Vtuberの限界OLアラサーと天然清楚JKが年の差百合営業、始めました。

第23話：花の努力。2人でゲーム実況

「はい！　おはようございますー！　不思議な花の精霊、フワワー・フワリーです！」

「えっと、濡れた心にタオルと傘を！　バーチャル傘の具現化さんの雨犬しずくです」

「ということで今日は2人のコラボ配信ですよー！」

：こんふわ！

：こんふわー！

：こんかさふわー！

：待ってたぜ、この時をよぉ！

「ほらそこ、バイクには乗らないでくださいねー」

　かるーいツッコミはさておきとして、今日やることを紹介しないと。

「今日はサムネにある通り、カントリートゥリビンをやっていこうと思っております！」

：あれか！

：農家の？

：どういうゲーム？

　これもまたゲームの軽い説明を行う。

　本日の目標というものは特にない。

　というのもしずくちゃんとシリーズ物でやるゲームの取っ掛かりを作りたかったのが、今日の目標みたいなものだったため、もうすでに達成していた。

　あとは如何に面白おかしくやるか。そして、かとなく仲良し百合営業に持ち込むこと！

　課題は山積みだけど、やるだけやろう。

：はえー

：ぶつ森みたいなもんか

「自由度はそんな感じですねー」

「お姉さんって、このゲームやったことあるんですか？」

「ん？　ないよ」

「なのにやけに詳しいなーって」

　なんでって。そりゃあ、ガッツリ調べたからね。

　情報の基本は取捨選択。正しい情報と、古い情報、そして誤った情報を切り分けて、捨てる。

　仕事で学んでしまったことをこんなところでも活かせるなんて、とても思わなかった。

「わたしも調べたんですよ。この前お話してて腑に落ちなかったので」

「お、いい傾向ですねー！　どんなことを調べたんですか？」

「プレイヤー同士で結婚できるのかなって」

：！？

：！！

：？！

「ミッ！！」

　思わず変な声が出てしまった。

　この子、突然なんてことを口にするんだ。

　確か、というかさっきも言ったけど、取捨選択で拾った情報の中にそういう結婚のシステム自体は聞き及んでいる。

　でも、それは。それはその……。

「できるらしいですね」

「あの、しずくちゃん？　それって……」

「……どういうことだと思います？」

　あ、あの。しずくちゃん。そこまでやって欲しいなんてことは聞いてませんけど？！

　そもそも同性婚できるとは……。あ、いや。ご時世的にできるようにしましたって、この前のアップデート内容に書いてあったような、ないような……。

「ど、どういうことだろうなーあはは！　お花の精霊さんわからなーい！」

：草

：これガチ困惑してるぞ

：百合の花咲きそう？

：しずくちゃんアクセル踏み過ぎや！

「あー、やっぱり踏みすぎましたか？　お姉さんといるとつい楽しくなってしまって」

「あ、うん。いいんだよ。私はとても嬉しいでございまする。イエス」

　コメントのとおりだ。私はかなり困惑してる。

　しずくちゃんが私のこと好いてくれるのは嬉しいけど。けど！

　百合営業って友だちがイチャイチャするぐらいの距離感だと思ってたのに、いきなり、いきなり結婚って！

「じゃあお姉さんはわたしと結婚したくないですか？」

「そうじゃないですよーーーー！！！」

：草

：お花の精霊は受け、っと

：年下攻めはとてもいい

「う、受けとか攻めとか言うんじゃありません！」

「どういうことですか？」

「しずくちゃんは知らなくていいんです！」

　なんてことを吹き込もうとしているんだこいつらは。

　そういう受け攻めの概念はニッチでディープなライバーズラブ界隈に任せればいいんだよこの野郎ども。

　とりあえずゲームを始めないと。そろそろ雑談にかけてる時間はない。

「はい、じゃあということで！　サーバー立てるから来てください」

「はい！」

　サーバーを立てて、それからゲームを進行して初めて分かる。

　しずくちゃん本当にゲームをするのが初めてだということを。

　ゲームをある程度やったことがある人なら分かるセオリーや、動き方の基本がまるでなっていない。

　WASDの動作もかなりぎこちないし、どれが決定のボタンで会話をスムーズに進めることができない。

　だけど同時にゲーマーなら分かることもある。

「わぁ……。ドット絵すごい。キレイですね……」

「でしょう！　カントリートゥリビンっていうゲームはなんといってもこのピクセルアートがすごくきれいで、昔のゲーム特有のレトロ感を出しながら、現代の技術をふんだんに取り入れられた新鮮味？　もあって、私もおすすめのゲームなんですよ！」

：早口で草

：オタクくんさぁ……

：分かる

：草

「ふふっ」

「ん？　なんで笑った今？！　もしかしてオタクっぽいってバカにしてます？！」

「いえ。かわいいなぁ、と思いまして」

　ゲーマーの心に寄り添えるまっさらな感性。

　楽しい、という感情を直に受け取って、それを言葉としてハッキリと口にしてくれる。

　それがとっても嬉しくて、配信している身として、見ている視聴者としても心に訴えてくるものがある。

「…………」

「どうかしましたか？」

「……なんでもないですよ？」

：アッ！

：キマシ？

：スゥーーーーーー

：てぇてぇ……

「え、っと。このコメントの流れはいったい……？」

「いいの！　いいから！　ほら先に進むよ！！」

　この後、めちゃくちゃゲームした。