記録的大雨
アルスは王立学園での説明会を終え、外務庁に戻って来た
。説明会は想定を上回る生徒が参加し、ほとんどの生徒が受験をするようだ。
アルスは大臣室で1人溜まっている書類に目を通し、印鑑を押していく。約3時間ほどその作業をし、何とか終えることが出来た。暦を導入したことで、書類がいつ出されたものかも把握出来るようになったことで急ぎのものとそうでないものの判別もできるようになった。
この日の仕事も終えた為、帰宅の準備を始めた。
外務庁前に馬車を呼び、部屋を後にしようとした時であった。
「アルス大臣、失礼します。」
大臣室に入ってきたのはイーナであった。
「イーナ、どうしたの?ちょうど帰るところだったんだけど…」
「宰相府から連絡があり、今すぐ来るようにと。」
「えー、もう帰りたいのに…」
今日のアルスはサーナス大学の説明会、書類の処理とかなりのハードワークであった。そこに宰相府からの呼び出しだ。とても嫌である。
「どうやら財務大臣、そして農林水産大臣が呼び出されているようです。」
「財務大臣に農林水産大臣か…ってことは農林水産関係…全く僕の管轄じゃないんだけどな…」
「農産物等の販路の関係で商務庁が関係はしています。」
「でもそれを財務大臣や宰相を巻き込んで話すことではないよ。だから恐らく農林水産庁管轄で何か起こったんだと思う。」
「困った時のアルス大臣ということですね!」
イーナはニコニコしながら言う。あくまで他人事である。
「まぁ、行ってくるよ…」
「はい、行ってらっしゃいませ。私はお先に帰宅しますね。」
そんな会話をして、アルスは宰相府へ向かった。
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宰相府に着く。
直ぐに宰相達の待つ、応接室へと向かった。
「失礼します。お待たせしました。」
部屋に入ると宰相とノスタ財務大臣、そして農林水産大臣であるターク・フォン・ベジタが既に席に着いていた。
ベジタ農林水産大臣とは大臣会議で顔を見たことはあったがほぼ初対面である。
年齢は50歳くらいでとても優しい雰囲気だ。爵位は伯爵である。
「アルス大臣、お待ちしてました。さぁ席へ。」
宰相はノスタ財務大臣の隣に座るように言う。
ノスタ財務大臣であるロフと軽く会釈をして隣に座った。
「アルス大臣、今日呼んだ理由なのですがこちらにいるベジタ農林水産大臣が説明をします。ではベジタ大臣よろしくお願いします。」
宰相が言うとベジタ農林水産大臣が口を開いた。
「アルス外務・商務大臣。御足労頂きありがとうございます。お話をするのは初めてですね。農林水産大臣のターク・フォン・ベジタです。」
「ご挨拶ありがとうございます。外務・商務大臣のアルス・フォン・サーナスです。」
お互いにまず挨拶を交わす。
「今日来ていただいた理由ですが、このマリアナ王国西部地域において昨日大雨による水害が発生しました。」
「なるほど水害ですか…」
呼び出された理由は、大雨による記録的大雨だそうだ。
国鉄が整備されたことにより東西南北の王都から離れた場所の情報も直ぐに王都に伝わるようになった。
「農産物の被害がかなり大きく…直ぐに食糧危機に繋がる訳ではありません。アルス大臣の地元である農業都市カマの収穫がここ数年かなり安定、収穫量も倍増しています。それにより、国内の供給は安定しました。」
どうやらカマのおかげでこのマリアナ王国はかなり安定したら国になっているようだ。
「ですが、王国西部は元々農業の盛んな地域です。この地でしか採れない特産品も多くあります。その地域が被災した訳でして、早急な復興が必要となります。そこでアルス大臣のお力をお借りしたく…」
アルスへの依頼。それは復興事業であった。
農業都市カマでの実績を見ての事であろう。ロフが呼ばれているのは復興に必要な予算の確保のためである。
「ベジタ大臣、内容は理解しました。ぜひ協力をさせて下さい。」
「おぉ、ほんとうですか!!」
「はい、商務庁としても王国西部の農産物を失うというのは大きな損失です。早急に対応します。」
「感謝します。」
こうしてアルスは新たに復興事業に手を出すこととなる。
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