転生編

転生

辺りは真っ白だ。 何も無い。

だが何か温かみを感じる空間である。

翔太はそもそもなぜここにいるのか記憶を思い返してみた。

部活の帰り道、ナイフを振り回した男を止めに入ったが、刺されてしまったのだ。


「あ、僕死んじゃったんだっけ?」


そう呟くと、


「そうじゃよ。」


突然声が聞こえてきた。それと同時に辺りが眩しくなり、翔太は1度目を閉じた。

そして目を開くと、そこには大きな机を囲むように9人の人らしき者が座っていた。

翔太はすぐにわかった。座っているのは神々であると。明らかに人間ではない不思議な力を感じたからである。

そう思っていると、中央に座る神と右側に座る神以外はすぐ退出してしまった。

すると、中央に座る髭を長く伸ばした神が口を開いた。


「ほっほっほっ、残念じゃったの。こんなに早く死んでしまって。七草翔太くん」


「やはり神様なのですね。」


翔太は名前を呼ばれたことで神であることを再確認できた。


「それよりわしの正面の席に座るとよい。」


翔太は真ん中に座る神に勧められ席についた。神の世界ということもあり、立派な椅子だ。


「それでは、自己紹介をしようかのう。まずわしはこの世界の創造神ザイン、隣にいるのは生命神レーネじゃ。よろしくじゃ。」


「よっ、よろしくお願いします。あの...この世界と仰られましたが、ここは地球ではないのですか?」


翔太はザインのこの世界という言葉に引っかかった。


「あぁ、ここは地球ではない。全く違う異世界じゃ。」


「えっ、異世界!なんで異世界の神様?」

翔太は信じられなかった。

なぜなら異世界だ。そんなもの存在しないと思って生きてきたが、突然異世界であると言われれば驚いて当然である。小説の中くらいでしか聞いたことがない


すると、生命神レーネが口を開いた。


「ザイン様、翔太くんが驚いております。詳しく説明せねば。」


翔太はナイスアシストと思った。


「確かにそうじゃな。だがこの事は生命神であるそなたが説明する方がよかろう。説明してやってくれるか?」


「か、かしこまりました。ザイン様。」


そして、生命神レーネは少し困惑した顔で翔太の方を向いた。


「あの...翔太くんは...本来死ぬはずではなかったんです。」


「死ぬはずではなかったとは?」


「はい。なぜなら翔太くんが死ぬ原因となった今回の事件なのですが、本来誰も死ないことになっていました。しかし、翔太くんがあの事件に飛びこんで結果として、死んでしまったんです。なので、想定外の単なる無駄死にだったという事です。」


「えっ......」


無駄死にという言葉に翔太は肩を落としてしまう。


「で、では怪我をしていた人達は皆助かったということですか?」


「はい、翔太くんも見たように皆さん息がまだありましたね。しかも翔太くんが刺されて意識を失って直ぐに、警察や救急車が すぐに駆けつけています。あなたの世界の医療はかなり進んでいますから、翔太くん以外皆さん生きていらっしゃいます。」


それを聞いて翔太は少し安堵した。

その様子を見たザインは、


「翔太くんは死んだと言うのに、落ちついておるのう。」


ザインは少し驚いていた。


「無駄死にだったとしても、被害にあった人達が生きていてくれて安心しただけです。」


「そうか、翔太くんは優しい心を持っておるのじゃのう。」


ザインは感心した。


「そういえば、君の疑問に答えてなかったのう。なぜ異世界の神であるわしらが翔太くんの前におるのか。」


「はい。教えてください。」


「それはじゃな。地球で新たな生を受ける事ができなかったからじゃ。」


ザインはようやく翔太の疑問に答えた。

なぜ異世界の神様が地球で死んだ自分を相手にしているのか疑問に思っていたが、理由が地球で新たな生を受けることができないとは一体どういうことなのか翔太の頭を悩ませた。


その様子を見たレーネが口を開く。


「翔太くんの死は先程も申したように想定外の無駄死にでした。地球の神々は流れを重視します。想定外な死をもたらした翔太くんはその流れを妨害してしまう為、邪魔なのです。本来輪廻転生で新しく生を受けますが、地球の神は流れを妨害した翔太くんを消そうとしました。」


「ちょ、ちょっと待って下さい。最初の辺りは分かりましたが、地球の神様達、僕を消そうとしたんですか?」


翔太にとっては重要な話だ。詳しく聞かずにはいられない。


「そうです。地球の神々はめんどくさがり屋なので、流れを乱す者は大っ嫌いなんです。ちなみに、今まで翔太くんの様に流れを乱したものは全て消されています。」


「生命神様、僕は消されていないのですが...」


「まぁ、待ってください。続きがあります。実は地球と私たちの世界はちょうど翔太くんが死んだ時、話し合いをしていたのです。」


「話し合いですか...それと僕に何か関係あるのですか?」


「今回、翔太くんには地球との交渉の材料にさせていただきました!」


「えっ、ぇぇえええええ!」


翔太は自分が交渉材料にされた事に少し苛立ちがあったが、話がまだ終わっていないため、最後まで聞くことにした。


「勝手に材料にされて怒っているとは思いますが、あなたのためでもあるのですよ。実は地球の神々との交渉内容は地球の温暖化対策の為に私たちの世界のエネルギーを地球に供給する事でした。」


