第26話 ようやく ※王国王子視点
「私が愛しているのは、ルドルフ様だけよ」
「その言葉が聞きたかった」
私との関係だけに気持ちを向けてくれていることを、アルメルはちゃんと言葉にしてくれた。それが嬉しい。
彼女は、色々な人たちの心を癒やしてくれた。求めてた言葉や行動で苦しみを取り除き、安らぎをくれた。友人たちも、彼女に救われた。そして、私も。
私は彼女と出会い、心を救われたのだ。本当に愛するべき人と出会えたのは、私の人生で幸運なことだった。それを逃さないように、手元でしっかりと掴んでおきたい。離さないように、しっかりと。
そう思ったのは、私だけじゃないだろう。だからこそ、彼女を独占することは簡単には許されない。アルメルがどう思っているのか、それが一番大事だから。
私は静観した。無理やりアプローチしたりせずに、我慢した。彼女から会いに来てくれるのを待って、会える時には全力で楽しんだ。そうやって、絆を深めてきた。それが、必ず上手くいくと信じて。
彼女の様子を見守りながら、最後に誰を選ぶのかを待っていた。そしてようやく、彼女は私の元へ来てくれた。彼女自身の判断によって。
「大好きです、ルドルフ様」
「私もだよ、アルメル」
「貴方と、ずっと一緒に居たい」
「そう言ってくれるのを待っていたよ。もう、他の男なんかに渡さないから」
「はい! 私のことを、絶対に離さないでくださいね?」
「もちろん。いつまでも、一緒だ」
アルメルは他の友人たちではなく、私を選んでくれた。それが、とても嬉しい。
友人たちに申し訳ないという気持ちもある。けれど、私はアルメルと一緒に幸せになる。ぞれが、選ばれた者の責任。彼女のことを大事にするためにも、これから先は独占させてもらおう。
アルメルは、私だけのもの。彼女との婚約も正式に発表する。周りに認めせさせて、これから先は彼女と一緒に幸せな日々を歩んでいく。最高の気分だ。
そのはずだった。それなのに。
宮殿の自室で、アルメルと一緒に居る時の出来事だった。武装した兵士たちが突然、断りもなく部屋に突入してきた。
「な、なんだ! お前たちは!」
「国王陛下のご命令です。お二人を拘束させて頂きます」
「なっ!?」
問答無用で兵士たちに拘束される。訳が分からない。なぜ、私たちが拘束されなければならない? 父の命令とは、一体どういうことなのか。
「離せ、無礼者っ!」
「抵抗するな」
逃げようとするが、屈強な兵士に取り押さえられてはどうしようもない。
「こんなこと、許されると思っているのか!」
「国王陛下のご命令に従い、王国に重大な損害を与えた罪でお前たちを拘束する!」
「な、なんだと!? 私は、この国の王子だぞっ!」
王国に損害を与えた罪? 何を、言っているんだ? 頭が混乱して、何がなんだかわからない。罪なんて、あるわけない。
「キャッ!? いやっ! 触らないで! 離してよッ!」
「待てっ! やめろ! アルメルに乱暴するな!」
王国の兵士に拘束された。王国に損害を与えた覚えなんて、全くない。それなのに、こんな仕打ちを受けるなんて。アルメルまで一緒に捕まえるなんて、許さない。絶対に。
「ルドルフ様! 助けてッ!」
「アルメルッ!」
何度言っても解放してくれない。何かの間違いだ! 私は必死で訴える。これから私は、アルメルと幸せになるはずなのに。
「トリスタン! クロヴィス! ラウル! トゥーサン! 誰か私を助けてよッ! こんなの、嫌!」
「くっ……!」
アルメルが友人たちの名前を叫ぶ。しかし、残念ながら近くに彼らは居ない。こんな危険な時に!
そのまま私たちは、王国の兵士に連行された。どうして、こんなことに。
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