fight20:五人の戦乙女

 いきなり攻撃を仕掛けた颯華に周囲の皆は警戒し、強張るが、蓮火だけは不用意に近付き、彼女の前に立つ。

「入部は嬉しいですが、顧問であるマコちゃん先生に失礼ですよ。」

「へぇ、マコちゃんって言うんだ?」

「蓮火さん! マコちゃん、ではなくて、真琴先生と呼んで…」

「じゃあ、改めて。先程、試すような真似をして、すみません、。さてと、謝ったから、早く入部させて下さいね。」

「嗚呼、また、渾名で呼ぶ生徒が増えてしまいました…」

 渾名で呼ばれたことに落ち込む真琴教師を他所に今度は奈緒が颯華に駆け寄った。

「へぇ、あなたの蹴り、格闘経験者並みと睨んだは。あなた、何の武術をやってるの?」

「忍術を少々ね。」

「えっ、ということは忍者何ですか!?」

「忍者なんて古いよ。今は私のような忍術家じゃないと現代では生き難いからね。」

 赤・黒・緑の戦乙女が語り合っていた。一見、微笑ましいように見えた三人だが、

「何だが、意気投合してるね、あの三人娘。」

「でも、目が笑ってません。というか、互いにようで笑いながら睨んでいますね…」

 リラックスした中での臨戦態勢という違和感な日常を目にした呂夢と王児はただ苦笑するしかなかった。

 その時、再び、戸を叩く音が聞こえ、呂夢は迎えに向かった。

「はいはい、入部希望者の方ですか?」

「はい、そうですけど、格闘女子部はここで合ってますか、呂夢先輩。」

「まさか、問題があって、解散した空手部を利用するなんて、図太いだか、何というか。」

 呂夢が戸を開けると、長い紫髪と紫の瞳を持ち、黒いドレスを身に纏った女子、黄色い短髪と黄色い瞳を持ち、白いヘッドホンを被り、白い携帯ゲーム機を手に持ち、颯華と同じく学校の指定校生服を着た女子がいた。

 前者はお嬢様然としたおっとりさで微笑み、後者は気怠そうにゲームをしながら、部室の様子を上から目線見ていた。

「2年A組の黒河くろかわ深山みやまと申します。よろしくお願いします。」

「同じく2年A組の鳴神なるかみ稲津いなづ、よろしく。」

 礼儀正しい紫の戦乙女と適当な黄色い戦乙女。正反対の二人の前に蓮火と奈緒、颯華が向かう。

「よろしくお願いします、二人とも! 二人は格闘技の経験は?」

「はい、お父様に頼んだ家庭教師から学んでおります。少々、が悪いですけど…」

「僕はそんな堅苦しいのが無くてもいける。我流、舐めないでよね。」

「へぇ、二人は頼もしいね。」

「じゃあ、ここの五人でバトルロワイヤルっていうのやらないかな?」

 微笑み合う戦乙女たちに王児はある疑問を持ち始めた。

(あれ? マコちゃ…真琴先生に部活動の相談をしたのは今朝で、部活動を知らせる壁紙や呼びかけはまだしてないのに何で来ているんだろう。)

 彼が不思議がっているのも束の間、その疑問の答えは稲津の口から出た。

「…で、って、いつやるの? 買ったら、に欲しい新作ゲームを買って貰うつもりだけど?」

「え? ? ?」

「まぁ、稲津さん。そんな強欲なことを言うのははしたないですわ。私はをすることを楽しみですのに。…でも、勝ちましたら、気になる紅茶の茶葉を…」

「ちょっ、ちょっと何言ってるの!?」

「えっ、だって、あの人から貴方達に勝てば、欲しい物なら何でも貰えるって、聞いたけど?」

 颯華たちが指差した方に視線を向けると、手を合わせ、ウィンクし、舌を出した呂夢の姿があった。

「ごめんね、奈緒。次の試合が決まっちゃった。」

「呂夢ぅぅぅぅぅ!!」

 部室から学園内に奈緒の怒号が木霊した。


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