fighter2:鋼原奈緒・中編

「ああ、楽しいなぁ、楽しいなぁ…反撃のチャンスが出来て、楽しいなぁ…でも、攻められ足りないなぁ、こんなんで逆転したら物足りないなぁ…そうだ、私をもっと殴って、蹴って、下卑た技掛けて、嘲笑ってよ。その分、楽しむからぁ!」

 私は笑いが止まらなかった。今まで感じたことのない背筋が凍る不気味な快感に支配され、相手からの攻撃を強請るなんて…まぁ、そうしたいと思ったならいっか。

 あれ、悪漢のたちが戸惑って狼狽しているな。いつの間にかあの生意気な男が苛立っていた。

「何をしている貴様ら! それでも我の弟子か! こんな小娘に怖気るとは何事だ! これから我も加わる! 再び存分に実戦ぐをぉぉぉぉ!?」

「うるっさいなぁ! 何もしてない癖にべらべらと偉そうに! ねぇ、もっと痛ぶらせてよ! 楽しませてよ! じゃないと、こっちが?」

「うわぁぁぁぁ!?」

 私があの男を殴ったら、血相を鋭くした悪漢が更なる猛攻を仕掛けた。

 私は再び三戦サンチンの構えで耐え抜いた。

 嗚呼、痛い、気持ちいい、痛い、最高、痛い、気持ちいい、痛い、最高、痛い、気持ちいい、痛い、最高、痛い、気持ちいい、痛い、最高、痛い、気持ちいい、痛い、最高、痛い、気持ちいい、痛い、最高、痛い、気持ちいい、痛い、最高、痛い、気持ちいい、痛い、最高、痛い、気持ちいい、痛い、最高…

 じゃあ、お返ししなくちゃね。と思って、正拳を突き出して、悪漢一人の顔に触れて、ぐにゃっとした肌触りを感じちゃった。

「ぐがぁぁ!?」

「ひぃっ!?」

 あれれ、手を抜いたらヤラレルヨ?とその隙を逃さず、もう一人の悪漢の横脚を足刀蹴りしちゃいました。

 ボキッとした骨の感触は気持ち悪いけど、また相手一人を倒しちゃった。

「ぎぃやぁぁぁぁぁ!? 痛ぇよぉ! 痛ぇよぉぉぉぉ!」

「おい待て! 俺たちが悪かった! 看板も奪わねぇ! だから、こうぐぎぁぁぁぁ!?」

 はぁ、散々、私たちを痛ぶって、今更逃げるなんてユルサナイ。大人しく逆転されてよ、ソウジャナイトタノシメナイ。

「貴様、よくも私を虚仮にしてくれたな! 喰らうがいい、我が貫手を!」

 へぇ、貫手ねぇ、五本の指をヤイバの如く水平に構えて、指力ピンチで貫くあれか。と思いつつ、私はその貫手を男の四本指ごと殴り潰した。

「いぎゃあああああ!? きっ、貴様ぁ!?」

 男は愛も変わらず、片手や両脚ごとの蹴りを入れるから同じように潰した。

「ひっ、ひぃぃぃぃ、やめてくれ! 許してくれ! もう、降参する! 小娘と舐めたことを謝ぎゃわぁぁぁぁぁ!?」

 私は間髪入れずにその男の頭を手刀で剋ち割った。額を一線の無様な打撲痕で歪ませた。

 私は振り返り、逃げようとする残りの悪漢たちを獲物のように追い回し、潰した。

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