変えよう。ここで困難な交渉を成功させて成果を出せれば、私の外交官としての評価が上がるということ。そう前向きに捉えて、任された仕事に挑戦する。
ここで成功すれば、アルメルが今よりもっと私のことを認めてくれるだろうから。
せっかく気持ちが奮い立ったのに、いきなり困難が待ち受けていた。
「予算は、これだけなのか?」
「はい。これ以上は出せません」
任命されて最初の仕事になったのが、アラムドラム帝国の外交官との顔合わせ。ではなく、財務担当との交渉になってしまった。
「もう少し、どうにかならないのか? これでは、交渉は不可能だ。場を設けることさえできない」
「何とか、お助けしたいのはやまやまなのですが、我が国も苦しい状況なので」
助ける気持ちを少しも感じられない返答に、つい苛立ってしまう。王国のためになる、非常に大事なことなのに、なぜ協力してくれない。
「状況は、わかっている。でも、我々だって交渉で成果を出さなくてはいけないんだ。だから、少しでも予算を増やしてくれないか?」
「無理です。それ以上は出せません」
「……」
「お話は、以上ですね?」
それだけ言うと、担当者は去っていった。まさか他国との交渉に入る前に、自国との予算交渉でつまずくなんて思わなかった。何度か話し合いをしてみた結果、予算の増額は無理という結論。それが変わることは、おそらくないだろう。
王国は、金を出す気はない。
「くそっ」
予算を上げることは諦めるしかない。元々、王国の財務担当はケチで有名だった。現場の状況を理解していない。それで最近、騎士団の遠征任務も失敗したみたいだし。
とにかく、金がない。いつものように、実家に頼ることも出来ない。最近、婚約を破棄することを認めてもらった。これ以上を求めると、何を言われるのか予想できない。アルメルとの付き合いもやめろと言ってくるし。
だから、実家は頼れない。
元婚約者の実家はどうか。これも頼れない。援助を理由に復縁を求められる可能性がある。今後は、あまり関わらないように気をつけないと。
しばらく前まで仕事仲間だった者たちは、私がアラムドラム帝国の担当になったと聞いてから、一気に離れていった。アラムドラム帝国の案件では成果を出せないし、多少のことでは評価もされないという噂だから関わらないようにしているのだろう。今まで仕事で助けてやったのに、薄情な奴らだ。
アルメルを頼るのはどうか。これもダメ。愛する女性を頼るのは、男としてどうかと思う。プライドが許さない。
最終的には、親友たちの力を頼ることになるだろう。彼らは、とても頼りになる。ただ、助けてもらった時に私ではなく他の男がアルメルの評価を上げることになるかもしれない。それは、嫌だ。恋愛関係で利用されるのは、絶対に避けたい。
やはり、自分の力で何とかしないといけないか。だがやはり、アラムドラム帝国と外交する仕事というのは非常に困難のようだ。やっぱり無理なのか。ここでの仕事は諦めて、担当を変えてもらうように頼むべきか。
閑職に回されてしまった私は、まだ仕事で成果を出すことが出来ていない。
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