テイクアウトと留任

アルス・デリカの第一号店はアルスラーン公国の首都ハイリの大通りに出店していた。


この日アルスは第一号店であるハイリ店を視察していた。お店は多くの人で賑わい、外には長蛇の列ができていた。


「この列に並ぶのはさすがに気が引けるな…」


アルスはそう思いつつ、様子を見ているとあることを閃いた。


「お店で食べなくてもいいんだよな…テイクアウトだ!」


アルスは突然閃き、屋敷に急いで戻った。

屋敷に戻ってきたアルスはリエラを呼び出す。


「リエラ、新たな業務形態を閃いた。持ち帰り専門店を作ろう。」


「持ち帰り専門店?」


「うん、さっきハイリ店の様子を見てきたけどさすがにあの長蛇の列に並んで店内で食事をとるのってゆっくりできないと思うんだ。」


「なるほど、ゆっくり出来る自宅でお店の料理を楽しむのね!」


リエラはすぐに理解した。さすが服ブランドを経営しているだけはある。


「早速、動くわ!楽しみにしてて!」


リエラはそう言うとすぐに外に出ていってしまった。


「さすがリエラ、仕事が早いな…」


そう思っていると部屋にイーナが入ってきた。


「アルス、先程父から連絡が入ったわ。どうやら外務・商務大臣人事の件みたい。」


「わかった!すぐに向かうって伝えておいて!」


「わかったわ!」


そうしてアルスは急いで屋敷を出た。


アルスは屋敷から歩いて5分ほどのハイリ駅から魔道新幹線に乗り、マリアナ王国王都サルサのサルサ駅に向かう。やはり、新幹線は速い。ハイリとサルサをわずか1時間半で繋ぐ。

寝ている間にあっという間に着いてしまうのだ。

そして到着したアルスは急いで王城へと向かった。


王城の応接室には国王イーサンと宰相、ノスタ財務大臣、法務大臣の父サノスが待っていた。


「アルス公爵、待っていたぞ。」


国王が出迎える。


「陛下、お久しぶりです。」


「しばらく見ないうちに立派になったな。公王としての働きぶりは聞いておる。」


国王は笑顔でアルスを見る。

アルスはアルスラーン公国の公王ではあるが、立場は公爵。それもマリアナ王国とリース帝国の同意で成り立つ立場である。国王イーサンと皇帝であるハルナより格は落ちる。


「今日は、外務・商務大臣の人事と聞き来たのですが…」


アルスが話を切り出すと宰相が話し出した。


「はい、アルス公。今はアルス公に外務・商務大臣を兼務していただいています。そして、以前公国の公王に就任するにあたり、職を辞したいと申し出を受けました。この度、その結論が出ましてここに呼びました。」


宰相はいつも通り丁寧に説明してくれる。


「結論として、今後もアルス公にマリアナ王国の外務・商務大臣を兼務して頂きます。」


「ん?えっ!」


まさかの回答であった。

なんと今後もアルスがマリアナ王国の外務・商務大臣を務めよと言われているのだ。


「な、何故でしょうか?私はマリアナ王国とリース帝国の両国に関係する立場です。どちらかの国の大臣を務めるのは公平性に欠けます。」


そういうと国王が口を開いた。


「それなら問題いらぬ。そなたはリース帝国の皇帝を妻としているのだ。普通であれば妻が皇帝であるリース帝国側にそなたは力を入れたりする恐れがある。しかし、そなたが生まれたのはこのマリアナ王国であり、サーナス侯爵家である。つまり最初からマリアナ王国の臣下である。逃げられないし、大臣に留めておくことでバランスを保つのだ。」


国王は力強く言った。

国王が言ったことは最もであった。

そして次に口を開いたのはサノスであった。


「アルス、忘れているようだから言っておく。お前はサーナス侯爵家の長男でもある。つまり、サーナス家を継がなければならない。」


「その通りだ。」


サノスの意見に国王が同調する。


「ということは将来的に私はアルスラーン公国とサーナス領を治めなければならないと?」


「うむ。」


国王は力強く頷く。

どうやら逃げられないようだ。


「アルス公、リエラの婿としてノスタ領のことも忘れないでね。」


ロフも一言圧を加えてくる。


「アルスよ。話は以上だ。引き続き外務・商務大臣としてマリアナ王国に居る時はよろしく頼むぞ。」


こうして、今日の面会は終わった。


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