第37話 あの後の話

 帝国に戻ってきた私は翌日、友人たちに帰還の報告をした。


「ただいま、みんな」


 いつものお茶会で集まり、私がそう言うと友人たちが笑顔で迎えてくれる。


「無事に戻ってきてくれて、安心したわ」


 ホッとした表情を浮かべたのは、フローラ。私の友人たちの中でも一番心配性なのよね。


「おかえり、エレノラ」


 マリンは満面の笑みを浮かべて、私を迎えてくれた。彼女の笑顔は癒される。


「無事の帰還、何よりです」


 いつもクールだけど、こういうタイミングでは暖かい笑顔を見せてくれるルシール。


「ご苦労さま」


 そして、リゼットはいつものように言葉は素っ気ないけど、優しい声で労いの言葉をかけてくれた。


 無事を喜んでくれるみんな。心配してくれていたみたいで嬉しい。その後、みんなでおしゃべりを楽しむ。私が離れていた間の帝国の様子を聞いたり、王国での話をした。やっぱり、友人と過ごす時間は楽しいわね。




 それから、離れていた間に溜まっていた仕事を処理しておく。ジャスター様が戻ってきたときに、少しでも楽になるように。業務に集中して、余計な考えを頭の隅に追いやった。


 きっと大丈夫。彼は、無事に戻ってくる。そう信じながら、私は書類の山を片付けていく。




 そうしている間に、ジャスター様はあっさり帰ってきた。


「結局、ラドグリア王国は滅びることが決まった。現国王が最後の王になるだろう」

「それはまた、大変ですね」


 翌日、皇帝陛下に任務完了の報告を終えた後。ジャスター様に、あれからどうなったのか詳しい話を聞くことになった。


 ジャスター様は王国に残って、ラドグリアの王と話し合ったらしい。その結果、そういう結論に至ったそうだ。


 混乱が起きないように時間をかけてじっくりと、帝国が王国の土地を取り込むことに。私や友人たちが生まれ育った王国の領地も、いずれ帝国領となる予定だそう。


「彼らも、早急に処刑された」

「そうですか」


 処刑台の広場で騒ぎを起こした彼らは捕まった後、人目につかない場所で粛々と処刑された。今度は邪魔されないよう極秘裏に。


 ジャスター様も、その場面に立ち会った。ルドルフ王子の最期をしっかりと見届けたそうだ。それを聞いて、悲しみも喜びも湧かなかった。事実を知っただけだ。


 唯一、あの場に居なかったトゥーサンだけが無罪放免となったらしい。彼が関わっていた出来事について全てを白状した結果、そういう判断になったらしい。


 とにかく、例の件については解決したということ。そして、帝国の未来も明るい。




 まさか、そういう結末になるなんて予想外だったな。私が帝国に移ってこなければ、王国は今頃どうなっていたのかしら。


 でも、私にとっては間違いなく、こうなってよかったと思う。


「ジャスター様と一緒になれて、よかった」

「俺も、エレノラと出会えてよかったと思っている」


 私とジャスター様は、お互いの手を握り合う。これからも、彼と二人で支え合って生きていこう。そんな決意を胸に秘めながら、私はジャスター様と一緒に帝国の未来を想うのであった。


 うん、これでよかった。

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