fight22:好敵手を決める

「へぇ、なんか心外だな。まるで、僕は眼中に無いみたいじゃない。問題があった空手部では相当虐められた癖に随分偉そうにして。」

 一心に突っかかる稲津は彼の前に割って入り、挑発するように嘲笑しながら睨む。

「打撲痕が少ないお前は闘いの場数が違うんだよ。今のお前なら俺は勝てないとして、スランプから立ち直った奈緒の練習相手には丁度良いじゃねぇか。」

「一心!」

 厳しく睨みつける一心に稲津は不敵に笑い、余裕をかます。

「へぇ、じゃあ、そこのガールフレンドをやれば、あんたが相手になるんだ。分かったよ、その勝負ゲームを受けてあげるよ。」

 舐めた挑発を受けた稲津は憤るどころか、愉快そうに面白がり、闘う相手である奈緒に向ける。

「ということで、僕の相手に指名されたからには、半端な闘いは許せないからね。そうじゃないと、僕が十分に目立たないから。」

「その口の悪さには色々と思う所もあるけど、試合でその悪癖を治してやるから、十分に楽しみにしなさい!」

 颯華の前に一心がやって来て、互いに目を向け、殺気をぶつけ合う。

「へぇ、やっぱり、私の相手は君になるんだ。よろしくね、空手家さん。」

「お前が、十分見極めさせてもらう。」

 残された蓮火と深山は互いに顔合わせ、闘志が激る笑顔を晒す。

「ということは私の相手は深山さんですね! よろしくお願いします! あなたがどんな闘い方をするのか、楽しみです!」

「ふふっ、流石、から聞いた戦乙女です。もう、闘うこと楽しみにしてますね。こちらこそ、胸を貸して貰います。」

 互いそれぞれの戦意が絡む中、三組六人はそれぞれ堅い握手をし、睨み合う。

「俺のはそんなに柔じゃねぇ、覚悟しろよ。」

「私のはそう簡単に見抜けないよ。」

「私のを舐めないでよね。」

「僕のを披露してあげるよ。」

「あぁ、早くあなたに私のを見せたいです!」

「なら、こちらは私のを楽しませて貰いましょう。」

 互いの健闘を祈り、一週間後の試合を夢見て、それぞれ帰路に着いた。


 その最中、蓮火は奈緒にある相談を持ち掛ける。

「えっ、試合前日の土曜日に私を蓮火の家に来て欲しい?」

「はい、試合前で申し訳ございませんが、初めての戦友をご家族に紹介したいと思いまして。」

「そんな、大袈裟な…。まぁ、良いけど。私も蓮火がどんな修行をしているのか知りたいしね。」

「本当ですか、ありがとうございます!」

 奈緒はこの時、知らなかった。蓮火の実家、もとい鬼門の一族の本拠地がとんでもない所にあることを。

 そして、彼女たち以外の約三名が巻き込まれることを。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る