第16話 ジタバタしない ※王国王子視点
「……これからだ」
ようやく、エレノラとの婚約を破棄することが出来た。これで、私が本当に愛しているアルメルとの関係に集中することが出来る。
今までもアルメルに対しては本気だった。しかし、エレノラという婚約相手が居るような状況では、全ての気持ちが伝わっていなかったかも。
だが、これからは違う。私がアルメルを愛するのに妨げになるものは、何もない。アルメルだけに気持ちを向け、アルメルだけを愛するのだ。心から愛する人と一緒になるために、障害を乗り越えてきた。これこそが本当の愛というものだろう。
その覚悟を示すために、多くの人たちが見守る中でエレノラに婚約破棄を告げた。あれで、私の本気も伝わったはず。
私と同じような、本気の気持ちを持つ者たちがいる。
クロヴィス、トリスタン、ラウルにトゥーサン。その4人も、心の底からアルメルを愛していることを知っている。
だからこそ、彼らとは同じ土俵に立って正々堂々と、それぞれの婚約関係を断ってから勝負する。そういう取り決めになっていた。
誰が彼女の心を射止めるのか。それはまだ、わからない。
けれど、私に不安は微塵もなかった。おそらくアルメルは最終的に、王子である私を愛してくれるだろう。それを信じて、今はどっしりと構えておけばいい。
どうやら、他の4人は焦っているようだ。
トリスタンは遠征任務の失敗。クロヴィスは実験でミスして、成果を出せていない様子。ラウルは特に最近、忙しくしているようだ。トゥーサンは閑職に回されて、暇そうにしているらしい。
私が、そうなるように手をまわしたわけじゃない。彼らは勝手に失敗したり、苦労しているようだ。
そうなってしまうのも理解はできる。それだけ、アルメルを手に入れたいと願っているのだろう。そんな強い気持ちが、彼らを焦らせてしまう。
仕方ないので、もうしばらくはアルメルとの恋愛ごっこを許してあげようと思う。ただし、最後に彼女と一緒になるのは私だ。今のうちに彼らには、良い思い出作りでもしておいてもらおうか。いつか決着がつく、その時まで。
私はどっしりと構えて、寛大な心で状況を見守ることにしよう。その合間に、私もアルメルとの時間を楽しむ。
「……フフフ」
さて、これからアルメルに会いに行こうかな。余裕のある姿を彼女に見せつけようじゃないか。そんな時間を、私も堪能させてもらおう。
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