服作り

ショッピングモールの建設が始まり、3ヶ月ほど経った。外は雪が降っている。季節は冬になっていた。

マリアナ王国は日本と似た気候で四季が存在する。この世界は地球とよく似ているのだ。時折とても懐かしい気持ちになる。


バンの街には雪がうっすら積もっている。

アルスはノスタ公爵家にこの3か月滞在していた。

さすがに王都のサーナス家の屋敷に戻ろうと思ったが、サノスにバンで色々と勉強するようにと手紙で伝えられ、ショッピングモールがオープンするまでの間は滞在するのは変わらなかった。

この間、アルスはリエラと販売する服のデザインをまとめていた。

この事業にはアンナが介入しようとしたがリエラの必死の抵抗により何とか逃れた。

アンナはユーナという王都一の服屋の経営者兼デザイナーをしており、リエラにとっては最大のライバルである。リエラは燃えていた。


「見てみて!!このデザインどうかしら?」


今日もリエラが図案を見せてきた。


「うん、可愛いと思う!」


リエラが今回見せてくれたデザインはボヘミアン・ドレスに似ていた。ゆったりとした柔らかなシルエットがとても綺麗だ。


「えっ、本当!!やったー!」


褒めてあげるとリエラはとても喜んだ。


服屋アルス・リエラはショッピングモールのオープンに合わせて出店する。オープン時期は夏であり夏服を中心にデザインを進めてきた。


今日は今までデザインしてきたものをサンプルとして作る予定だ。

服作りの為に今日はたくさんの布生地を集め、バンの街中から裁縫師達も集めた。


「皆さん、今日は集まって下さりありがとうございます。これがデザインです。早速作業に取り掛かってください。」


アルスは今までのデザインを描いた図案を裁縫師達に渡した。裁縫師達はすぐ作業に入ってくれた。

ちなみにアルスもメンズ担当であるためデザインを描いた。

当然、検索スキルを使ってだ。見たことのないデザインにリエラはもちろん、裁縫師達もびっくりしていた。


作業は裁縫師達がやってくれるため時間が出来た。

アルスとリエラは今後のことを話し合うことにした。


「ねぇ、アルス。服の製造間に合うかな?」


「確かにね。どうしても手作業になるから...うーん...そうだ!工場を作ろう!」


「工場?」


アルスは製造方法を考えた結果、工場を思い付いた。

この世界では、職人はそれぞれ独自の工房を持っている。今日集まってくれた裁縫師達も独自の工房を持った職人だ。

しかし、彼らは既に多くの取引先を抱え、製造時間がかなりかかってしまう。

そこで独自の工場を作り、裁縫師達を雇用し自社製造にすることで安定製造できることを提案した。


「す、すごいわ!アルスはやっぱりすごい!本当に組んでよかったわ!」


リエラはかなり興奮している。しかし、疑問が浮かんだ。


「でも、どうやって裁縫師を集めるの?そう簡単に集まるとは思えないけど。」


リエラが疑問に思うのは当然である。

工房を構える職人は一流の職人だ。なかなか集まるとは思えなくて当然である。しかしアルスには既に構想が浮かんでいる。


「リエラ、一流の職人たちはどこで技術を学ぶと思う?」


アルスはリエラに問う。


「うーん、学ぶとこか...わかった!職人ね!」


「さすがリエラ!正解!」


「やった!」


さすがリエラだ。すぐに当ててみせた。


「職人のもとには職人になりたい見習いの人達がいるんだ。そこで、その人達を工場で研修生として雇用するんだ。」


「なるほどね!こちらは人手を確保できるし、向こうにとっては技術を磨く場所になる。お互いにいいことしかないわ!」


「そう!その通り!」


リエラもアルスの構想がかなりわかってきたようだ。

だが、この会話は15歳の男の子と16歳の女の子の話ということを忘れてはならない。アルスは転生者で元高校生であるからこのような発想ができるがリエラに関してはただの16歳の女の子だ。リエラの頭の良さを改めて感じた。


アルスとリエラは工場計画をまとめた。

まず、研修生は師匠である裁縫師の推薦を必要とすること。推薦を課すことで技術を担保するためだ。

そして、賃金だ。賃金は1日当たり金貨1枚と高めに設定した。これは独り立ちをした時の事なども考慮した結果だ。

そして工場だが、バンの街の職人街の集まる辺りのノスタ公爵家が所有する建物を使う事をリエラが提案してくれた。修行先の工房と工場を行き来しやすいようにするためだ。これはロフの承諾が必要なため、リエラが交渉してくれることになっている。


夕方頃になると全てのサンプルが完成した。さすがは一流の職人、とても良い出来だった。リエラに関しては早速自分で着ていた。とても嬉しそうだ。

そして、早速今日来てくれている裁縫師達に工場のことを伝えた。裁縫師達はかなり喜んでくれた。中には、早速推薦してくる裁縫師もいた。


これは早く工場を作らなければならないとアルスは思った。





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