第22話:花の努力。デート案多すぎでは?

 リスナーの皆さんに質問してみた結果、意外と意見が集まったのは嬉しいことだ。

 でもさ。だけどさ。こんな意見ばかりだと流石に私も対処しきれないっていうか。


・しずくちゃんとシチュボ

・しずくちゃんとデート

・しずくちゃんとゲーム実況

・しずくちゃんと雑談

・しずくちゃんとの蜜月旅行


「なんだよこれはぁ!!!」


 思わず自宅でキレてしまった。

 危ない危ない。ここが防音室でなかったら、今頃私はその辺の不審者と刑務所を同じにするところだったよ。ふぅ……。


 肩で息を呼吸していたのをなんとかして整える。すーはー。よし元気。

 ともかく。しずくちゃん、もとい瑠璃ちゃんとやるような企画をとても多くご所望されているのが分かる。

 もう私単体の需要とかないんかおい。


 とか思っていたら、来た。フラワーショップシミュレーターの実況。

 まぁ、うん。来ると思ってたよ。でもこれはやらないよ。

 過去やってそのあまりの記憶力ゲーでやや目眩がしたレベルだから。

 ダメだよ。花の名前なんて覚えなきゃいけないゲームなんて。私はお花の精霊だけど、名前をちゃんと覚えられるかどうかなんて考えてなかったし。


 結果としてグダグダっぷりが今の評価に値する。

 お花の精霊だけど、お花の名前を覚えられないVtuber。

 なんとなくだけど、瑠璃ちゃんからの印象とやや似ている気がするのは気のせいだろうか。


「うーん、でもゲーム実況と雑談はやりたいよねぇ。あとはシチュボ。これ需要あるのかな?」


 蜜月旅行ってなんだよ。却下。デートもリアルじゃそういう関係でもないし、瑠璃ちゃんも遠慮するだろうからやめておこう。

 無難にゲーム実況かな。


 シチュボは2人がイチャイチャしているところが見たいとか?

 リスナーが間に入ろうとか思わなければ、それはそれで何が目的なのか問い正したい気持ちもある。

 シチュエーションボイスって自分が聴き手になって、こんな先輩が欲しい、妹が欲しいを疑似体験できるコンテンツだと思っている。

 そこに2人だけの空間を作って、壁のシミになるような展開って、それありなのか?


「これは、あとで瑠璃ちゃんにも聞いてみようかな」


 あとは知り合いとか、にか先生とか辺りに。

 私だけじゃ、とても需要があるとは思えないのだ。


 画してこれからとりあえずゲーム実況をしようという話には繋がるけど、問題はどういうゲームをするか、だ。

 フラワーショップシミュレーターはマルチだけど、私がダメなので嫌です。

 無難に四角いブロックを積み重ねるゲームとか、似たような2Dゲームとか。

 この際、サンテンドーのゲームをするのもいい。でも問題のゲームハードがないからそれは難しいか。


 ならゲームショップアプリPUNKのインディーゲーム辺りがいいのではないだろうか。

 そしてゲーム初心者の瑠璃ちゃんもそんなに苦難しなさそうな、アクション要素の少ない、まったりできるゲーム……。


「あった、そういうのあったわ確か」


 昔、TLでそういうゲームを見たことがあった気がする。

 えーっと、確か名前は……。


 PUNKのページをスワイプしていって、目的のゲームを探す。

 ドット絵で、とある田舎の町が舞台の開拓をメインにする話で……。えーっと……。


「あ、あった」


 ◇


「これですか?」

「うん、このカントリートゥリビンをやろっかなって」


 カントリートゥリビン。直訳すると田舎暮らしというタイトルのインディーゲームだ。

 祖父の死後譲り受けた農場を好き勝手しながら、近隣住民との暮らしを満喫できるまったりゆるやかなゲーム。

 畑も作れるし、動物も言えば。さらに言えば町の開拓を手伝えるという、結構自由度の高いゲームだ。

 いわば人生シミュレーターなんて言われるぐらいの出来で、子供まで産めるという。すごいね。


「へー、そんなに凄いゲームなんですね」

「賞とか取ったりしてるし、根強い人気もあるんだ」

「ふーん……。結婚できるんですか」

「うん、らしいね」


 何故そこに引っかかる。もしかしてアラサーは嫌だから若いイケメンNPCと結婚したいってこと?

 それなら分かる。私もイケメンのNPCを引っ掛けたい。


「これってプレイヤー同士でもできるんですか?」

「うーんまぁ。らしいけど……」


 みんなに嫌われてしまった際の救済措置としてPCにプロポーズすることができるとは聞いたことがある。

 もしかして瑠璃ちゃん、私と結婚したい? あ、ままままぁ、あくまで百合営業としてね。はいはい。

 私もそれが一番楽だし、アピールしやすいところではあると思うのうんうん。


「よし、やりましょう」

「おぉ! 瑠璃ちゃんだいぶやる気だね」

「だってお姉さんとの配信、楽しいですから!」

「そう言ってもらえたら、Vtuberにした甲斐があるなぁ」


 ある種配信者冥利につきるというか。それはかなり嬉しい褒め言葉だ。

 こういう素直な子が伸びていくんだな、って思うと私も素直に物事を考えられればいいと思うね。

 大人になると正解不正解の前に、空気感が存在して、素直さを阻んでしまうから。


「じゃあ日程は……」


 それからやる日を決めてから、その日は解散となった。

 未だに瑠璃ちゃんが私のことをどう思っているかはわからない。

 もうちょっと仲良くなれればなぁ。素直な思いは時として刃ともなる。だから現状維持しながら、少しずつ近づかないと。

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