第25話 お茶会

「ようやく、一緒になれたわね。改めて、おめでとう」


 ホッとしたという表情で、隣に座るフローラが言ってくれた。


「エレノラも、絶対に幸せになってほしい」

「私たちの今があるのは、貴女のおかげだから」


 マリンとルシールの2人から感謝されて、幸せになってほしいと願われた。


「なかなか、いい相手を捕まえたわね。やるじゃない」


 そしてリゼットは、いつも通り。でも、その目は優しかった。


「ありがとう、みんな」


 彼女たちの祝いの言葉を受け止めて、私は微笑む。王国から帝国へ一緒に移ってきた5人で、定期的にお茶会を開いていた。ここで、近況を報告し合う。今日の話題は、私とジャスター様が結婚したことについて。


「でも、意外と時間がかかったわね」

「そう?」

 

 リゼットの感想。私としては、かなり早く決まったほうだと思っていたけれど。


「一緒になるって決めてから、あっという間だったけど。それまでが、ね」

「うんうん。もっと早く、くっつくと思ってた。周りも、そう見ている人が多かったはずだよ」

「貴女とジャスター様の2人は、いつも一緒に行動してたでしょ。楽しそうだった」

「いや、でも。あれは仕事だから」


 フローラ、マリン、ルシールの順番に、そんなことを言われる。周りから、そんな風に思われていたらしい。私たちが一緒になるのは、時間の問題だったと。だから、結婚式もスムーズに行えたのかな。


「一緒に仕事が出来て、羨ましいな」

「マリンのところは、どういう感じなの?」


 ポツリと呟いたマリンに、フローラが訊ねる。


「とっても大事にしてくれるよ。だけど、仕事が忙しいみたいで。ちょっと寂しい」

「いいじゃない。とても優秀な人だって、聞いてるわよ」

「うん。とってもカッコいいんだよ。時間があるときは、いつも側にいてくれるんだ」


 嬉しそうにマリンが笑った。王国を出る時は、とても悲しそうだった彼女。今では吹っ切れて、とても明るい笑顔を見せている。よかった。


「優秀といえば、ルシールのところも。凄いらしいじゃない」

「あぁ、うん。まぁね」


 リゼットが、ルシールに話題を振る。話を振られたルシールは、苦笑いを浮かべていた。


「ルシールと一緒になった後、すぐ昇進したんでしょ?」

「ただ、タイミングが重なっただけ。昇進したのは、彼が努力してきた結果だよ」


 パートナーのこと尊重するルシール。だけど周りの人たちは、彼女と一緒になったことで運気に恵まれたと噂していた。


「フローラの結婚は、いつ? もう、決めたんでしょ?」

「えぇ。結婚することは決めていたけれど、この中で私は一番最後にしようと考えて先延ばしにしていたわ」


 パートナーは決まっていたけれど、色々な考えがあって結婚を先延ばしにしていたフローラ。


「でも、これ以上延ばすのも彼と彼の実家に悪いから。もう結婚すると伝えたわ」

「おめでとう!」

「ようやくなのね。おめでとう」

「良い知らせが聞けて、私も幸せよ」

「よかったね! おめでとう、フローラ!」


 みんなから祝福されて、フローラは嬉しそうに笑った。


「ありがとう」


 4人が結婚して、残されたのはリゼット1人だけ。


「あら。私は、いつでも結婚することが出来るわよ。でも、そうしないだけ。ここで焦ったら、負けだし」

「まぁ、それぞれのタイミングがあるでしょうけど。早く決めたほうが、いいと思うわよ」


 自信満々に答えるリゼットに、ルシールが忠告する。


「えぇ、そうするわ」


 そう答えたリゼットは宣言通り、お茶会の後にすぐ結婚を決めた。焦ったわけではなく、ちゃんと相手をじっくりと吟味して、納得した上で。将来を見据えた、素敵な相手と結婚するようだ。


 こうして私たち5人は、帝国で素敵な人達と出会い、それぞれ幸せになっていく。

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