fight16:暗躍の武道家

 かつて、蓮火にやられた空手部の悪漢に待ったを掛けたのは廃工場の窓からの月明かりに当てられた一人の青年と女子高生であった。

 一人は赤紫色の短髪と褐色肌の男性で、灰色のフードを被っていた。

 もう一人は緑の短髪と瞳を持つ女性で、奈緒たちの学園と同じ、灰色のブレザーとチェック柄のスカート、白シャツの女子高生服を着ていた。

「負けた腹いせで闇討ちなんて、随分低俗な人間ね。」

「何だと!? テメェらは何もんだ!」

「彼女たち…鋼原奈緒と鬼門蓮火の闘いに魅せられた者たち、と言った所だ。」

「構わねえ、殺っちまえ!」

 リーダーである男の号令で三人の悪漢がパイプや金属バット、スタンガンを持って襲い来る。

「へぇ、やっぱ襲ってくるんだ。まぁ、肩慣らしには丁度良いね。」

 すると、緑髪の女子高生がその悪漢たちに向かって駆け出し、彼らの猛攻を体軸を捻らせながら躱し、顎だけを蹴りや掌底突きで狙い、すれ違い様に気絶させた。

「あはっ、弱。こんなんで聖戦なんて笑わせるね。」

「全くだ、まず、殺意が足りねえ。」

「五月蝿え! これでも喰らいやがれ!」

 巨漢の男が有り余る体重と体格を利用して、青年に向かって大きく振りかぶって殴り掛かる。

 しかし、青年は拳の軌道を見切り、肘で巨漢の手首を砕く。

「いぎゃああああ!? 手がべばぁ!?」

「大の男が痛みに慣れねえなんて情けねえ。こんなだと、では生き残れないぜ。」

 悲鳴を上げる巨漢を息息吐かせる間もなく、飛び膝蹴りで顎を、肘打ちで脳天を同時に砕き、仰向けに倒れさせた。

「殺るなら、だ。極限の死合をお前らは知らな過ぎる。」

 次々と仲間がやられる姿を見て、悪漢たちは怯み、戸惑うも、リーダーの男は声を荒げ、彼らを捲し立てる。

「テメェら、こんな所で逃げんじゃねぇぞ! ゴラァ! 一気にもっと多い人数で戦え! 頭使え、馬鹿共が!」

「馬鹿はお前だろうが。」

 その時、また新たな声が現れる。その声に気付いた悪漢たちが大扉の方へ向ける。

 すると、その大扉が開き、外からとある男がやって来た。

「テメェは一心!?」

 鉄輝一心。悪漢に無様にやられ、幼馴染の奈緒に情けない姿を晒されたもう一人の空手馬鹿であった。




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る