第11話 任務失敗 ※次期騎士団長候補の視点

 運が悪かった。いつもは万全の体制で任務に挑めるのに、今回はラウンド家の協力を得られなかった。そんな時に限って天候が悪く進軍が遅くなって、予想外の敵とも遭遇してしまった。


 けれど、俺の率いる部隊は優秀だ。その時の戦闘も、すぐに終わると思っていた。


「一時撤退だ! 引けっ! 引けッ!」

「下がれっ!」

「や、やばいっ! 逃げるぞっ!」

「違う! 退却だっ!」


 予想に反して、思わぬ苦戦を強いられた。いつもなら簡単に蹴散らせるはずなのに、人員が少し足りないだけで、こんなに苦戦するなんて思ってもいなかった。


 何度か立て直しを繰り返して、戦いを終わらせる。


 戦闘で負傷した兵士も多かった。武器や防具の損傷も激しい。治療と修復の費用が必要になるだろう。


 こんなことで消耗してしまうなんて。任務が終わった後にも、金を出さないといけない。大赤字である。


 これもすべてラウンド家のせいだ。直前になって協力を拒否するなんて。それで、計画の準備が不十分となり、いつもの調子で戦えなかったから。




「くそっ! なんとか王都に帰還した、が。これでは……」


 疲労困憊の兵士たちを見る。任務は失敗した。なんとか遠征任務を終わらせたが、損害が大きかった。予定よりも進軍が大幅に遅れて、計画が崩れた。これじゃあ指揮した俺の評価は下がってしまうだろう。なんてことだ。騎士団長の座を狙う俺にとって、致命的な失敗だった。


 王都に帰還してから、しばらく任務の後処理に忙殺された。ようやく落ち着いた所で、今回の失敗の原因を追究するために、ラウンド家の当主と面会しようとした。だが。


「拒否された?」

「はい。それから、ラウンド家は今後一切、協力できないと」


 部下の報告に、ブチギレそうになる。なんて勝手な。どうして、俺の邪魔をするんだ。


「ルシールは? 彼女も呼び出しに応じないと言っているのか?」

「はい。そちらも拒否されました」

「……」


 婚約者だった頃の彼女は、俺が騎士団長になれるように支えると約束して、応援もしてくれていた。


 俺の知っている彼女であれば、今回の件を知ったら協力をしてくれるはず。婚約を破棄してから、変わってしまたようだ。俺と会うのを拒否しているということは、やはり彼女が裏で手を回している可能性が濃厚だな。


 きっと、婚約を破棄したことを怒っている。それなら、婚約破棄を取り消すか。そして再び、ラウンド家の協力を取り戻す。でも、そうすると俺が本当に愛しているアルメルとは一緒になれない。


 だが、ラウンド家の協力を得られないと、今回のような任務の失敗で騎士団長の座が遠のく。俺は、アルメルの隣に立つために立派な騎士団長になると約束した。それなのに。


 アルメルに会いたい。こんな問題に頭を悩ませるよりも、愛する彼女に癒やされて心休まる時間を過ごしたい。

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