修繕師アリテは思い出は修繕しない

十五歳の冒険者のユッカには、アリテという修繕師の友人がいる。町で修繕屋を営んでいるアリテの元には、修理を必要とするものが日々やってくる。

ある日、領主の長女が母のドレスの修繕を依頼しに来た。しかし、そのドレスの裾には金貨が五枚も縫い付けられていた。人生をやり直せるほどの金額の金貨は、時同じくして領主の長男が持ってきた目元に穴が開けられたカメオの謎を解き明かすが——……。

「これは修繕できません」

　アリテが修繕を断る理由。
　カメオとドレスに秘められた明かされてはいけない恋。
　王から下賜されるも盗まれた剣。
　破られた祭りの衣装。

　そして——アリテ自身の過去の謎。

　日常の小さな謎たちには、思い出と思惑が詰まっている。修繕師はアリテは、それを鋭い目で今日も見抜き。修繕すべきかどうかの判断を下す。