第24話 心配な友人 ※フローラ視点

 エレノラの提案で、私たちはアラムドラム帝国への移住することになった。


 そんなことをして大丈夫なのかと、計画を実行する前は不安だった。だが、彼女が用意してくれた計画に乗るだけで全てが無事に終わっていた。私がしたことは両親の説得ぐらいで、帝国の受け入れ態勢は万全だし、今は何不自由なく暮らしている。


 婚約を破棄されたことは不幸な出来事だと思ったけれど、逆だった。あの男から離れたことで、色々と自由になれた。見えていなかったことが、見えるようになった。


 なぜ私は、ラウルのことが好きだったのかしら。今ではもう、その気持ちもわからないわ。考えてみると、色々と粗のある人だった。


 外交の仕事で一定の評価は得ていたし、それなりに優秀ではある。だけど、誰かのサポートじゃないと仕事ができない印象だった。本人には言えないし、離れてしまった今では言う機会もない。


 この先、外交官として成長していく可能性もあるので、どうなっていくのか未来はわからないけれど。私にはもう、関係ないこと。




 それよりも心配なのは、頑張りすぎる友人のことだ。


 人のことに関しては、よく気を配って助けてくれるエレノラ。私たちは、これまで何度も彼女を頼ってきた。しかし、自分のことになると無頓着な面がある。他を優先して、自分のことが疎かになりがち。私たちが負担になっていないかと、いつも心配になる。


 何か助けになれることがあるのなら、すぐにでも助けてあげたい。でも、その機会がなかなか訪れない。彼女は、とても優秀だったから。自分のことは、何でも自分で解決してしまう。


 そんな彼女にも、気になる相手が現れたみたい。ジャスター様という、私たちを帝国に招いてくれた恩人。彼の協力があって、私たちの今の生活がある。


 エレノラは最近、ジャスター様と一緒に仕事をしている。その働きぶりは、目を見張るほど素晴らしいとのこと。私の新しいパートナーからも、エレノラの話題をよく聞く。大事な友人が帝国でも評価されて、私も自分のことのように嬉しい。


 頑張りすぎていないか心配になったけど、最近のエレノラは笑顔が増えた。王国に居た頃よりも明らかに、生き生きと仕事をしている。とても幸せそうだった。


 その理由は、ジャスター様のようね。


 私の目から見て、二人はお似合いだと思った。エレノラの思いが成就して、幸せになってくれたらと心から願う。


 そう思っていたら、あっという間に一緒になることを決めて、結婚式を執り行うことになった二人。


 招待されて出席した結婚式は、とても素晴らしかった。エレノラとジャスター様は、幸せそうで、お互いの思いが伝わってくる素敵な結婚式だった。


 みんなを幸せにするエレノラは、私の誇り。これからもずっと大切な友人でいてね。私も、あなたの幸せを願っているから。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る