沿海都市オース
あれからひと月ほどが経った。
この日アルスは沿海都市オースをリエラとともに訪れていた。リエラと訪れたのには理由がある。この沿海都市オースを観光都市にするため、ノスタ領の領都バンと同じショッピングモールを建設するからである。この事業はリエラと共に行ったこともあり、リエラに協力、いや、指揮してもらうために協力を願い出たのであった。
リエラも快く引き受けてくれてオース観光都市化の責任者をしてくれることになった。
オースの街まではまず国鉄サーナス線を利用してスパムまで行き、そこからは馬車を利用して1日ほどの距離にある。
アルスがオースを訪れるのは初めてである。
同じサーナス領でも農業都市カマ以外は訪れたことがなかった。
街の規模はカマの街とさほど変わらない。
大きな港町である。
高い建物はあまり多くないが、全ての建物が白で統一されており、海と調和しとても美しい街である。
「なんて綺麗な街なんだ!!」
アルスはその風景を見てとても感動した。
「そうですね、アルス。最近観光客も増えている理由もわかります!」
リエラも景色を見てテンションが上がっていた。
アルスとリエラはまず街の役所を訪ねた。
ここを拠点として活動をするためである。
活動と言っても責任者として動くリエラのためである。
2人は役所の空いていた一室を使用させてもらうこととなった。
「リエラ、ここが君の執務室になるけどどうかな?」
「うん、とても素敵よ。窓からは港が見えるし最高の部屋ね!」
外の景色もよく見える部屋であったため、リエラはとても喜んでくれた。
「リエラ、早速だけど観光都市化のために動き出そう。僕は大臣の政務があるからこの後すぐに出発しないといけないから大まかにどんな街にするか決めよう。」
「そうね。アルスもあまりこちらには来れないからそれがいいと思うわ。」
「うん、じゃあ僕の構想を伝えるね。まずはバンと同じショッピングモールの建設。そして観光都市として宿泊施設を充実させる。あとは遊べるところを増やしたいと思うんだ。」
「アルス、それってかなり大規模になるけど大丈夫なの?」
リエラはアルスの構想に心配になってしまう。
「大丈夫、今までの貯えが沢山あるからね。」
「え!うん。そうね…」
リエラはアルスの無茶苦茶なところに苦笑いする。
アルスには貯えが確かにある。
まず貴族としての貯え、大臣としての貯え、経営者としての貯えと他の貴族よりも断然資金は豊富であった。
「リエラ、お金のことは気にしないでください。最高の観光都市にしたいので…話題になって観光客が増えれば返ってもきますし…そうだ!国鉄も延伸しましょう!王都に帰ったら国王に提案してきます!ではよろしくお願いします!」
そういうとアルスは後のことはリエラに任せ、役所を後にした。
残されたリエラは、
「アルスの行動力ってほんとにすごいわ…」
改めて感心するのであった。
――――――――――――――――――――――――
アルスは役所を出て、馬車に乗りオースの街を後にしようとしていた。
窓から見るオースの街は改めて美しいなと感じていた。
すると真っ白な美しい教会がアルスの目に止まった。
「そういえば、しばらく教会にお祈りに行ってなかったな…」
ふとアルスはそう思った。
忙しくて全く行けてなかったのだ。
「よし、久しぶりに行こう…怒られるかな?」
そう思い、アルスは教会に立ち寄ることにした。
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