fighter1:鬼門蓮火・前編
鬼門。赤髪赤眼の遺伝的特徴と恵まれた運動神経を持つ身体を受け継ぐ稀血の一族。
古来より古代レスリングや中国武術などの古今東西の様々な武術を吸収し、併せ持った総合古武術【鬼門流武技術】を編み出した。
そんな古来生粋の格闘一族の一人である私が格闘技を愛し、格闘家を志すのも無理な話ではなかった。
「すごい、すごい。柔道の人がプロレスの人に勝ったよ! お父さん!」
「全く、格闘嫌いの俺と違って、お前は歴とした鬼門の血を引き継いでるとはな。」
そういうお父さんはぶっきらぼうでありながらも苦笑しながら、頭を撫でてくれた。
「お父さんも色んな強い人と闘ったんだよね。なんで、格闘嫌いなの?」
「勝負の世界は楽しいことばかりじゃないからな。好き好んで痛いことをするのは性に合わないが、悪友である空手家と連んだ時が運の尽きだった。まぁ、意地でも格闘技をやらず、ステゴロと独学をやったに過ぎないがな。」
「でも、お父さんみたいに色んな格闘の人と闘いたいの! 大きくなったら、色んな格闘の人と友達になるもん!」
「親父が免許皆伝をくれたら、外で試合を組むからな。それまでの辛抱だ。」
「うん! 私、頑張る!」
これは私が全ての武技を納め、免許皆伝を取った前日の7歳の頃、切実に願った闘う理由だ。
その後は外に出て、お父さんと旅に出た。
ある日は都市内にある空手や柔術、相撲などの格闘技道場を巡り、道場破りをし続け、連勝した。
その時、私はふと疑問に思った。
「あれ、何で、私は勝ち続けているの?」
そんな疑問は強い格闘家に負ければ、解決すると思った。だって、おかしいと思った。修行したとは言え、自分はまだ見習い格闘家で、熟練の格闘家に勝つことなんて予想しなかった。
故に私はお父さんに頼んで、プロの人と闘えるようになった。
空手の黒帯、相撲の横綱、合気道や柔術の達人、プロレスやボクシングにムエタイのチャンピオン…
その全ての人たちに勝ってしまった。
「おかしいよ…、こんなの楽しくないよ!」
苦悩した私はお父さんにさらに頼み込み、裏社会の格闘技場で死闘を繰り広げようとした…
けど無理だった。何の苦もせず、出場者全てに勝ってしまい、格闘技場は閉鎖された。
「ひぃ、鬼が、鬼が来る! 俺はもう格闘技を辞める! だから、もう虐めないでくれぇ!」
「来るな、鬼の餓鬼が! おめえと闘って、勝てる訳ねえだろ! この化物が!」
私は知ってしまった。私と闘う者全てが私を鬼と恐れ、忌み嫌われていることを。
私は知ってしまった。挑んだ道場は廃れ、挑んだ格闘家のプロたちは引退を迫られ、彼らの格闘家人生を終わらせたことを。
私は知ってしまった。私は、私の一族は、孤独と疎外を生み出すほどの強さと畏怖を持つことを。
それを知った時、私は途方もない叫びと涙を発し、自分に失望した。
鬼である自分に。
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