「なるほど、それと僕に関係があるのですか?」


「はい、本来私たちは無償でエネルギーを提供しようと思ったのですが、そのタイミングで翔太くんが死にました。地球の神々は面倒くさそうにしてましたよ。本当に。そこで私たちは提案したのです。エネルギーを供給する代わりに翔太くんをこちらの世界に欲しいと。」


「なぜ、僕を欲しがったのですか?迷惑では?」


「地球の神々はめんどくさがりますが、私たちはあなたに来て欲しかったのです。実はこちらの世界はあなたのいた世界とは全く違います。あなたの世界は資源を利用し、主に工業などで発展していますが、こちらの世界は遅れています。資源は当然ありますが、地球とは大きく違います。そして、私たちの世界には魔法とスキルがあります。」


「魔法!?スキル!?」


翔太は魔法とスキルがあることにかなり驚いた。


「そうです。魔法とスキルです。私たちの世界ではあなた達が普段利用している電気などを魔法で補完しているのです。スキルは各個人の特技や能力のことです。魔法は魔力があれば使えるのですが、魔力が少ない人は日常生活で使える程度の魔法しか使えません。スキルは日常生活レベルのスキルでしたら良いのですが、特殊なスキルになると魔力を消費しますから注意が必要です。ちなみにスキルは15歳の洗礼の時に与えられるものと成長と共に付与されるものがあります。」


「なるほど、魔法とスキルがあるのですね。他には違う点がありますか?」


「はい、こちらの世界は多種族世界、そして魔物がいます。」


「多種族は分かりましたが、魔物!?」


「種族には獣人やエルフ、ドワーフ、魔族。魔物はゴブリンやスライムなどたくさんいますよ。」


危険と隣り合わせな世界なのかもと翔太は思った。


「まぁ、こちらの世界の話はこれくらいにして本題です。翔太くんには、こちらの世界で地球の知識を利用して、発展させて欲しいのです。」


「それが僕を欲しがった理由ですか?」


これにはザインが答えた。


「そうじゃ、どうしてもこちらの世界は遅れてしまっておる。これはどうしようもないのじゃ。しかし、翔太くんがこちらの世界に来てくれれば、大きく変化するかもしれん。それを期待しておるのじゃ。」


「はぁ、ですが僕は高校生です。そんなに知識が多くはないのですが...」


翔太は勉強はできるが、地球にあるもの全てを知っている訳では無い。その為、発展させる自信はなかった。


「安心するが良い。そなたにはわしの加護を与える。」


「加護とは具体的にどのようなものなのでしょうか?」


「加護自体は各神々が人々に与えるもので、15歳の洗礼時にスキルと共に付与される。例えば、魔法には魔力が必要であると話したが、魔力量が多くなるには、努力も必要であるが、加護が大事になる。加護を持つ者はこの世界で力を持つことになるのじゃ。ちなみにわしの加護は今まで誰にも与えてはおらんのじゃ。わしの加護は特殊での、創造というのじゃが、新たなスキルを一つだけ生み出せるのじゃ。したがって、今回は特別に今ここで翔太くんにはスキルを創造してもらいたいのじゃ。理解して貰えたかのう?」


「はい。分かりました。」


「では、どのようなスキルを創造するのじゃ?」


翔太は何にするのか悩んだ。

この世界を良くしていくために地球知識を必要としている。ならこれしかないと翔太は思った。


「では、地球の知識を検索できるスキルを創造したいです。」


「地球の知識を検索できるスキル、良いとわしは思うのう。じゃがのう、地球の知識を検索はできるが、情報量の多いものを検索する時は大量の魔力を消費するから気をつけるのじゃぞ。あと、このスキルを知られる訳にはいかないからのう、翔太くん以外には見えない様にするから安心するとよいぞ。では、検索スキルを付与することにするぞ。」


「はい、お願いします。」


そして翔太は「検索スキル」を15歳の洗礼時に付与される事になった。


そして、ザインは

「では、これから翔太くんにはこちらの世界に転生してもらうぞ。転生してもらうからには赤子からということじゃ。今までの記憶が生まれた時からあると何かと問題が発生するからのう。10歳の誕生日までは転生前までの記憶が蘇らないようにしておくぞ。それと転生後の世界は前世の言語、日本語が共通語となっている。これはわしからの特別なプレゼントじゃ。では、思い出したらこの世界のことをよろしくなのじゃ。また会うこともある。君は特別じゃからのう。」


「はい、ぜひまた会いたいです。他の神々とも話したいですし。」


「約束をしよう。ではまたのう。」


「はい、ありがとうございました。」


そして、突然の眩しさに翔太はまた目を閉じた。


こうして翔太の新しい人生が始まるのだった。

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