追及
ユース商会で入手した取引記録を手にアルスとサノスは外務庁に乗り込んだ。
大臣室に案内されるとリーベル外務大臣が不敵な笑みを浮かべながらアルスたちを出迎えた。
「おやおや、今日も来られましたか。何か見つかったのですか?」
リーベル外務大臣は余裕そうだ。
「実は、外務庁の取引記録報告書に不審な点がありましてね。」
「うっ......」
サノスが取引記録報告書の事を口にするとリーベル外務大臣が一瞬動揺したように見えた。
「外務庁作成の取引記録報告書にユース商会との取引記録が残されていました。しかしあまりにも高額です。」
「だから、訪問記録報告書にも書いてあるだろう。贈答品が増えたんだ。」
「彫刻品に白金貨50枚ですか?そんな話聞いたことがない。」
サノスが追及する。
「それだけかかったんだ。訪問記録報告書と取引記録報告書に矛盾点などないだろう。」
リーベル外務大臣は報告書が正しいと主張した。そして続けてこう主張した。
「まず、我々官庁は各報告書を所管官庁へ提出が求められている。虚偽報告などしない。」
リーベル外務大臣は官庁の義務をしっかりと行なっているとも主張した。
確かにリーベル外務大臣の言う通り所管官庁に報告書を提出しなければならない。
アルスはここをリーベル外務大臣は上手く利用していると考え、口を開いた。
「リーベル外務大臣の仰る通り、所管官庁に報告書を提出する義務があります。しかし、それは外務庁や法務庁といった官庁にしか義務はありません。」
「何が言いたい。」
アルスの発言にリーベル外務大臣は不快感を示す。
「官庁には報告義務があるのに対して、一般の商会などには報告義務はありません。」
「...」
リーベル外務大臣は口を閉ざす。
どうやら図星のようだ。
「つまり、外務庁は自由に報告書の金額を操作することもできるんです!」
アルスはリーベル外務大臣が行なったことを暴いていく。
「ユース商会で取引記録を見せてもらいました。見せてもらった記録によると外務庁との取引は確かにありました。しかし、取引金額は白金貨5枚です!」
「ユ、ユース商会が嘘をついている可能性もあるではないか!向こうには報告義務すらないのだ!」
リーベル外務大臣も抵抗してくる。
その様子を見て、アルスは笑みを浮かべた。
「リーベル外務大臣、これをお忘れではないですか?」
アルスは1枚のある紙を取り出した。
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時は遡る。
ユース商会で取引記録を借りた時のことだ。
「サーナス法務大臣、これも一応持って行かれるとよろしいかと思います。」
ユース商会を出ようとした時、シリルは1枚の紙を渡してきた。
サノスはその紙を受け取ると笑みを浮かべる。
「これはありがたい。」
サノスは紙を手にシリルに感謝する。
「いえ、お力になればと思いまして。」
どうやらシリルの渡してきた紙は重要なものであるとこの時アルスは思った。
ユース商会からの帰りの馬車の中でサノスはシリルが先程渡してきた紙を見してくれた。
「これは、外務庁からの依頼書ですね。」
「あぁ、しっかりと外務大臣の署名と大臣印が押されている。」
シリルが渡した紙は外務庁がユース商会から彫刻品を購入する際に作成された外務庁からの依頼書だった。
「これは決定的な証拠となる。リーベル外務大臣は最後まで抵抗するだろう。とどめの一撃として最後まで取っておこう。」
サノスは決定的な証拠と言いきった。確信を持っているようだ。
サノスに言われ、最後の切り札として取っておくことになった。
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アルスが取り出した紙はシリルから渡された外務庁からの依頼書だ。
「そ、それは...」
リーベル外務大臣は動揺した。
その様子を見たサノスが口を開いた。
「リーベル外務大臣、依頼書のこの大臣印が紛れもない証拠ですよ。同じ大臣だからこそ確証をもてる。」
「...」
リーベル外務大臣は黙り込んだ。
「この大臣印、捺印する際に魔力が必要になる。しかも、大臣の魔力でしか押せないようになっている魔道具だ。もう言い逃れはできない、リーベル外務大臣。」
サノスがとどめを刺した。
大臣印が魔道具であることが、サノスが馬車の中で決定的な証拠と言った理由だ。
「全く、余計なことをしてくれる......罪を認めよう。」
リーベル外務大臣は対抗することを諦め、罪をようやく認めた。
そしてリーベル外務大臣はこの場で連行された。今後裁判に掛けられる。
「父様、無事終わりましたね。」
「そうだな。それにしてもアルス、お前が手伝ってくれて本当に助かった。ありがとうう。」
「これからも頼ってください!」
「あぁ、期待してるよ。」
無事、リーベル外務大臣に罪を認めさせることができ、アルスとサノスは外務庁を後にするのであった。
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