fight24:鬼門島のおもてなし

 夜七時、鬼門蓮火の実家である大屋敷の居間に魚の刺身や、猪鍋、野菜の味噌汁、海藻の混ぜご飯といったご馳走が並んだ。

「さぁ、蓮火ちゃんがお世話になっている御礼です。たんと、お食べ下さい!」

「いただきます。」

 赤い長髪と赤い瞳を持つ着物姿の母親『鬼門なき』に手料理を振る舞われ、喜ぶ蓮火一向。

「ほっほっほっ、流石、蓮火の級友。こんな僻地に来るのはよっぽど覚悟を持つお方だ。故に、貴方方は強い。」

「甘えるな、親父。彼女たちからして見れば、ドッキリ気分で危険に晒されたようなもの、私が会社に頼んで、ヘリを出させた方がいいものを。本来なら蓮火には夕食抜きをしようと思っていたのに。」

 上座に座る赤白い短髪と長髭を持つ着物姿の祖父、『鬼門炎魔えんま』は愉快に笑うも、炎焔は不機嫌そうに顔を顰め、哭が彼を宥める

「まぁまぁ、そんな厳しくしないで下さい、炎焔さん。蓮火にやっとの同年代のお友達が出来たんですもの。彼女が浮かれる余りにうっかりしているのはしょうがないことです。まぁ、責任持って、彼女たちを道中の危険から守った私たちの娘を許してあげましょう。」

「ふっ。不祥ながら許してあげるが、次はないぞ、蓮火。」

「分かりました、お父さん。次からは絶対気をつけます!」

「全く素直では無いな、我が倅よ。」

 一家団欒する鬼門の一族たちを脇目に呂夢と王児は出された夕食を必死にがっついた。

「はぐ、はむ、美味しい! こんなに腹が減ったのは生まれて初めてです!」

「ちょっと、二人ともそんなに食べたら、また気持ち悪くなるわよ?」

「いや、私たちが蓮火のお母さんにマッサージされたら、船酔いが醒めるどころか、気持ち良いくらい腹が減っちゃって。」

「実は鬼門家秘伝の按摩術でして、身体の調子を活性化するツボを順に押したんです。」

「へぇ、そんなものまであるなんて、何でもありだな、鬼門の一族。」

 そうこうするうちに鬼門家での食の談議が続く中、蓮火は家族にあることを聞いた。

「お母さん、お父さん。紅蓮兄さんや紅羽姉さん、赤羽兄さんに、茜ちゃんは?」

「茜ちゃんは友達の家へ泊まっていて、紅羽ちゃんは大学のサークル旅行に行ってるわ。」

「紅蓮は相変わらず何処かの放浪で武者修行をし、赤羽はアメリカで喧嘩三昧をしている。」

「へぇ、蓮火には兄妹がいるんだ。」

「はい、長兄の紅蓮兄さんは過去に何度か有名な武闘大会をチームで優勝し、長姉の紅羽姉さんは刀剣や銃などの武器の達人、次兄の赤羽兄さんは我流を志し、路地裏格闘家ストリートファイター、末っ子である妹の茜は格闘技とは一応無縁と自称しています。」

「個性的な兄妹ね、メモメモ。」

「ちょっと、呂夢! 食事中にメモ書きだなんて行儀悪いわよ!」

「いやぁ、蓮火がいきなり新情報を言ったんだから、つい食いついちゃって。」

「じゃあ、これは知ってますか。うちのお父さんはとある世界的武闘大会で世界最強の称号を、い、痛たたたたた!?」

「余計な事を話すな、蓮火。全く、あまり昔の話はされたくないから、今から風呂に入る。」

 そういった炎焔は居間を後にし、呂夢は炎魔に聞いてみる。

「あの、蓮火のお父さんは武闘大会に出ているなら、あの人も格闘家ですか?」

「いんや、倅は残念なことに今も昔も変わらずじゃよ。」

 そう愉快そうに笑う炎魔に呂夢は戸惑った。

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