第35話 未知のイベント ※ヒロイン視点

 なんでこんなことになったの。


 罪に問われて、拘束されて。王妃候補である私に対して、酷い扱いをして。こんなこと許されるはずがない。こんなのおかしいわよ。


 私はルドルフと一緒になって、幸せになる。王国のトップに立つ男の横で何の不安もなく、楽しく暮らす予定だった。それなのに、どうして?


「何なのよ……っ」

「おい、静かにしろ」


 少し呟いただけで、見張りが声を荒げた。慌てて口を閉じる。悔しさのあまり、涙が溢れる。私が何をしたっていうのよ。処刑されるなんて、理不尽にもほどがあるわ。


 一緒に拘束されているルドルフは、私を助けてくれそうにない。そもそも、彼に巻き込まれてこうなった。最終的に選ぶ男を間違えてしまったのね。ああ、私のバカ。


 でも、後悔しても遅いのよ。だって、ここは処刑台の上なんだから。


 目の前の広場には、平民が集まっている。群衆が、私を見ている。こんな見世物にされて、殺されるなんて嫌すぎるわ。誰か助けて。


 どうにかして生き残らないと。生きてさえいれば、きっとチャンスはあるはずだから。私にはまだ、やりたいことがたくさん残っているんだから!


「アルメル! 君を助けてに来たッ!」


 声が聞こえた。知っている男の声だった。全身に電気が駆け巡ったような感覚に襲われる。助かるかもしれない。幻聴なんかじゃない。


 顔を上げると、そこには私の愛する最強の騎士様が居た。


「処刑なんて認めない!」

「君が殺されるなんて、間違っている!」


 彼だけではない。魔法の天才であるクロヴィスに、天才的な交渉術を持つラウルも。私を助けに駆けつけてくれたんだ。


 嬉しい……! 嬉しさと同時に涙が零れそうになる。私は大きな声で叫んだ。


「トリスタン! クロヴィス! ラウル! みんな、私を助けに来てくれたのね!」


 トゥーサンは見当たらないけれど、きっと見えないところで助けようとしてくれているんだわ。


 心の中で、みんなに謝罪する。彼らを見捨てようとしてしまったこと。それなのに、みんなは助けようとしてくれてる。それが嬉しくてたまらない。


 次は、絶対に見捨てない。ルドルフ、トリスタン、クロヴィス、ラウル、トゥーサン。この5人と、ずっと付き合っていくことが大事ということ。


 一瞬だけ、間違えそうになった。だけど、もう間違えない。


 私は確信した。これは、私が知らない未知のイベントに違いない。乙女ゲームのシナリオに、まだ続きが用意されていたんだわ。ここは、ラストを飾るために用意された舞台なのよ。


 ようやく分かった気がする。この展開こそが、逆ハーレムエンドに続く道だったのね!

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