水明の幻獣　〜蒼き水の音、白い森の足跡〜

紀元前210年、秦の始皇帝が崩御した。

北方で長城を建設していた扶蘇（ふそ）皇子が受け取ったのは、自害せよという始皇帝からの勅命だった。
扶蘇は始皇帝の長子で、次期皇帝を目されていた聡明な皇子だ。
始皇帝は全国巡幸中に病死したため、死を知るのは同行していたごく一部の高官のみである。
勅命は捏造されたのではないか。
皇子の教師である樹延（ジュエン）と、二人を預かる大将軍の蒙恬（もうてん）はそう疑うも、扶蘇の決意は固く、自害してしまう。

皇子の後を追おうとする樹延に、蒙恬は「北へ行け」と命じる。
遥か北方のバイカルには、始皇帝が追い求めた不老不死の力を持つ幻獣が棲むという。
幻獣を守り暮らす女性オルツィと出会い、神秘的な森と湖で暮らすことになる樹延。
やがて始皇帝の権力を簒奪しようとする秦の…続きを読む