第4話 原作と懸念
乙女ゲームの世界でヒロインだった、アルメルというキャラクター。
彼女が中心で、物語が展開していく。
各キャラクターそれぞれのシナリオとエンディングがあって、攻略対象の好感度を調整しながら同時に攻略を進めることで突入することができる、逆ハーレムルートが存在していた。
この世界のヒロインであるアルメルは、ゲームと同じように好感度を調整しながら同時に攻略を進めた。そして、逆ハーレムルートに突入していった。
私が彼女の攻略を妨害しようとしても、結局は見覚えのあるイベントが発生してしまう。ヒロインの望み通り、攻略対象たちは動いてしまう。
もしかしたら、私も無意識のうちに動かされていたのかも。そのまま物語は記憶の通りに展開していった。そしてエンディングまで、ヒロインの好き勝手な攻略を阻止することは出来なかった。
だけど、物語とは関係ない部分では意外と自由に行動することが可能だった。
例えば、原作では私たち5人が仲良くしている場面なんて存在していなかったし、描写もなかったはず。裏設定とか、そんな情報も聞いたことがなかった。それなのに私たちは、普通に集まって仲良くお茶しておしゃべりしたり、お出かけしたり、時には喧嘩をしたり仲直りしたり。そういった日常を過ごすことが出来ていた。
ゲームには登場しなかった他国、アラムドラム帝国に行って、そこで新たな関係を築くことも出来た。彼らは、ゲームの登場人物ではない。そんな人たちと知り合って、交友関係を結んでいた。この行動も、ゲーム本編には描かれていない。
つまり、ゲーム内の展開や設定にない行動をしても、特に問題はないということは確認済みだった。
あのヒロインや物語に関わらなければ、普通にこの世界を生きていくことが出来るのかもしれない。
そして、ゲームはエンディングを迎えた。この先、物語は存在していない。全てが終わった後、自由に生きていくことだって出来るはず。
少し怖かったのは、ゲームがエンディングを迎えた瞬間に何か起きるんじゃないかと不安に思っていたこと。終わりを迎えて、登場人物の一人だった私の意識は消滅するのではないか。そんな恐怖があった。
だけど実際は、何か起きた様子はない。そして、一番最後のイベントを少しだけ変えることが出来た。婚約破棄を告げられた私は取り乱すことなく、落ち着いて対処することが出来た。
ということで、原作の知識もここで終わり。
ゲームでもエンディング後にエピローグがあった。けれど、かなりあっさりとした内容だった記憶がある。イベントもなく、ヒロインが攻略完了したキャラクターたちとイチャイチャした様子が簡単に描かれるだけだったような。
それだったら、これから先もヒロインとは関わらないようにして生きていけば自由に過ごせるはず。そうだといいなぁ。
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