fight21:新たな試合、それは三本勝負
呂夢は正座をさせられ、笑わない目と青筋を立てた笑みで威圧する真琴教師に問い詰められた。
「いやぁ、前回のが好評だったから、奈緒たちが格女部のメンバーを集めるついでに試合でみんなの注目を集めて、格女部の広報になれればなぁと…」
「呂夢さん、先日は住宅街にある道場に生徒たちが集中したせいで、彼らの歓声が騒音になってるというクレームがこちらに来て、職員室は大変でしたよ。あまつさえ、公正な部活動を賭け試合にするのなら、尚更、お灸をすった方がいいですね。」
「あっ、はい、すみません…でも! 奈緒たちは試合には賛成だよね! ほら、ご褒美とか釣って、悪かったけど…腕試しって言うなら、私は喜んで、自費で支払います!」
呂夢の悲痛な訴えに五人の戦乙女はそれぞれ思うこともあっても、答えは同じだった。
「まぁ、呂夢が反省してるならいいし、彼女の言う通り、格女部のデモンストレーションにはぴったりだし。」
「まぁ、僕はご褒美はついでで、腕試しってやつに興味があるから。私、半端じゃなくても負けないし。」
「まぁまぁ、ここで私たちが集まったのも何かの縁ですし、試合をやらないのは勿体ないですよ。」
「まぁ、私はそんなことをされなくても、こっちから辻試合をしようと思った所だしね。噂の戦乙女二人と。」
「呂夢さん、気にしないで下さい! むしろ、呂夢さんのおかげで私たちは出会い、楽しく試合が出来ますから! 感謝しても、し切れません!」
「うう、みんな、ありがとう。」
五人の戦乙女たちの承諾に真琴教師は頭を抱え、溜息を吐くも、しょうがなく認めつつあった。
「試合場所や日時はこちらの方で決めますが、くれぐれも迷惑と無茶だけはしないように! 呂夢さんもいいですね!」
「はい! 責任を持って、実況役をやらせて貰います!」
周りが明るく纏まった雰囲気に成りつつあった時、王児は恐る恐る手を上げる。
「あの〜、五人で一対一の試合では一人が二人を相手になってしまいます。戦いの負担を考えると、万全に試合に臨む為に最低もう一人は必要になりますけど…」
「あっ、そうでした。あと一人、どうしましょう。」
「顧問である私が出るのも不平等で、大人気ないですし。代わりに出る人と言えば…」
「俺が出る。」
みんなが声をする方に向けると、颯爽と名乗り上げ現れたのは鉄輝一心であった。
まだ試合も始まってないはずの彼は殺気染みた臨戦態勢で颯華を睨み付ける。
「ちょっと、一心! 今まで何処をほっつき歩いてんのよ! 教室にいないと思ったら、いきなり現れて、一体どういう…!」
「悪いが痴話喧嘩は後だ。真琴先生、俺では不平等だと思いますが、奈緒に過去何度も負けた俺からして見れば、男女差による格闘優劣なんてありません。特に、奈緒や蓮火、そして、颯華という女子なら尚更だ。」
名指しされた颯華はニヤリと笑い、殺気を向けられた時点で自分と闘う相手を確信した。
あの夜で悪漢の顔面をへし折った男を。
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